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プリンス・チャーミング なろう  作者: ミタいくら
1章
30/275

29


アンヌには、帰宅後すぐに知らせた。

淡々と受け入れた姿に、ルイが魔力を発現するとわかっていたのかと考えた。

彼女はロランやアルノー、ブリュノらと大人同士繋がりがある。ありそうなことだった。

確かめると、

「可能ではあると考えていました」

と返ってきた。しかし続いたのは意外な名前だった。

「エルザ様がとても魔力に溢れた方でしたので、あるいは、と」

ルイ様はご熱心に上級言語を学んでおられましたし。

ルイはここで顔も知らぬ母が魔力に秀でていたことを知った。

学校でも優秀だったが、特に魔道師を目指すということもなかったという。ただ魔力を完璧に制御して、逆に生活魔法もあまり使わないで過ごしていたという。

それに倣い、アンヌも宮で魔法を使用しない生活に慣れてしまったそうだ。




「ふーん」

二人の部屋で事の顛末を聞いたシャルロットは、鼻を鳴らしただけだった。

「シャル」

「だって。見せてくれないんだもん。話を聞いただけじゃ、反応のしようがなくない?」

「ごめん」

「ルイの魔法、見たいー」

ソファに転がりむくれられたが、そこは譲歩できなかった。

「駄目。というか、僕だってまだどうやったら魔法が出るかわからないんだよ」

完全に制御できるようになるまで、ジュールの監督下以外で試すことは禁じられた。

どういったはずみで、程度も種類も不明な現象が起きるか知れないのだ。安全と秘匿のため当然の処置だが、シャルロットは不満でいっぱいだった。


魔法、という名だけで心踊る。残念ながらこの宮邸では平凡な簡易魔法も見られない。せっかくルイが魔法を発現させたというのに、話だけで見ることが叶わないのはとても悔しいらしい。

ソファの座面になついたままの態度で、ルイを見上げてくる。

「教えない方が良かったかな」

「それはない!」

ぽつりと呟くと大きく否定された。

「我慢するから!だからこれからも何かあったら絶対教えて。それで見せられるようになったら、私に一番に見せて」

約束、と右手が伸ばされる。その指先に自分の手を絡めてルイは頷いた。

「それで、この事なんだけど」

「うん」

「マクシムには内緒で」

「ええ~。駄目なの?」

するりと繋いだ手が離れる。

宮からほぼ出ないシャルロットと他人との接点は、主に剣術に関わるブリュノマクシム親子に限られる。軽い無駄話となれば稽古を通じて仲が良いマクシムしかいない。

だからルイは念押しした。

「うん、駄目」

直りかけていたシャルロットの機嫌がまたも傾きだす。唇を尖らせ言い募る。

「隠しててもブリュノから知らされるかもしれないのに?ジュールが教えてさ」

「それならそれでいい。ブリュノが教えると判断したならそれはいいよ。あと秘密にしててバレちゃったらそれも。でもひとまず僕とシャルから言うのは無しにしよう」

あくまで秘密は保つ、それがジュールとの約束だ。

シャルロットが考え込む風にソファに顔を押しつけたところで、さらに言葉を重ねる。

「多分、僕の歳で魔法が使えたのって珍しいことなんだよ。だから変に秘密を知っちゃったせいで迷惑をかけたくないんだ」

「そうなんだ」

「うん」

「わかった。内緒にする」

魔法発現の不思議さに納得したのか、秘密保持を素直に納得したシャルロットは、しかし最後に付け加えた。

「でも、話せるようになったことも私に教えて。一番に」

「当たり前だよ」

ルイはしっかりと頷いた。

いつだってルイの中で、シャルロット最優先なのは揺るがない。


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