<終>
ガスマスクを外し、思い切り息を吸う。
周囲は瓦礫の山で、人は一人もいない。
「ここら辺は空気がマシになったなぁ」
背の高い細身の男は、ぐんと伸びをした。
✱✱✱
────崩壊が始まったあの日から、10年が経った。
現在は地球の約半分が、廃墟と化している。
元々少なかった人口は、もう100人程度しか残っていないそうだ。
この崩壊は彼女がもたらした、などとと言う者も居たが、この世界はどちらにせよ滅んでいたと、僕は思う。
「─────いつまでたそがれてるの?オジサンっ」
倒れた電柱の上に立つ、一人の少女。
「あれ……これ夢で見たな」
僕がつぶやくと、彼女が楽しそうに笑う。
「ははは、なにそれデジャヴってやつ?」
「デジャヴ……んー、違わないけど違うんだよ、ほんとに、夢で見た事あるんだ」
少女はからかうように笑ってから、ぴょんと飛び降りて着地する。
「ふうーん!ま、なんでもいいけどお腹すいたよ、戻ってなんか食べよう、アセビ!」
男の手を引いて、少女がその名を呼ぶ。
「分かったから引っ張るなって!」
「もう〜先行っちゃうからね!」
少女はふいっとそっぽを向いて、勢いよく駆け出す。
「あ、ちょっと、走ると危ないよ!」
「待って!──────スイレン!!」
少女を追いかけて、男がその名を呼ぶ。
「ここまでおいで〜おじいちゃんっ!」
スイレンは楽しそうにはしゃぎ、笑う。
「誰がおじいちゃんだ!!」
ヒスイは、アセビは、笑いながら走る。
✱✱✱
瓦礫の山の、倒れた電柱の上。
器用に置かれた翡翠色の、小さなガラス花瓶。
青く光る睡蓮の花が、静かに、美しく風に揺れていた。
ここまで読んで頂き、本当に有難うございます!
突然思い付き、6時間で書き上げた勢いの作品でしたが、読み返してみると自分でもちょっと好きだなと思えました。笑
さて、こちらは完結しましたが、連載中の
『波晴るる。』は完結までもうひと踏ん張り。
頑張って最後まで彼女たちの道を作ろうと思います。
どうかこれからもよろしくお願い致します。
秒針とアポカリプス、有難うございました!