平和な日
「ねえ、エマは兄弟っているの?」
どんな話の流れだったかは分からないけれど、アリアにそう聞かれた。
アリアは気味悪がられている私にとって、唯一話しかけてくれる…友人、だと思っている。
「兄弟…」
「うん!私はね、弟がいるの。まだちっちゃいんだけど、すごく可愛いんだ」
今度見に来てよ、と付け加えて眩しいほどの笑顔を向けてくる。
私はそれに曖昧な反応を返して、少し考える。
兄弟はいた。
だけど、それを彼女に言って困らせないだろうか。
「エマ?」
心配そうに私の顔を覗き込むアリア。
そんな顔をしてほしくなくて、なんとか口を開く。
「いるよ、兄。…同い歳なんだけど、今は遠くにいるの」
少しだけ、嘘をついた。
遠いところに同じ兄がいるのは、本当。
だけど、兄はもういない。
私が…殺してしまった…。
_______________________
「…」
ゆっくりと意識がハッキリとしてくるのを感じながら、体を起こす。
視界を遮るように落ちてくる前髪をかきあげ、部屋を見る。
昨日と何も変わらない、殺風景な部屋。
目を覚ますために強めに両頬を叩く。
痛い。
ヒリヒリと痛む頬を擦りながら布団から出る。
手早く着替えを済ませて、いつも通りの特訓場に向かう。
昨日も結局、的を壊すことは出来なかった。
だけど今なら、壊せるような気がした。
「ふー」
集中するために目を閉じて、息を吐く。
手で銃の形を作り、指先に力を溜めるイメージをする。
次第に力が溜まっていき、指先が少し熱くなっていく。
(…今!)
1番力が溜まったと感じた瞬間に、一気に力を放出する。
すると、放った魔力は真っ直ぐに的を射貫いた。
的は真ん中に穴が空いていた。
「よーっし!」
それに満足したオレは、両手を上げてその場に寝転んだ。
真上には、とても澄んだ青空。
雲は穏やかに揺蕩っている。
「平和だあ…」
そう、とても平和。
オレはこういう穏やかで平和な時間が大好きなんだ。
できれば、ずっとこんな感じで生きていたい。
「でも、殺されるんだよなあ」
昨日妹になったエマに。




