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プリンス・チャーミング なろう  作者: ミタいくら
5章
152/278

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「宝玉を手にするのは魔道師と魔物の攻略対象者だっけ」

「うん。で、盾がマクシムと第二王子」

「盾の話はしないんだろ?」

「そうだけど。攻略対象者については話すわよ」

「フィリップだよな」

「そう。彼の場合、母親の王妃、実家のフォス家、婚約者のミレーユまでゲーム設定の通りよ」

「じゃあ、盾が見つかっていないのも含めて、シナリオに沿って進むと見て良いか」

「うん、まあ多分」

「王妃が俺達を嫌ってて、昔襲わせたっていうのもゲームまんまなんだろ?」

「それはそう。ルイーズが背中に傷痕作って引きこもる原因よ」

「っ。──フィリップには悪いが、王妃を好意的に見るとこは出来そうにない」

一瞬、血塗れのシャルロットを思い出して呼吸が跳ねた。あの時の大事な存在を喪う恐怖は何年経とうと忘れられない。

一瞬気遣うような目をして、サヨはさらりとルイの気持ちを肯定する。

「それは当然でしょ。あっちも敵意しか持ってないから安心して」

「あー、うん。その辺りはロランやジュールが警戒してて、何か動きがあったら教えてくれるようになってる」

宰相と力のある魔道師が網を張ってくれているのは心強い。

と、

「あれ。ゲームだとシャルル王子には俺みたいな味方になってくれる大人がいない、のか?」

ヒロインとの常世の森に行くイベントの話でも思ったが、シャルルには頼れる大人の味方がいない。

「そうね。ブリュノ将軍が一応後見人みたいな感じだけど、ゲームではほとんど名前だけ。マクシムが出張ってくるくらい?」

「キツいな」

アンヌは変わらず一番身近で支えてくれているだろうが、外の世界でシャルルとルイーズを庇護し助言を与えてくれる者はない。しかも一番の理解者である妹は、宮に引きこもっている。

「でも、その代わりにルイのように子供の時に常世の森に行く羽目にはなってないのよ」

これは逆にルイが、シャルロットが、それぞれに道を選んだが故のことだ。

「……なんか、頭がこんがらがってきた。まあ、今の俺の立場でも悪くはないってことだな」

「そう思っておきなさいよ。前向きにね。で、フィリップの話に戻すわね」

「うん」

「フィリップはヒロインと同学年だけど、特別クラスだからクラスメイトではないわ。ただ、彼の性格が結構厳格というか気難しくて。シャルルが明るくて華やか、活動的な王子様だから、その反対?血筋と育ちは文句無しに良いけれど、少し冷めた見方をする陰のある王子様ってところ」


キャラクターのバリエーションよ。


サヨがウインクをした。

「周りは取り巻きの貴族が固めているんだけど、本人は彼らと親しくする気はないの」

「婚約者もいるんだろ」

「ミレーユね。こちらは完全なお姫様で、次期国王に相応しいって身分で決めたお相手。だからゲームの始まった時点では、儀礼的な関係なの」

散々サヨに女性向けゲームの『お約束』を指南されてきたルイは、なんとなくその先が読める気がした。

「それでフィリップは、主人公に会って意気投合するのか」

サヨがふふっと笑う。

「そうよ。母親とか婚約者のような典型的な貴族女性とは違うヒロインが新鮮に映る。ってやつ」

「いろいろよく考えるな…」

「いや、女性向けでは本当にありがちなパターンだから、こんなのに感心しないで」

「そうなのか」

「ただ、フィリップは国王になる為に生きてるの。存在理由と言ってもいい。だからコレットに心惹かれても行動は起こさない」

「庶民のコレットと付き合うと、王にはなれない?」

「そう。で、フィリップは悩んだりするんだけど、 魔物襲撃イベントがあって、なんやかんやで王位よりコレットを選ぶ」


フィリップルートでプレイすると、不仲の母親との葛藤エピとか、婚約者が邪魔するエピとか細かいイベントがあるのよ。

サヨは大まかに説明を加える。

「最終的にコレットが聖なる乙女とわかって妃になれて、こちらもめでたしめでたし」

「大変だな」

「それがゲームの醍醐味だから。途中でヒロインが挫けてフィリップルートから外れたら、第二王子は大人しくミレーユとくっついておしまい。基本、シャルルルートで聖なる乙女大活躍のエンディングでない限り、次の国王はフィリップで決まりなの」

「へえ」

これは初めて知る話だ。王妃を擁したフォス公爵の権勢を、少しでも削ごうとしているロランが聞いたら、嘆くかもしれない。もちろん、ゲームの仮定など言える筈もないが。

ただ、話を聞いて受けた印象や学校で耳にする評判から、フィリップ自身は王の資質を備えているとルイは感じていた。


「俺としてはフィリップが王になるのは構わないんだけど、それで俺とシャルの立場が危なくなるってことはないのかな」

「んー。これは先の話だけど、フィリップは貴族達への対応が厳しいけど、シャルルを排斥するような動きはしないわ。この世界でルイがフィリップと特別に不仲になるとか、お互いに何か仕掛けるって話だと別だと思うけど」

「俺は自分とシャルに害がなければどうでもいいよ。ってことは兄弟間は対立しないんだな」

「あ、でもゲーム上でシャルルとフィリップが、ヒロインを取り合って激しく争うっていうのはあったわよ」

「──」

「あったけど、でもそれで後継者争いでどろどろ、にはならなかった」

「でも、二人はいがみ合うんだろ」

「まあね。でも三角関係で終わるっていうか、結局ヒロインの意向で勝者が決まるようなものだから。あと、他の攻略対象者ルートもあるから、そっちで進んでも無風よ。その場合、メインの話にはならないけれど、ヒロインが救った国はフィリップが即位して平和に続きましたってなるの。

ゲームのシナリオではいわゆる王位を争った政争は起きないかな。お互い、跡目争いでその身が危うくなる羽目には陥らないわ」

「本当か」

「私の覚えてる限りではね。シャルルにコレットを奪われたフィリップは、大人しくミレーユと結婚するし。生き死にの問題になるのは、宝を取る時と魔物やラスボス魔道師との戦い、それとシャルルの場合は王妃派の襲撃くらい」

「くらい、ね…」

今、あっさりと語られた数々の困難をそれで片付けないで欲しいが、それでもフィリップと立場と命を賭けた抗争にならない(多分)のはありがたい。

兄弟で戦うのは、シャルロットの心にもいらぬ負荷をかけることになる。

そう口にすると、サヨがまたあらぬ方を見た。

「そういうところだけゲームに忠実でなくても良いんだけど」

「?──それで、次の攻略対象者は」

フィリップについての話は粗方終わったとみて、ルイは続きを促した。と、サヨは首を振った。

「もう遅いから、あとの二人はまた」

「いや、気になるだろ」

「フィリップまででキリが良いでしょ。この続きは、次の時にする」

「そんな、」

ルイとしては今夜のうちに聞けるだけ聞いてしまいたい。だがサヨは言い渋った。

「ゲームでもまだ出てこないから知らなくても平気。だから」

「そう言われたら仕方ないけど、さ」

残りの二人が気になったが、サヨは譲る気はないらしい、

ルイは窓際に近寄って外を見た。

確かに、月の傾きから随分と時を過ごしているのがわかった。これ以上話を聞いていたら夜明かしになりかねない。次の日のことを考えて、シャルロットの機嫌を配慮するなら、ここらが潮時だった。

「わかったよ。じゃあ次の時にな。俺も少し調べてみるから」


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