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プリンス・チャーミング なろう  作者: ミタいくら
3章
71/275

70 未来


襲撃事件から二年が過ぎた。ルイとシャルロットは十三歳になった。

ここに至っても未だ父王に目通りが叶ったことはない。生まれてすぐに会っている可能性もあるが、全く記憶もなく父親の姿は靄のうちにある。


だが、ルイは思う。


例の本にある通り、この世界を救うのが今後現れる主人公の少女と王子、あるいは騎士見習い、若い魔道師というならば、本来国の防衛を担う国のトップ、国王はその時何をしているのだろうか。

読み解けている時点で鑑みても、今後の展開に国王の関与はほぼ見えてこない。

もちろん設定として考えるならば、ゲーム購入者達の歓心を得る為に物語を動かしていく主たるキャラクターは若い男女が良い。正しいマーケティング戦略だろう。

しかし、現実世界として王政揺るぎない社会で、国王の存在が見えてこないまま国家存亡の戦いが成立するのだろうか。


ゲームプレイヤーではないルイには想像するしかない。

過去の記憶でもって歴史上の為政者で年少者が国の行く末の鍵を握ったといえば、先代が早世するか心身いずれかの病で政務が取れないかで、跡継ぎが若年で立たざるをえない時。はたまた実権を他者に握られ本来の為政者は意味を成さず、駒としてか傀儡としてか後継が立つ時。


つまり。

ゲーム開始もしくは世界の危機が生じた時、ルイに見えている現状の権力構造は崩壊する、もしくは表に見えていない構造で危機に対峙する事態になるのではなかろうか。

簡単に考えるなら、父が王として不在、あるいは喪失、機能不全に陥るということ。

それは近い未来に確定しているのだろうか。そして既に政務の大半を担っている宰相ロランは、その事態を指を咥えて見ているのだろうか。


考えても意味のないことだ。

ルイは首を振った。

未来は確定していない。あの本に書かれていることも絶対ではない。

シャルロットはゲーム設定や革の本に記されたより重い斬撃を身体に受けた。その為背中ではなく顔に傷痕を残したが、ゲームにあるような引きこもりにはなっていない。傷のある身を気に病むどころか、傷を負う前より意気軒昂に剣術に励んでいる状態だ。宮邸から出ることはないが外の世界を恐れてはいない。

シャルロットに関しては大きな齟齬だが、その他にも細かい点を挙げればゲームとの違いはきりがない程だ。

常世の森で得た大剣──ジュールが聖剣と見倣した不思議の剣は、あの時第二宝剣の装飾に模されて以降、ただの玉石としてそこにただ有る。まるで本当にただの飾りと化したかのように馴染んで、変化は見られない。

帯剣しているルイ自身、普段は全く存在を忘れていた。一応、ジュールとアルノーが文献を漁って調査中とのことだが、詳細は未だ不明という。

ただ聖剣が出現した状況から、第二宝剣と王族の血の結びつきが鍵だろうとの推測を告げられた。不用意な現象を招かぬ為にも、怪我等の出血に対して注意を払うよう念押しされた。その後は、何の報せもない。


不測の事態に徒に脅えるのも愚かだろう。

ひたすら自己を磨き、来るべき時に大事なものを守れるように、大切な人達といられるように力を尽くすしかない。


最後にはいつも行き着く結論に辿り着いて、ルイは己を鼓舞した。


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