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プリンス・チャーミング なろう  作者: ミタいくら
1章
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38 シャルロット


剣の稽古を終えて。

マクシムが帰った後、シャルロットは握っていた木剣をそっと所定の棚にしまった。

今日の稽古はかなり上手にやれた。マクシムの後ろを取れた時は最高だった。

思い返し、ふふふと笑う。



木剣はすでに長さを替えて五回目だ。始めた頃は今のものよりかなり短く軽かった。成長するたび、大きさと重さを替えてきた。もう、剣の稽古を始めて四年になるのだ。来年には、ブリュノが先を潰した剣、鉄の剣をくれると言う。その日も楽しみで待ち遠しい。



シャルロットはもうすぐ十歳になる。ルイと二人で生まれてきて十年が経つということだ。

相変わらず、シャルロットにとってルイが一番距離が近いと思う。そして変わらず大好きだ。

ルイは頭が良くて物事を大人みたいに理解している。だから新しいことを私にいろいろと教えてくれる。

とても賢いのだと思う。

でも二人にとって嫌なこと、良くないことは知らせないで自分の中にしまっているのを、シャルロットはずっと昔から気づいている。

教えてもらっても自分は役に立たないから、ルイが知らせないでおこうと判断したなら正しいから。知らない振りでずっと過ごしてきた。

でも成長するにつれて何となくわかってきた。

ルイとシャルロットを邪魔に思う人達がいること。特にルイが健康に生きてて頭が良かったら、許せないと考える人達がいること。

アンヌも内緒のつもりでいるが、でもきっと当たっている。

そして、メラニーもクレアも外の悪意を理解してここにいる。難しいニンゲンカンケイの中で、多分味方なんだってこと。



だって知っているのだ。

留守がちなルイは気づいていないが、アンヌは宮で定期的に素性調査というものをして、使用人のテキハツを行っている。テキハツに引っ掛かった使用人は解雇されていなくなった。そうしてアンヌはロランに「お願い」をする。急ぎの手紙を書くのだ。するとしばらくしてミモトタシカな人間が新しく使用人として宮で働き出す。

テキハツで必ず辞める人間が出るわけではないが、シャルロットがわかるだけでも数人はアンヌによって宮から追い出された者がいた。

多分、悪いことを考えた人達と仲良しだったのだ。それも秘密に。

剣の稽古やダンスのレッスンの合間に宮のあちこちに顔を出すシャルロットは、意図せずに様々な場に出くわした。


一度、アンヌが溜め息を吐いていたのを見た。

「宰相様からのご紹介だったのに、いつの間にあちらに取り込まれていたものやら。本当に、油断のならない」

ロランのミモトタシカが、いつの間にか悪い人と知り合いになっていた、ということだろう。

仲良しや知り合いが増えるのは良いが難しいな、とシャルロットは思った。こういう危険があっても、メラニーやクレア、マクシムが変わらずルイとシャルロットの味方なのはすごいことだ。ルイの周りにいる大人達も多分。

これだけ味方がいるのだから、悪意を持つ人は諦めてくれればいいのに、と思う。



これらのことはルイには内緒だ。

ただでさえ賢いから、とシャルロットと同じ子供なのに、世界の知識を頭にぱんぱんに詰めこんでしまっているのだ。さらに余計な話をして、大事な頭にこれ以上の負担をかけたくない。

しかもこんな不穏なこと、教えたら心配して眉間に皺が寄ってしまう。きっと自分のことは構わずシャルロットの身を気にして騒ぎ出す。

嫌なことを知らせたくないのは、こっちだって同じだ。知らなくても好きなことをできるように、知らないままでも平気なように、シャルロットが守るのだ。ルイがジュールに魔法を教えてもらっているように、鍛練を重ねて剣を究めてもっと強くなる。戦って怪我をしたって平気だ。ルイが魔法で治してくれる。

双子なのだから、そこはおあいこでいたかった。



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