ちっちゃいクモと大きな雲
ちっちゃいクモが、お空を見あげています。
「大きな雲だなぁ。…じいちゃんの言ってたこと、本当かな?」
ちっちゃいクモのおじいちゃんは、クモたちに伝わる昔話を教えてくれました。
「わしらクモは、死ぬとあの大きな雲になるんじゃよ」
ちっちゃいクモは、お空を見あげて思います。
「じいちゃん、無事に雲になれたかなぁ? …会いたいな、じいちゃんに」
ちっちゃいクモは、カサカサと八本の足を一生懸命に動かして、木をのぼっていきました。
ちっちゃいクモにとって、木にのぼるのは大冒険です。天敵もたくさんいますし、風がふけば飛ばされて、落ちてしまうかもしれません。
「じいちゃんなら、おいらのこと、すぐわかるはず」
鳥に見つかりそうになり、カサカサと身をかくしながら、ちっちゃいクモは木をのぼっていきます。
風にふかれたときは、八本の足で必死に木のみきにしがみつき、ちっちゃいクモは木をのぼっていきます。
そして、とうとう…。
「やったぁ、てっぺんだ!」
ついに、木のてっぺんまでたどり着いたのです。ちっちゃいクモは、急いで空を見あげました。
「…じいちゃん」
大きな雲が、笑っているように見えました。おじいちゃんの胴体のように、大きくてまんまるです。ちっちゃいクモは、いつまでも、いつまでも、大きな雲を見あげているのでした。