アリア過激派
「今日のところは帰ります。だけど、絶対に諦めませんからね」
「早く帰って」
「じゃあまた!」
そう言って、元気いっぱいにアリアは部屋を出た。
「…」
オレの頭に残ったのは、あの時のあの緩みに緩んだ表情だった。
あんな表情、アリアはしない。
あの場面だったらあいつはショックを受けたような表情になって、なぜダメなのかと抗議していたはずだ。
それなのに、どうしてアリアは…。
「もしかして」
あいつはアリアであってアリアではない…?
「…」
「兄さん?」
「悪いエマ。ちょっと出てくる」
「えっ、兄さん!?」
そう言い残して、家から出る。
今からならまだ追いつくだろう。
しばらく走ると、夕焼けに照らされて一際輝く白い髪が見えた。
「アリアさん!」
「えっ?」
大声で名前を呼ぶと、アリアは驚いた様子で振り返る。
「良かった、追いついた…」
数歩近づきながら息を整える。
「ルーカスさん?どうして…」
目の前の状況が理解しきれずにいるアリアは、それでも少し警戒をしているようだった。
普通の人間であれば、それは正しい反応だ。
「ルーカスさん…?」
だけどアリアは…。
「お前は…」
オレのアリアはそんなことしない!
「お前は、誰だ?」
暫くの静寂の後、アリアが口を開く。
「や、やだなー!私はアリアです。アリア・ソネットですよ。もう忘れちゃったんですか?」
1度違うと思ってしまうと、彼女の言動1つ1つに違和感を覚える。
アリアらしい言葉を選んでいるが、アリアはあんな程度では焦って苦笑いにはならない。
「アリアはこんな時、キョトンとしてから笑い飛ばす」
「…っ」
オレの指摘に焦りを隠せきれていない少女。
少しずつ余裕がなくなってきているようだ。
…そうだ、そこがまずおかしいんだ
「7歳のアリアがこんなにいろいろと考えているはずがない」
アリアはエマと全てにおいて対になるキャラクターだ。
性格は天真爛漫。
両親からはとても愛されて育ち、特に不自由のない暮らしを送っていた。
学園でも友人は多く、そして白魔法の使い手…。
「あ、あなたこそなんなんですか?アリアのなんだって言うんですか!」
「オレ?そうだな…」
少し考えてから、口を開く。
「アリアの…生みの親?」
これ以外に説明のしようが無かった。
まあ、作者だから間違ってはいないだろう。
「生みの親…?私の?」
「アリアの、というか…全部の?」
作者だから間違ってはいない。
あ、でもこれってあまり言わない方が良いことなのだろうか。
目の前のアリアらしき人物に気を取られてつい口が滑ってしまった。
「…」
やばい、選ぶ言葉を間違えてしまったのだろうか。
アリアがすごく震えている。
「あの…アリア…さん?」
「は、はあああああ?」
急に大声で叫ばれて、咄嗟に耳を塞ぐ。
こいつ、こんなにでかい声出るのか。
…急に生みの親だとか言われたら誰でもそうなるか。
今ので確信したけれど、やっぱりこいつはアリアではない。
たぶん、オレと同じようにアリアの体に違う誰かが入っている状態なのだろう。
そうなると話は早い。
「アリア…って、え!?」
話を切り出そうとアリアを見ると、アリアはボロボロと大粒の涙をこぼしていた。
いや、なんでそうなる。
これはオレが泣かしてしまったのだろうか。
「ど、どうしたんだ?あっ、言い方がきつかった?ごめん!ちょっと調子にのっちゃって…」
どうしよう、泣いた女の子の対処法なんて分からない!
だってオレ、前世では彼女いない歴=年齢の陰キャだったから!
なんて、自慢にもならないことを考えている場合では無い。
どうにかして泣きやんでもらわないと。
「アリアさん。一旦落ち着こう。な?」
「…先生」
「え?」
アリアが何か呟いたように思えて、聞き返す。
すると、アリアはオレの手を掴んで目を合わせてくる。
「あなたは、六道先生なんですか?」




