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最善で最悪な運命

霊夢の能力設定でかなり悩んでしまって、編集に次ぐ編集で結局霊夢の能力は『超越視』というものではなく普通に勘だったことにしました。混乱した読者様がおられましたら申し訳ございません。

ほら、さっきの大口はどうした!もうおしまいなの?博麗の巫女!」


ぶち破られた天井の上から撃ち下ろすレミリアの弾幕は能力が戻って右目の視力が回復したこともあり、一層激しさを増していた。床を駆け抜ける霊夢も負けずに弾幕を撃ち返そうとはするものの、ほとんど避けるのに精一杯で防戦一方になってしまっている。


(恐らく勘と『運命を操る程度の能力』は未来を見て、より良い未来を手に入れるという点で同系統の能力…しかも勘が全く機能しなくなっているから運命操作は完全に概念レベル…!流石にやばいわね)


「気づいたか、博麗の巫女!所詮あなたは私の下位互換!人間風情がこのレミリア・スカーレットに勝てると思うな!天罰『スターオブダビデ』!」


レミリアの背後に魔方陣が形成され、そこから赤いレーザー光線が撃ち出される。霊夢は勘を使ってレーザーの射線を予測し飛び上がることで避けようとするも…


「そんなのありなのお?!!」


何と、レーザー光線が伸びていく途中に再び魔方陣が嵌め込まれ、そこで方向が曲げられ霊夢の避けた方向へと軌道が修正されてしまった。


「くッ!」


霊夢は間一髪でレーザーを避けるものの、追撃に放たれた弾幕までは避けられない。咄嗟の霊夢の機転で大幣を剣のように振るって弾幕に押し当て、爆発を引き起こすことで直接のダメージを避ける。


「なるほど、そういう使い方もできるのね」


レミリアの声が聞こえたかと思うと霊夢の前に漂う爆煙が急に晴れる。


「ならばこれならどうかしら!?」


晴れ上がった爆煙から出てきたのはグングニルを片手に握りしめているレミリア。そのまま霊夢に向かって突撃し、霊夢の大幣と神槍が交わり鍔迫り合いにまでぶつかる。そこから神槍の斬撃で霊夢の大幣による防御を振り払う。斬撃の威力は凄まじく、霊夢は押し負けて地上へと墜落する。


「こんにゃろう…!」


地面にめり込むほど叩きつけられた霊夢が軋む身体を起こす。やるなら弾幕の止まった今しかない。そう判断した霊夢は墜落の衝撃による口元の吐血を袖でぬぐいつつ立ち上がり札を掲げる。


「夢符『封魔陣』!」


レミリアの追撃をこれ以上喰らわないために、霊夢は弾幕を撃ち返した。霊夢の立つ地面に正方形の結界のようなものが作り上げられ、上空へと伸びていく。


「おっと!危ないわね」


霊夢にとどめを刺そうと急降下していたレミリアはくるっと後ろに宙返りして避ける。そしてそのまま地上に降り立って言い放った。


「博麗の巫女とはいえ所詮は人間ね。私の能力の前では全くの無力。少し期待してたんだけど…残念だわ」


「言ってくれるじゃない…!」


レミリアの嘲笑に歯噛みする霊夢だった。



***



同時刻、パチュリーの図書室にて。


「禁弾『スターボウブレイク』!」

「木符『シルフィホルン』!」

「恋符『マスタースパーク』!」


館から出ようとするフランとそれの阻止を試みるパチュリーと魔理沙が弾幕を激しく撃ち合っていた。フランの弾幕が雨あられと撃ち込まれ、パチュリーがそれを防ぎ、パチュリーの後ろから魔理沙がフランを目掛けて巨大レーザー砲であるマスパを撃ち込む。


(フランも弾幕は魔力を使ってでしか撃てない…これでいい。魔力切れに持ち込めば私達の勝ちなんだから!)


パチュリーと魔理沙がアイコンタクトで確かめ合う。


「キャハハハ!まだまだ!禁忌『カゴメカゴメ』!」


フランから緑の小玉弾幕に加え、黄色の大玉弾幕が放たれた。またかとパチュリーは弾幕を継続する。しかし、魔理沙が叫んだ。


「気を付けろ、パチュリー!その黄色弾幕、弾幕を弾くぞ!」


「な…っ!」


気づいた時にはすでに遅く、パチュリーの目の前にまで接近している。咄嗟のことにパチュリーは避けることができない。魔理沙は意を決した。


「ぬおおっ!」


魔理沙はパチュリーの身体を上の方にぶん投げる。自身は出来るだけ身をかがめ、弾幕を喰らわないようにする。しかし、弾かれたことで変則的な軌道を描く緑色弾幕の餌食となってしまった。


「ぐおっ…!」


爆風で床に叩きつけられる魔理沙。キャハハハと笑うフラン。


「弾幕と弾幕がぶつかれば打ち消しあって爆発なんて所詮は概念だよねー!私の弾幕に概念破壊の能力をつけといて壊しちゃえば何も問題ナシ!キャハハハ!」


フランの無邪気な笑い声が響く中、魔理沙は何とか立ち上がった。


「いってて…死んだら呪うぜ、マジで」


魔理沙は身体の至る所に傷を負い、そこから鮮血が吹き出し、足元は覚束なく、フラフラしている。


「人間なのに頑丈なんだね!ますます壊したくなっちゃった!」


フランは杖を構える。魔理沙はフランを睨んで不意にふっと笑っていった。


「ああ、頑丈さ、人間は。例え他人に壊されても自分を作り直せる。自分をいつか取り戻せる。ただ壊すだけのお前とは違ってなあ!」


魔理沙の最期の魂の叫びの凄みがフランを、その場を圧倒する。


「なんだと…!」


フランは癇に触ったようで怒り狂って魔理沙に突撃する。魔理沙はヒラリと避けるとそのままフランの部屋へと走り出した。


「ハハハ!所詮は負け惜しみ!飛んで火に入る夏の虫!そこには出口なんかないのに、残念だったねえ!」


フランも魔理沙に続けて部屋へと飛び込む。その瞬間、魔理沙は叫んだ。


「今だ!パチュリー!」


刹那、滝のような音が部屋の外からした。いや、むしろこれは…


「…流水を壁に張り巡らしているのか!吸血鬼の弱点を!」


フランは壁に開けられた穴から見える激流を見て気づいた。まるで壁にシートを貼るように激流の層が壁に張り付いている。魔理沙はニヤリと笑うとまだ激流に気を取られているフランを尻目に部屋のドアを開けた。


「待て!」


フランは手を伸ばす。握りつぶして魔理沙を破壊しようとしたのだ。しかし、魔理沙はフランの破壊を喰らうよりも先に外へと脱出に成功した。


「ハア、ハア、ハハハ…何とかなったな…パチュリー…」


激流を通り抜け、血と水でずぶ濡れになった魔理沙は安心したのかそのまま仰向けに倒れ込む。


「…あなた、魔法使いにしてはなかなかやるじゃない」


「そりゃそうだぜ。何たって私は人間の魔法使いだからな」


「…それは関係ないと思うけど」


パチュリーは倒れている魔理沙に何の敵意もなしに近づいた。そして魔理沙の側に座り込んだ。もうそこに敵味方の区別はなかった。むしろ一種の魔法使いの友情さえ芽生え始めていた。


「あなた、名前は?」


「霧雨魔理沙。以後よろしくな!」


今まで笑わなかったパチュリーが初めてニコリと笑った。



***



「言ってくれるじゃない…!」


霊夢はかなり怒っていた。レミリアの人間に対する侮辱に。博麗の巫女に対する侮辱に。そして、幻想郷に対する侮辱に。


「だって現実を見なさいよ。人間は妖怪に勝てない。この事実は動かない。博麗の巫女なんて妖怪に対する対抗組織を作ったとしてもそれは同じ。水は上から下に落ちるように結局は何の意味もなさない。全ては無駄なのよ。わかる?」


「無駄…?」


「だから今回の異変を起こした。より良い、より意味のある幻想郷を作るためには強者による支配しかない。生きていること自体無駄な弱者たる人間を慮る現在の幻想郷の姿勢ではとてもこれから先やっていけないから…まあ、あなたはそんなこと考えたこともないでしょうけどね」


レミリアなりの正論だった。霊夢は少し頭が冷えたようで黙り込む。そして、言い返した。


「…生きることに意味なんてあるの?」


「は?」


「私は生きることに意味はないと思うけどね、人間にしろ、妖怪にしろ」


霊夢はスカートについた土を手で払いながら言った。


「どうせ死んでも誰かが代わりになる。社会が代わりを求め、作り上げてしまうから。結局代わりがいるのは誰だって同じよ。そんな存在に何の意味があると思う?」


「じゃあ死んだらどう?」


レミリアは残酷な言葉を言い放つ。


「意味がないから死ぬってどーなのよ、どうせ死ぬことにも意味はないのに。せっかく生きてるんだから、無駄に無駄を重ねて死ぬまで生きていく。それが人間ってものよ。人生に意味を求めること自体間違いなんじゃない?それに…」


「何?」


「私はまだ負けてはいないわよ」


そういうと霊夢は飛び上がって戦闘体制を整える。


「ふん、ぬけぬけとほざきやがって!まあいい、ならばこちらも全力で応えましょう!」


レミリアもふたたびグングニルを出して構える。霊夢は御札をレミリアめがけて投げつける。


「ハッ、ただの通常弾幕ね。スペルカードすら出さないとは!」


レミリアはそう言いながら自身の最強と言っても過言ではない能力を使う。


運命づけられた運命(オーダーフェイト)!!」


次の瞬間、レミリアの右目の紅はなくなり、瞼は閉ざされた。


「これで私は5秒間、最善の運命を辿ることができる。指定時間は…今からよ!」


レミリアは次の瞬間、霊夢の弾幕の間を縫うに進み霊夢から10メートル先ほどで止まり、弾幕を空間を敷き詰めるほどの密度で放った。


「紅符『スカーレットシュート』!」


霊夢めがけて弾幕が襲いかかる。霊夢は後ろへと避けようとするが…


「…しまった!」


霊夢の後ろはまだ破壊されていない部分の天井。天井を突き破るには弾幕が近すぎて時間が足りない。弾幕を大幣で撃ち返すしかない。しかし、これでは…


「…完全にデジャヴじゃない」


さっきの墜落と全く同じだ。しかも、この高さ。無事でいられるかわからない。しかし、大幣で撃ち返さなければ死んでしまうことは間違いない。


「流石『運命を操る能力』ね…」


霊夢は諦めたのか、普通に大幣で撃ち返す。グングニルを持ったレミリアが突っ込んでくる。もう右目は回復し戻っている。しかし、霊夢は不敵な笑みを浮かべて言った。


「だが、ついに堕ちたわね、あんたの能力!概念から事象に…幻想から現実に!」


「何?!」


「あんたの能力の恐ろしさは概念で私を攻撃したってことよ。でも、今のあんたは運命操作に基づいた行動しか無い!能力が行動だけならどうなると思う?!」


「まさか…!」


「そう…すでにあんたは私の勘の射程内なのよ!完全自動追尾式弾幕、『ホーミングアミュレット』!」


霊夢がそう叫ぶと、さっき霊夢が放った弾幕がレミリアめがけて急速に反転し襲いかかった!レミリアは振り向いて弾幕を見つめる。


「あなたが何と言おうとこれが最善の運命!私の勝利には変わりない!運命づけられた運命(オーダーフェイト)!」


そういうと再び右目の紅が消える。そしてレミリアは前進しつつ、グングニルを指を軸に水車のように回転させながら弾幕を裁いた。


「ふん、所詮は…」


レミリアがそう言いかけたその時だった。


「霊符『夢想封印』!今度こそ喰らって倒れなさい!」


レミリアの背後の霊夢が光弾を放つ。レミリアが振り返るともう逃げられない距離にまで接近していた。


「馬鹿な!これが!最善の運命だというのに!こんなことがああ!」


レミリアの四肢に光弾が直撃する。レミリアは光に包まれ、そのまま地上に墜落した。


「最善でも最悪なルートなんてことはいくらでもあるのよ、世間知らずの『お嬢様』」


霊夢が地上に降り立つ。意識もなく横たわるレミリアの側に歩み寄って大幣を心臓に向ける。


「せめて、苦しまないように一瞬で死なせてあげる。それじゃ…」


霊夢が大幣をレミリアの心臓に突き刺そうとしたその瞬間だった。


「そこまでにしときなさい、霊夢」


振り下ろそうとした霊夢の手を掴む手が霊夢の視界に映る。霊夢が振り返るとそれは─八雲紫だった。

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