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プリンス・チャーミング なろう  作者: ミタいくら
6章

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「シャルロット様」

クレアだ。

「マクシム様がいらっしゃいました」

「マクシム?すぐ通して」

待ちわびていた訪れに、シャルロットがぱっと立ち上がって促した。主の意を伝えるべく去ったクレアに、ルイはサヨと顔を見合わせた。

「なに、」

シャルロットが眉をひそめる。

「いや、マクシムがサヨと居合わせるなあって」

「うーん、私、席を外した方がいいかな?」

「え、必要?」

シャルロットはわけがわからない、と首を傾げた。

「んー、シャルは知らなかったか。マクシムとサヨは、相性が良くないんだ」

「私、嫌われてるの」

ふざけたようなサヨの言い様に反射的に言い返そうとして。シャルロットはあー、と天井を見た。

「そうかも。なんか緊張するみたい」

「シャルも知ってたか」

「うん、なんか前にマクシムが言ってた」

「やっぱり私、消えておく」

「俺の部屋に行く?」

「そうする」

ばたばたとサヨが慌ただしく席を外す。


黒髪が消えたとほぼ同時に、マクシムが現れた。

「失礼します。ルイ様、シャルロット様」

「──。うん、マクシム」

「いらっしゃい、マクシム?」

「なんですか、一体」

ぎこちなさが態度にも声にも表れてしまった。当然のごとくマクシムに不審がられる。

「いや、サヨがいてさ」

「マクシムが嫌かなって、サヨはルイの部屋に行ってもらったんだ」

軽く言い繕おうとしたルイに被せるように、シャルロットがあっさりばらしてしまう。

ルイは少しだけ天を仰いだ。

「ごめん」

「──」

一瞬、マクシムが固まる。だがすぐに気を取り直したように笑った。

「お気遣いいただいてすみません」

そこに少しばかり苦さを感じて、シャルロットが眉を下げた。

「余計だった?」

「いえ、ありがたいですよ。俺があの人を苦手に思うのは確かだし。ただ、追い出してしまって、サヨさんに申し訳ないかな」

「サヨなんてどうでもいいよ」

相変わらずシャルロットはサヨに対しては辛辣だ。マクシムがなだめるように言う。

「そういうわけにはいかないですよ」

むー、とシャルロットは唇を尖らせる。

「なるべく早くルイ様を解放しましょう。先日の件の報告を。わかっている時点での話になりますが、簡潔に」

「暇なんだから、待たせておけばいいのに」

「早く済ませたら、稽古の時間が増えます。それでもシャル様は長引いた方がいい?」

不満を溢していたシャルロットはは、と目を見開いた。

「え、あ!この後、時間取れるの?」

「はい。休みですし、父が今日はこちらにいろ、と」

ご迷惑でなければ、と続いたマクシムの言葉をシャルロットは聞いていなかった。

「うわ、やった!うん、話はさっさと済ませて。ルイ、早くして」

やれやれ。

マクシムとシャルロットのやり取りを見守っていたルイは内心、胸を撫で下ろした。これで、ブリュノ側の話も聞いてさらに情報の精度があがる。サヨとの意見交換ももっと深くなるだろう。



改めて三人、ソファに腰を落ち着けて話を聞く。

マクシムはホールで魔道士達に事件当時の話を聞かれていた。その後、王宮の動きを父・ブリュノから様々知り得ている。

しかしまずルイとしては、これを言わねばならなかった。

「シャルロットを庇ってくれてありがとう」

シャルロットがただ一人、魔蝙蝠と対峙したあの時。防御魔法を咄嗟に張ったが、物理的に守ったのはマクシムだった。

「今度は、お役に立てて良かったです」

マクシムはにこりと笑う。

「マクシム、来ないからルイと心配してたんだよ」

「実は、あの日遅れたのには理由があって。父に呼ばれて、王都のすぐ外側に魔物が出現したから、学校でもお二人の身辺に警戒するよう言われたんです」

「それは──」

今、初めて知る話に驚いた。

ブリュノには常に騎士団から情報が入る。それを受けて息子に備えさせたのだろう。その判断は当たった。

「話を聞いて、鎖帷子を服の下につけていたら時間が過ぎてしまって。受付で非常事態が起きてるとわかって焦りました。でも間に合って良かった」

「受付?え、何かあったのか?」

「いつも校門横にいる受付の職員が二人とも倒れてました。カウンターの裏で意識がなくて。確かめたら、体から魔力の跡を感じたんです」

これも初耳だ。マクシムは自身は魔法は疎いが、これまでの経験で魔力には敏感に反応する。

「それで」

「異変が起きていると判断して、急いでホールに向かいました」

偶然、ではないのだろう。入学して一年以上経つが、受付の職員が勤務中に支障を来す異常が起きるなど聞いたことがない。なのに二人揃って、校内に魔物が現れた同時間に昏倒するなど。

今回の襲撃は、計画的に為されたと見るべきだ。


「魔道庁の方に事件について訊かれた時に、俺の気になった点と一緒に受付の話もしました」

「気になった点?」

「魔物とか聖剣は学校の皆も見ていたから。そちらからも話を聞いて、俺に聞かなくてもある程度魔道士の方もあらましを掴んでると思います。なので、細かいことを」

生徒達が気づかないような。それは、一体。

「ルイ様やシャル様のことじゃありませんよ」

言って、マクシムはすっと表情を厳しくした。

「ホールにいた兵、警備兵です。まず、数が足りない。いつもの配備より少なかったです。校内の同規模のパーティーの際はいつももっと人数がいます。なのに、俺が飛び込んだ時にいたのは本来の半分程でした」

ルイは息を吸い込んだ。

あの時自分の感じた違和感。マクシムは入ってすぐ見てとったのだ。さらに続けて指摘する。

「そこで居合わせた当番兵ですが、あまりにも無力だった。警備の、役に立っていない」

マクシムにしては珍しい、語気までも強い否定。

「もちろん錬度の高い騎士と一般雇用の兵は違いますが、あれは訓練された警備兵の動きじゃない」

そこまで言われて、ルイはフィリップの間近まで迫った蛇と相対した警備兵の対応を思い出した。あの時のたどたどしい攻撃。

「俺も、少し動きが鈍い気がした。初めて魔物を見て、対応に戸惑っていたのかと」

「いえ。戸惑いではなくて、倒す意志が無いように見えました。ただ、俺の気のせいかもしれない。彼らの剣では魔は討てないし、そのせいかもですが」

あくまで、自身の所感として魔道士達に告げたという。

「帰宅して父にもそのことを伝えました。警備兵があれでは、また事が起きたらどうしようもない」

ブリュノからロランへ、そして学校内の警護体制は見直しをされるのか。フィリップが狙われたのだ。フォス公爵派も賛同する。否が応でも警備は強化されるだろう。魔物を倒す力が彼らの持つ剣に付与されるかもしれない。

「まあそのようなわけで、校内の職員の異常も人為的な工作によるものとして調査対象になっています。王族が狙われたのですから、国家の大事になっていますね。政庁主導で魔物を引き入れた大元の犯人の捜査を徹底的にしているところです」

マクシムの王宮──政庁を頂点とした魔道庁や騎士団の方向性は、概ねルイの想定と合致した。


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