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第10話 準備と、気になる視線

ギルドを出て、しばらく歩く。


 夕方の城下町は、人通りが少し落ち着いていた。


「今日はこの辺で終わりにしましょうか」


 リリアが言う。


「ああ、そのつもり」


 素直に頷く。


 疲れもあるけど、それ以上に――


(ちょっと整理したい)


 戦い方は見えてきた。


 でも、まだ安定してるとは言えない。


「ユウトさんは、この後どうされますか?」


「……少し準備しておきたい」


 正直に答える。


 リリアは少しだけ考えてから、頷いた。


「分かりました。では、明日の朝にまた」


「ああ、それで」


 短いやり取り。


 でも、昨日よりずっと自然だ。


「……あの」


 別れようとしたとき、リリアが声をかけてきた。


「ん?」


「無理は、しないでください」


 少しだけ言いづらそうに。


 でも、はっきりと。


「……分かってる」


 苦笑する。


「むしろ、無理しないやり方考えてるとこ」


「……そう、ですか」


 少し安心したように、リリアは頷いた。


 それから、ほんの少しだけ迷うような間があって。


「では、また明日」


「ああ、また明日」


 軽く手を上げる。


 リリアは一礼して、去っていった。


 その背中を見送りながら、思う。


(……気にしてくれてるんだな)


 少しだけ、嬉しい。


 同時に。


(ちゃんとやらないとな)


 変に無理はしない。


 でも、任せきりにもならない。


 そのバランスが大事だ。


 人気の少ない路地に入る。


 周囲を確認する。


(……ここなら大丈夫か)


 意識を集中させる。



 ――ログアウト。



 視界が切り替わる。


 見慣れた部屋。


「……よし」


 小さく息を吐く。


 戻ってくると、やっぱり少し安心する。


 でも、のんびりはしていられない。


 すぐに動く。


(まずは――)


 今日の戦闘を思い返す。


 火は有効だった。


 でも、ずっと使えるわけじゃない。


 数が増えたら、対応しきれない可能性もある。


「……もう少し、幅が欲しいな」


 呟きながら、部屋を見渡す。


 使えそうなもの。


 持ち込めそうなもの。


 頭の中で組み立てていく。


(距離を取る手段と……足止め)


 さっきは火でなんとかなった。


 でも、それに頼りすぎるのは危ない。


 もっとシンプルに。


 もっと確実に。


 視線が止まる。


「……これ、いけるか」


 手に取る。


 特別なものじゃない。


 でも、使い方次第で十分役に立つ。


 いくつかまとめて、リュックに入れる。


 ついでに、水と携帯食も補充しておく。


「……こんなもんか」


 詰め込みすぎない。


 動けることが一番大事だ。


 リュックを背負う。


 少し重い。


 でも許容範囲だ。


(あとは――)


 タイミング。


 引く判断。


 それさえ間違えなければ、なんとかなる。


「……よし」


 小さく頷く。


 やることは決まった。


 意識を切り替える。



 ――ログイン。



 路地裏に戻る。


 少しだけ時間が経った感覚。


 でも、周囲は変わっていない。


「……戻ったか」


 軽く周囲を確認する。


 誰もいない。


 問題なし。


 リュックの位置を直す。


(明日は――)


 今日より少しだけ、安定させる。


 それができれば十分だ。


 歩き出そうとした、そのとき。


「……ユウトさん?」


「っ!?」


 思わず振り返る。


 そこにいたのは――


「リリア……?」


「はい」


 少しだけ不思議そうな顔で、こちらを見ている。


「まだいらっしゃったのですね」


「いや、その……ちょっと考え事してて」


 咄嗟に答える。


 心臓が少し速い。


(タイミング、悪っ……)


「そうでしたか」


 リリアは納得したように頷いた。


 ……助かった。


「その、さっきの話なんですけど」


「さっき?」


「準備をされる、と仰っていたので」


 少しだけ言葉を選びながら。


「……どのようなことを?」


 探るような問い。


 でも、強引じゃない。


「……色々試してるだけだよ」


 正直に、でもぼかして答える。


「うまくいくか分からないし」


 リリアは少しだけ考えて――


「……そうですか」


 それ以上は踏み込まなかった。


 でも。


「無理のない範囲で、お願いします」


 静かにそう言った。


 その言葉に、少しだけ間が空く。


「……ありがと」


 自然に返していた。


 リリアはわずかに目を伏せて、頷く。


「では、今度こそ失礼します」


「ああ」


 今度こそ、リリアはその場を去っていく。


 その背中を見送りながら――


(……完全にはバレてない、か)


 でも。


(だいぶ怪しまれてるな)


 苦笑する。


 ただ、それでもいいと思っている自分がいる。


 全部隠し通す必要はない。


 少なくとも――


(敵じゃない)


 それは分かる。


 軽く息を吐く。


 空を見上げる。


 夕焼けが、少しずつ暗くなっていく。


 ――最弱スキル“ログアウト”。


 その使い方は、少しずつ形になってきた。


 そして。


 明日は、もう少しだけ――


 うまくやれる気がしていた。


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