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転生、新しい家族

「ねえ聞いた?あそこの家の子どもの話」

「ああ、あれね…ほんとうに気味が悪いわよね」


毎日行われる井戸端会議。

今日の議題は、ある特異な容姿の子どもの話だった。


「ええ、不気味なほどに白い肌に、不吉な黒い髪ですって」

「ほんと、どうしてそんな子どもが…」


「あの魔法学校に入るのかしらね」


「ルーカス?おーい、ルーカスどこだ?」


自分の名前を呼ぶ声が聞こえて、ピタリと動きを止める。


「父さん、ここだよ」


声の方に向かって呼びかけると、足音がこちらに向かってくる。


「こんなところにいたのか…。また魔法か?」

「うん!」


父さんは魔法の特訓に使っていた的を見ながら、呆れたように笑う。

ずっと使っているからもう結構ズタボロだ。


そろそろ新しくしても良い気がする。

だけどまだ使えるからもったいないだろうか。


「…熱心なのは良いけど、お前はまだ5歳だ。ほどほどにしておけよ」


そう言いながらオレの頭を撫でる父さんの顔は、少し諦めが入っているように見えた。


5歳という歳で、魔法を特訓するような子どもは今のところオレくらいらしい。


他の子どもは町を駆け回ったり、家で静かに遊んでいたりするものだと聞いた。


だから、周りからは少し変な子どもだとか、結構いろいろ好き勝手言われているらしい。


嫌な噂は父さんにシャットダウンされているから詳しくは知らないけど。


“少し変”な理由は分かっている。

オレが異世界の記憶を持っているからだ。


3歳頃だったか、夢の中で異世界の自分の姿を見た。


夢の中でオレは漫画を描いていた。

そこそこ売れている漫画家で、アニメ化はしていないものの、知る人ぞ知る漫画を描いていた…らしい。


らしい、というのも生前はその実感が全くなく、夢の中で見た客観的に見たものだから。


とにかく、晴れてオレは異世界の記憶を持つ赤ん坊になった。


そこからはいろいろと早かった。

それまでほとんど発語をしなかったオレが発語をしたり、魔法の存在を知って魔法の特訓をしたり…。


両親からすると、怖かったことだろう。

だけど、そんな中でも愛情をたっぷり注いでくれるのだから頭が上がらない。


魔法の特訓をし始めたのは1年前で、その間特訓時間はどんどん増えていっている。


最初こそ強めに止めるよう言い聞かせられていたが、今ではもう言っても無駄だと思われているのだろう。


もちろん、本気で危ないと思ったら物凄く怒られて止められる。


その時はオレも素直に反省して止めるし、その後やらないように努める。

…必要な時は除いて。


「それより父さん、何か用事?」

「ああ、そうだった。紹介したい子がいるんだ。おいで」

「紹介?」


疑問に思いながらも大人しく父さんの手を取る。


“紹介したい子”というからには、とんでもなく歳上の人ではなく、同世代くらいの子だろう。


今の年齢からして、お見合いとかそういう類のものでもないだろうし…。


あ、もしかしてオレに弟か妹でもできたのか?

それだったら、とても楽しみだ。


そういえば産まれたての赤ちゃんって見たことがなかったなあ。

猿みたいだって聞いたことがあるけど、本当なんだろうか。


「さ、入って」

「う、うん」


父さんは握っていた手を離し、そっと背中に添えて、オレが扉を開けるのを優しく見守ってくれる。

ドキドキと鼓動が高鳴るのを感じながらゆっくりと扉を開ける。


「え…?」


そこには、オレの想像とは異なる人物がいた。


「あ、えっ…と」


戸惑っているオレを見るやいなや、その子は急いで立ち上がろうとした。


しかし、自身よりも高いイスから慌てて降りようとしたせいでバランスを崩してしまう。


「あ、危ない!」


咄嗟に駆け出して受け止めようとするが、上手くいかずに自分も一緒になって転んでしまった。

…まあ、下敷きになれただけでも及第点かな。


「…怪我はない?」

「…」


その子は、オレの呼びかけには反応せずに、ただ呆然としていた。


転びそうになって怖い思いをしたのだから仕方がないだろう。


「おーい?」

「あ、ご、ごめんなさい!」


もう一度呼びかけると、我に返ったのかオレの上から飛び退いた。

…のは良いのだけど。


「え?」

「ごめんなさい…ごめんなさい…」


頭を床に擦り付けて、涙声で謝罪を初めてしまった。


これは、いわゆる土下座というやつ?

…って、そんなことを考えている場合ではなく!


「頭上げて?別に怒ってないよ」


できるだけ優しい声でそういうと、その子はおずおずと顔を上げる。

気の毒なほどに青ざめている表情を見ていると、なんとなくどんな境遇の子なのかが分かった。


「大丈夫、大丈夫だよ。怪我は無いね?」


もう一度聞くと、控えめにこくりと頷く。

それを見て、頭にゆっくり手を伸ばして撫でる。


最初はビクリとしていたけれど、なんとか受け入れてくれた。


「…?」


頭を撫でていると、違和感を覚える。

撫で終えて手のひらを見てみると、その違和感の正体に気がついた。


この子はもしかして…。

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