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プリンス・チャーミング なろう  作者: ミタいくら
4章
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国王を中心としたナーラ国執行部。それは宰相を長として内務省、法務省、財務省、外交省など多岐にわたる。その各省庁の重職にある者が王宮の一つ処に集っていた。


「それにしても、順調に育ったものですな」

「まことに。当時を思えばよくまあ、あそこまで、とも感じます」

「亡き妃の面影がありましたな」

口火を切った者に頷く面々。それを切り捨てるように、上座に座った男が言い放った。

「見かけが良いのは想定内だ。あの妃の子なら醜くはなるまい」

不快感が覗く強い声音に場がしん、と静まり返る。

「と言って、我らの王子殿下が見劣りする筈もなし」

「それは当然のことで」

取り繕うかのような追従に、他の者も同意する。この場の支配者の意に背こうとする者はいない。

言葉は意見を交わすものではなく、上座に在る者の望む答えを、最良の解を導き出すための道具なのだ。

ここは王宮内部に割り当てられたフォス公爵の私的空間。国王の起居する奥とも、宰相が出入りする公館とも離れた一画だ。



「第二王子殿下が入学されるまで一年。あの者共がおかしな動きをせぬよう、学内で支持者を増やす風向きにならぬよう監視せよ」

「それは無論」

「我らの意思を汲んだ家の子弟も多く在籍しておりますので、ご安心を」

王立学校は国の援助と保護の元に設立されたが、学問の独立を維持する為に政府関係者や権力者の関与を嫌う、半ば自治独立地だ。国が派遣するのは学校の治安を保持する為の警備兵及び、衛兵のみ。

故に有益な駒となるのは、校内で自由に動ける生徒達なのだ。齢十五で既に国の有り様も派閥の存在も家の立ち位置も理解している子供達は、親の、さらにはその上に立つ権力者の望みを考慮して行動する。目も耳も、頭も使える尖兵達の力は侮れない。

意に従う生徒は三学年全てに存在する。この場に集う彼らも貴族社会で揉まれかつて通ってきた道であり、大人の介入を拒む場で未だ有効な手段だった。

「閣下の目指すものは、我らにとっても最大の望みでございます」

「来年入学される殿下の障りになるようなことは、全て芽の内に摘み取る所存にございます」

万全の態勢でもって迎えると胸を張って引き受ける。

だが上座の大貴族、フォス公爵の面は晴れない。周囲の者達は口々に気遣いを形にする。

「閣下?」

「ご不満がおありでしょうか」

「お気に召さぬなら、教師の方にも手を回しますが」

「いや」

違うのだ、と首を振った。

「妃殿下が、な。謁見を終えてからご気分が優れず床についたままなのだ」

「なんと」

「そういえば。私の甥も妃殿下は宮に籠りきりと申してましたな」

「いかにも。私の縁者も、麗しきご尊顔が拝せぬと嘆いておりました」

東の宮のサロンに通い詰めている者達にも会わぬのだ。

「考えすぎだと申したのだがな」

「妃殿下は繊細であられるのでしょう」

「うむ。あれらを目にして動揺したのだ。玉座に並ぶ王子は、フィリップ殿下しかいないというのに」

「まことに」

「殿下が入学されたなら、あちらなど存在が書き消されることでしょう」

「それはわかっている。だがあと一年ある。その間にあの者がおかしな具合に祭り上げられたりせぬようにな」

この場の主の念押しに一同、頭を低くした。

「わかっております」

「校内で何事かあれば、即座にこちらで手を回すよう、よく伝えておきましょう」


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