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未来人に恋したら「来世」の自分だった話

作者: ミヤ

タイムトラベルしてやってきた未来人の女の子。

彼女は僕に会うために、この時代に遥々やって来たらしい。


タイムトラベルという時点ですごく突拍子のない話だけど、

彼女の雰囲気とか見た目とかを見て、とても嘘をついているようには見えなかった。


だから僕は、そのことにはあえて突っ込まずに、

なぜ僕に会いに来たのかという部分について尋ることにした。



「君は僕の子孫なの?」


「それとも、僕は未来の世界では教科書に載るような有名人になってて、

その偉人の若かりし頃の姿を拝みにきたとか?」


思いつく理由を全て列挙してみるものの、

どれも正しい答えではないようだった。



「会いに来た理由はね、もっと仲良くなったら、教えてあげる」

「だって、その方がきっと、絶対驚くから!」

僕をからかように、でも優しい笑顔で彼女はそう答えると、

「またね!」

とだけ言って僕の前からいつの間にかに姿を消した。


まるで瞬間移動でもしたかのように、一瞬目を離したうちにいなくなってしまったのだ。

最初は半信半疑だったけど、もしかしたら本当に、未来人なのかもしれない。

今度会ったら、ちゃんと未来のことについても聞いてみようと思った。



あの日から彼女は、たびたび僕の前に現れるようになった。

たわいもない話を交わす日々が増えていった。


今僕は何をしているのか。この時代では何が流行っていて、僕は何に興味があるのか。

趣味や目標、夢や思い出話、他の人にとっては本当にどうでもいいようなことを、

彼女はとても嬉しそうに、微笑みながら聞いてくれた。


こんなに自分のことを知ろうとしてくれる人に出会ったことはなかった。

気づくと僕は、彼女に恋をしていた。

未来から来た、決して手が届かない女の子に。


だからこそ、この淡い時間を噛み締めようと思った。



彼女は僕にも、たくさんのことを教えてくれた。

未来の世界のこと。そこで彼女が、どのように暮らしてきたのかについて。


何が好きで、将来はどんな人になりたいのか。

今までの人生で楽しかったことや、そうでなかったこと。

彼女にとっての未来と、過去、彼女が生きてきた人生の全部を、

彼女は僕に教えてくれた。




そしてとうとう、彼女が未来へ帰る日が来た。

僕は告白をした。涙を流しながら。すごくかっこ悪かった。


彼女も泣いてくれた。微笑みながら、たくさん泣いてくれた。

そして、最後に僕に会いに来た理由を教えてくれた。




僕は彼女の「前世」の姿なのだそうだ。


輪廻転生のメカニズムが科学的に証明された未来では、

前世の自分を探しに行くタイムトラベルが人気の文化になっていたようだ。



だからこれはお別れではないのだと彼女は言ってくれた。


僕はこれからも生き続けて、この人生を全うして、

そして、数百年先の世界で、彼女として生まれ変わる。


そしてずっと、彼女の側で過ごすことになるのだ。


だからこれは、お別れではないのだという。

僕たちは初めから、誰よりも深い、深すぎる縁で結ばれていたのだ。



彼女は未来へ帰っていった。



次は、僕が彼女に会いに行く番だ。

長い時間をかけて、遠い未来に会いに行くんだ。

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