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プリンス・チャーミング なろう  作者: ミタいくら
5章
149/277

147 『聖なる祈りと三つの宝』とは何か


あの日、ルイがサヨと話し合って出た結論は、基本的に『待ち』。

その結論を奉じつつ、情報を集めるのも忘れない。


ルイは、シャルロットの元を訪ねてきたマクシムを帰りしなに捕まえた。塔の件をブリュノや騎士団はどう捉えているのか知りたかったのだ。

マクシムによると、塔の崩壊後すぐ邸に報せがあり、夜のうちにブリュノは王宮に呼び出されたという。早朝一度戻ったが再び今度は騎士団へ向かった。マクシムが下校した時には不在のままらしい。

宰相ロランを中心に、王宮から魔道庁、騎士団、関係官庁が動いているのだと察せられた。


次の日は早めに処置室の手伝いを切り上げて図書館に話を聞きにいった。

アルノーを捕まえて塔の由来を訊いた。

すると、鐘塔は魔物を封印していると書物に記されていたらしい。それが真実かどうかアルノーは調べ始めていたが、遅れて現れたジュールの一言で事実は判明した。


鐘塔崩壊の翌朝、変事を受けてジュール自身、魔物達の活性化を感じたという。慌ただしくアルノーと意見を交わし、ロランに図書館で見つけ出した鐘塔に関する資料の提出と自身の感想を併せて報せた。

事の重大さに宰相以下、王宮は素早く動いた。国内の魔物出現率が高い地域に伝令が飛んだ。辺境に配備された騎士と魔道士に問い合わせたところ、それぞれの地で魔物がそれまでの生息域から外へ侵食するような気配がみられる、との報告が複数返ってきた。さらに、既に監視対象であった営巣地から這い出て民の生活圏域に至る緩衝地に出現したとの目撃情報すら上がっていた。

騎士や魔道士の監視網にあるのは、もとより魔物が群れで出現しやすく、かつ『比較的』魔力が強い魔物が出現する要注意地点だ。これまでは騎士達の物理的な攻撃と魔道士の封じ込めの魔法で事足りてきた筈のそれらが、揃って不気味な活動を見せている。

事件から一週間も経つと、鐘塔の破壊が魔物の跋扈に繋がっているのは確か、という認識が国で共有された。

このままでは国の端々から、じわじわと魔物に国土を切り取られかねない。各地の予断を許さない状況に騎士団と魔道庁は一級の臨戦体制となり、手練れの者達が地方へ派遣されることが決定した。



アルノーとジュールからある程度国の方向性を掴んだルイは、校内でマクシムと行き合った折に再びさりげなく尋ねた。案の定、騎士団に所属する二人の兄、ダニエルとクロードは王都に帰還予定だったのが急遽変更になったという。休暇は返上となりまた別の地方へと飛ばされたとのことだった。

やはり、と帰宅後サヨと話し合ってゲームが国の破滅へと、聖なる乙女の救済へと進んでいると確信する。シナリオの縛りは強固ということなのだろう。




平凡な日課をこなしつつゲームの設定が現れないか注意深く探索する日々。

そうして、ルイは改めて前世における『聖なる祈りと三つの宝』の内容をサヨの知識を元に二人で精査することにした。



ルイの部屋、居間の定位置に二人、卓を挟んでソファに座す。この距離を維持すればジュールの魔法は発動しないことは経験則でわかっている。

「まずは、基本的な話。昨夜また革の本を読み返してきたんだけどさ」

「持ってこられたら話は早いのに」

革の本は夜半、行き着く小部屋でしか見ることはできない。昼間に幾度記憶の通りに宮の廊下を辿っても探し当てられたことは一度もないのだ。

これもまた、ルイがこちらの世界に生まれ出でた不思議と連動しているのだろう。夜、ルイだけが見つける小部屋で、ルイだけが読むことの出来る、この世界のゲーム展開を記した革の本。

「無理だってずっと前から言ってるだろ。俺が覚えてるから、それでよしとして話を進めるぞ」

「OK」



「主人公はコレット・モニエ。これは確定で良いな」

「そうね。学校にあるプロフィールもゲームと一致する」

王都在住の一家の一人娘。

両親は健在で商売を営んでいて安定した家庭環境で育つ。金銭的には平民としては中の上。贅沢はしないが娘の教育費用は切り詰めて捻出した。王立学校には娘の意志で進学。特待生。本人の向学心は高く、一年では魔法学で特に優秀。

ここまで、ゾエとジェロームに懇願して学校が把握している個人情報を融通してもらっている。前世では許されざる所業だが、世界を救う為だ。と自分に言い聞かせて良心に蓋をした。

「ま、前世のゲームプレイヤーの記憶があるけど」

サヨがいたずらっぽく付け加えて、ルイは渋面になった。

「魔法に関して成績優秀なのは、聖なる乙女だから。潜在的な魔力は多分この世界では限りなく多い。光の魔法、治癒、防御関連の魔術に向いていて、本来の力を発揮したら無敵」

「すごいな」

「ゲームプレイヤーだからその辺は意識してるでしょ。だから教科の選択もそっち方面にしてるし、ゲームとして進んでいくに従って、間違いなく能力開花は起きると思う。聖なる乙女として当てになるわ」

「俺と共闘してくれるか微妙だけどな」

「まあね」

こういう時、サヨは正直だ。下手な慰めは口にしない。

前世のアイドル時代、可愛げがない、冷たいと言われた所以だろうが、ルイはあまり気にならなかった。いろいろ隠されてたりするものの、楽観的な物の見方をしない公平さは頼りになった。


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