#005 家は車より安かった --2005年
タイで複数の女性と関わり起こった20年間の出来事の実話です。
呪い,除霊,探偵,暗殺,薬物などを振り返りながら綴って行きます。
Ariの田舎に家を建てる場合、土地は親戚から無料で借りられるという話だった。
必要なのは建築費用のみで40万バーツ。
私はその金額を聞いて安いと感じた。
当時、小型車を新車で買っても70万バーツほどだった。
それを考えると、田舎に家を一軒建てる方が車より安い。
家の建設の40万バーツはすぐに支払ったが、雨季の影響で工事は思うように進まなかった。
完成までには、結局一年ほどかかったように記憶している。
その後しばらくの間、飲み屋の女の子を口説くときに
「家と車なら、どちらが欲しい?」 と聞くのが半ば癖のようになっていた。
ーーー
仕事は順調だった。
毎月のように二人で新しい取引先を見つけ利益を積み上げていった。
事業の規模も徐々に大きくなり、Ariは日本向け輸出手続きまで一人でこなせるようになっていった。
Ariが仕事そのものに興味を持っていたのか、
それとも利益にしか関心がなかったのかは、正直よく分からない。
ただ、仕入値と売値、月ごとの仕入数量から利益を計算する作業を、楽しそうにやっていた。
結果として、タイでの利益の流れはすべてAriに把握される形になっていた。
ーーー
その頃の私の生活は単純だった。
毎月、二週間はタイ、残りの二週間は日本。
Ariは夜の店を辞めず、在籍したままだった。
私が帰国している間、Ariは「暇だから店で飲むだけ」と言っていた。
実際は何をしているのかは分からない。
彼女に特別な感情はなく、深く知ろうとも思わなかった。
私がタイにいる間、Ariは昼は私と仕事をした。
夜は毎月2回、私と同伴のノルマを達成すると、あとは店で時間を潰していた。
お互いそれで十分だった。
むしろ、Ariが店を辞めないことは私にとって都合が良かった。
その間、私はSomの店に行けるからだ。
Ariの店とSomの店はわずか百メートルほどしか離れていない。
私は毎日のようにSomの店に通った。
閉店後はAriと合流し、コンドミニアムへ戻る。
そんな生活を数か月にわたって続けていた。
私とAriの関係をSomは知っていた。
そしてAriも私がSomの店に通い続けていることを知っていた。
それでもAriは何も言わなかった。
ーーー
ある日、友人とSomの店へ行こうとするとAriも一緒に行くと言い出した。
断る理由はなく、私はAriを連れて店に入った。
Somは店の裏から出てこなかった。
ママはAriに気を使い、Ariは意識的に自分が一番だと示そうとしていた。
私がトイレで席を離れると、Somは店の裏で泣いているとスタッフから聞いた。
二人が互いを強く意識していることは空気で分かった。
店内は気まずく、居心地は悪かった。
ーーー
それでも、私とSomの感情は冷めていなかった。
数日後、バンコクで会い続けるのは難しいと判断し、私はSomと旅行に行くことを決めた。
行き先は、Somの故郷――プーケットだった。
2004年にタイに訪れてから“最近”に至るまでの20年間の多事多難を綴ります。
全て実話で、私が経験した出来事です。
常識では考えられない事が、まるで示し合わせたかのように次々と起こりますのでご期待ください。
これは成功譚ではありません。
そして恋愛小説とも言い切れない。
本能のまま生き、何度も間違え、遠回りを重ねた男の記録です。
登場する女性の名前はプライバシー保護のため、すべて実名ではありません。




