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第2話 まだ分からない力

――ざわついている。


 理由は、たぶん俺だ。


 さっきまでそこにいたはずなのに、いきなり消えて。

 気づいたら、また同じ場所に立っている。


「……戻ってきた」


 小さく呟く。


 自分でも、まだ少し現実感がない。


「今のは……何だ?」


 玉座の老人が、静かに問いかけてくる。


 周囲の視線も、一斉に集まる。


「えっと……」


 どう言うべきか、一瞬迷う。


 本当のことを、そのまま全部言うのは――少し違う気がした。


「少し、意識が飛んだような感じで……」


 なるべく曖昧に答える。


「気づいたら、戻っていました」


 嘘ではない。


 でも、全部でもない。


「意識が飛んだ……?」


 ざわ、と空気が揺れる。


「消えたように見えたが……」


 周囲も判断に迷っている様子だ。


 自分でも説明しきれない以上、それでいい気がした。


「ユウト、と言ったな」


「は、はい」


「その力、分かるか?」


「いえ……まだ、はっきりとは」


 正直に答える。


 分かっていない部分も多いのは本当だ。


「ただ……」


 少しだけ言葉を選ぶ。


「何か条件がある気はします」


 完全に不明、というわけではない。


 “使える”感覚はある。


 でも、それを全部見せる必要はない。


 老人はじっとこちらを見てから。


「……ふむ」


 小さく頷いた。


「無理に使おうとする必要はない。危険な力の可能性もある」


「はい」


 その言葉に、少しだけ安心する。


 追及されすぎる流れじゃない。


「では、次の者」


 話題が移る。


 広間の空気も、少しずつ元に戻っていく。


 ただ。


 完全に興味が消えたわけではない。


 ちらちらと視線を感じる。


(……まあ、そうなるよな)


 消えたのは事実だ。


 目立たないわけがない。


 でも。


(今はこれでいい)


 下手に目立つよりは、ずっといい。



 少し離れた場所で、俺は小さく息を吐いた。


「……危なかった」


 思っていた以上に、注目されていた。


 あそこで全部話していたら、どうなっていたか分からない。


(ログアウトして戻れる、とか……)


 便利すぎる。


 そして同時に、警戒されてもおかしくない力だ。


(もう少し、ちゃんと分かってからにしよう)


 使い方も、制限も、まだ不明だらけだ。


 それに――


(切り札は、隠しておいた方がいい)


 なんとなく、そう思う。


 理由はうまく言えない。


 でも、その方が安全な気がした。



 広間では、他の勇者たちの能力確認が続いていた。


「風属性Aランク!」

「身体強化……前衛向きだな」


 次々と“分かりやすい力”が出てくる。


(やっぱり、ああいう方が評価されやすいよな)


 少しだけ羨ましい気もする。


 何ができるか一目で分かる。


 戦えるかどうかも、すぐ判断できる。


 それに比べて、自分の力は――


(まあ……分かりにくいよな)


 苦笑する。


 でも。


(その分、自由度はありそうだけど)


 どう使うかは、自分次第。


 そういうタイプの能力なのかもしれない。



 やがて、能力確認は一通り終わった。


 広間に、少し落ち着いた空気が流れる。


「そなたらは、我が国を救う希望じゃ」


 老人がゆっくりと語る。


「これより、勇者としての役割を――」


 話を聞きながら、俺は少しだけ考えていた。


(まずは……検証だな)


 できること。


 できないこと。


 どこまで安全か。


 全部、自分で確かめる必要がある。


 焦る必要はない。


 今はまだ、始まったばかりだ。



 異世界に召喚されて。


 よく分からない力を手に入れて。


 まだ何もできていないけど。


(……でも、やれることはありそうだ)


 そう思えただけでも、少し前進だ。


 俺は小さく息を吐いて、視線を上げた。


 この世界で、どう動くか。


 それは――これから決めていけばいい。


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