#002 切り捨てることから始まった--2004年
タイで複数の女性と関わり起こった20年間の出来事の実話です。
呪い,除霊,探偵,暗殺,薬物などを振り返りながら綴って行きます。
帰国後しばらくすると、タイで知り合ったMayから、時々国際電話がかかってくるようになった。
最初は懐かしさもあったが次第にその頻度が増え、正直なところ、しつこさを感じるようになっていた。
そんな中、最初のタイ渡航からおよそ二か月後、私は再びタイへ行くことを決める。
二度目の滞在は、10日間ほどの予定だった。
正直に言えば、その時点でタイでの仕事の当ては何もなかった。
それでも再びバンコクへ向かった理由は、仕事よりも夜の街への未練だったと思う。
今回はMayにはタイへ行くことを知らせなかった。
理由は単純で他の女性と自由に遊びたかったからだ。
誰にも縛られず、誰にも説明せず、ただ自分の欲望に従って動いていた。
この二度目のタイ行きは仕事でもなく、偶然でもなく、明確な「選択」だった。
そしてこの選択が、後に続く長い20年の始まりだったのだと思う。
ーーー
タイに到着して向かったのは、連絡先を聞いていたGeeの働く店だった。
店に入ると会うことができたが、先客が入っており一緒に過ごすことはできなかった。
そこで私は、同じ店で働いていた新人Ariを指名し1時間ほど飲むことにした。
ただ、ほとんど日本語の話せないAriとの会話はあまり弾まず、気持ちはどこか満たされないままだった。
まだ飲み足りなさを感じていた私は別の店にも行くことにした。
Ariには「2時間ほど店で待っていてほしい」と伝えて店を出た。
そして、次に偶然入った店で出会ったのがSomだった。
Somは愛想がよく日本語は話せなかったが、不思議と居心地がよかった。
お互いに波長が合うのを感じ、私はすぐに強く惹かれてしまった。
そのまま一緒に過ごす選択肢もあった。
しかし、Ariと2時間後に約束をしていたことが頭をよぎり結局その約束を優先し、Somのことは心残りを感じながらも諦めた。
その夜は、約束通りAriと合流し一晩を共に過ごした。
振り返れば、この夜にあったのは出会いでも何でもない。
ただ、人を並べ、比べ、順番を決めていく作業だった。
当時の私は、そのことに何の違和感も持っていなかった。
ーーー
翌朝、Ariが帰ったあと私は久しぶりにゆっくり眠っていた。
すると、ホテルからメッセージが何件も入っていることに気づく。
内容を確認するとMayからで、私が飲み屋街を歩いているのを見たMayの店のママがMayに知らせたようだった。
ホテルには「ここには宿泊していない」と対応してもらうことにした。
その夜は、Geeと過ごすことになった。
Geeは日本語を流暢に話せたため、私は正直に「仕事を手伝ってほしい」と伝えた。
遊びだけで終わらせるつもりはなく、今回は何か形を作りたいと考えていたからだ。
翌日、二人で下調べをして仕事探しに動き始めた。
Geeが積極的に調べてくれたおかげで数日後には、街をあちこち回り仕事の交渉先を見つけることができた。
短い時間ではあったが、初めて「仕事らしい手応え」を感じた瞬間だった。
ただ、Geeは店でも人気があり、継続的に私の仕事を手伝うのは現実的ではなかった。
金銭的なことも含め話し合った結果、今回限りの関わりにすることを決めた。
こうして、遊びと仕事が入り混じった二度目のタイ滞在は、少しだけ現実に触れながらも、どこか中途半端な形で続いていった。
ーーー
Geeと別れた夜、私は一人でホテルに戻った。
エレベーターに向かおうとロビーに入った瞬間、ソファーに座るMayの姿があった。
Mayはシンガポールで働いているはずだった。
だが、私がバンコクに来ていると連絡を受け急いでこちらへ駆けつけてきたのだという。
その場で私は直感的に理解していた。
ここでMayを受け入れてしまえばこのままホテルに居座られる。
自由に動ける時間は確実に拘束される。
そして正直に言えば、仕事の面で役に立つとも思えなかった。
理屈ではなく判断だった。
Mayは感情を抑えきれず泣き叫んでいたが、私はそれを振り切り一人で部屋へ戻った。
ロビーに残した彼女の姿は今でもはっきりと覚えている。
それ以降、Mayと会うことはなかった。
街で見かけることもなく、連絡が来ることもなかった。
あの夜を境に、彼女は私の人生から完全に姿を消した。
この出来事は、誰かとの関係を断ち切ることに、私が慣れていく最初の経験だったのかもしれない。
そして同時に自分の自由を守るためなら、他人の感情を切り捨てる選択をする人間になっていった瞬間でもあった。
2004年にタイに訪れてから“最近”に至るまでの20年間の多事多難を綴ります。
全て実話で、私が経験した出来事です。
常識では考えられない事が、まるで示し合わせたかのように次々と起こりますのでご期待ください。
登場する女性の名前はプライバシー保護のため、すべて実名ではありません。
これは成功譚ではありません。
そして恋愛小説とも言い切れない。
本能のまま生き、何度も間違え、遠回りを重ねた男の記録です。




