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プリンス・チャーミング なろう  作者: ミタいくら
3章
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「うわ、寝過ごした!」

朝日が差し込んで、ルイは眩しさで目を覚ました。そこで、絨毯の上で頭を羽根の下に入れて丸くなっている鳥を見つけた。夜鷹ではない。はるかに大きい、漆黒の羽毛の塊だ。

「──いる」

サヨと話していて、眠気に勝てずにベッドに入った。その後サヨがどうしたかまるで覚えていない。寝ている間に黒魔鳥になったのだろうか。

ふわふわの肩と思われる両翼の付け根辺りを軽く叩く。

「サヨ。サヨ、起きろ」

くる、と小さく鳴き声がして、頭が羽根の下から飛び出した。黒い丸い目が開いてじっとルイを見つめる。

と、大きく翼を開いて羽ばたきをする。

「うわあ!」

「うわ!」

サヨの大声に、こちらも声を出す。寝起きで目の前にルイがいて動転したのだろう。こちらも翼の風に顔を叩かれて眠気が飛んだ。

久々に見る黒魔鳥の翼を広げた姿に見惚れていると、サヨはばさり、と一度大きく羽ばたきをしてヒトガタになった。

「ごめん、びっくりして」

「いや、俺の方こそ」

言って、もう本当に時間がないので、そそくさと隣の居間に移りながら会話を続けた。

「あのまま二人とも寝ちゃったんだな。サヨは床で寝てて体痛くないか」

「平気。野生だからね」

手早く服を整えると、頃合いを見たサヨがやって来た。こちらの半魔は着替える手間がないので羨ましい。

「俺はもう行くから、サヨはゆっくり出ていって」

扉を開けてから、部屋の奥へと言い放つ。


「何してるの」

その背中に不意打ちで声がかかって、ルイは飛び上がった。

「シャル!」

「何そんなに驚いてるの」

シャルロットは扉の開いている隙間から部屋の中を覗き込む。ルイは目を逸らした。シャルロットは中の半魔を見つけて事態を察したのか、ふん、と鼻を鳴らす。

「私の悪口でも言って朝まで盛り上がったわけ?」

目の前のルイではなく部屋の中に向けて言うのだから、確信犯だ。もちろんサヨも当然のように応じる。振り返れば、腰に手を当てて尊大極まりないポーズまで取っていた。シャルロットを煽る気満々だ。

「さあどうかな。聞きたい?」

「サヨ、ちょっと待って!シャルも。そんなこと言ってないよ」

放っておけばエスカレートしそうな二人の気配に、ルイは慌てて間に入った。

お互い、喧嘩腰なのは止めて欲しい。

割り込んだルイを呆れたように見て、シャルロットは言う。

「アンヌに知られたら怒られるよ」

「わかってる。俺の失敗だ」

「気をつけてよね」

つんと顎を反らして踵を返す。サヨにそっと目配せをして、ルイはシャルロットの背を追った。


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