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24話:邪竜ちゃんと小さい星

 邪竜ちゃんは川にじゃぼんと落ちて正気に戻り、水しぶきを撒き散らしながら戻ってきた。


「うあうあー!」


 そして邪竜ちゃんは木の箱の宝物入れからきのこの入った森の魔石を取り出して、悪魔の少女に差し出した。


『あげるー!』

「森の魔石をあげるって」

「おっきい飴だまー!? あまくない……」


 少女はべっこう飴みたいな色の魔石を受け取り、ぺろぺろと舐めだした。

 邪竜ちゃんと同じことしてる……。

 お弟子さんはその大きな森の魔石を見て驚いていた。


「ところで魔女さまがやられたっていうのは……」

「魔女さまもあのショートケーキに負けたのです」


 ああ、やっぱり。そういう話だったのか。

 てっきり本格的に戦ったのかと思ってしまった。

 安堵したところで、なんとお弟子さんが言うには本当に戦いもしていたようだ。


「そのお菓子の悪魔も含めて4人も悪魔が現れて、師匠は先制攻撃と言って攻撃を仕掛けたんですよ」

「悪魔が4人!? 大丈夫だったの?」

「4人のうち3人が美少女だったため、男に怨鬼の炎をぶちかまして森が大変なことに……。まあその話は置いといて」


 ええ!? 悪魔一行の話が凄く気になるんだけど!?


「私にもあのクッキーを取ってきてくださいな」


 少女が邪竜ちゃんの綺麗な川の小石コレクションに目を輝かせて、お金の代わりにクッキーを魔法で生み出し、お店屋さんごっこで支払っていた。


「クッキー、きれいな石と交換っ」

「ぐぁいぐぉい」

「ちょっと川に下りて探してきます!」


 お弟子さんの目が本気だ。まさか邪竜ちゃんの小石がそんな価値が生まれるだなんて……。

 僕もクッキーほしいな。……うんこ石しかないや。

 代わりのものはというと、そうだ! 赤い木炭があった!

 これも火の魔石がきらきら輝いて中々に綺麗だ。


「僕もこの赤い木炭と交換してよ」

「あい」


 少女は赤い木炭を透かし見て、目を輝かせた。

 そしてクッキーが10枚も生み出された。おお、中々の価値があったようだ。

 一口囓ってみたら旅食のしょっぱい堅焼きクッキーと違って、甘くてさくさくほろほろと崩れてお口の中がしあわせになる。


 ちなみにお弟子さんが持ち帰ってきたマーブル模様の石は、小指の先ほどに小さい星のようなお菓子1個だった。

 悪魔を目の前にしたかのような絶望の表情をしていたので、僕のクッキーを分けて上げた。


「あっ、そろそろ日が暮れちゃうよ?」


 少女はねぐらに泊まっていけばいいけど、お弟子さんはどうやらねぐらに入って来られないようなので、外で一晩野宿するのは大変だろう。まだ夜は寒い季節だ。


「そうですね、帰らないと。おかしちゃんも一緒に行きますよ」

「おかしー」


 色とりどりの小さい星のお菓子を撒き散らしながら、少女はお弟子さんの後を付いて、谷底の川へ向かった。

 川で何をするんだろうと思ったら、お弟子さんと少女は泡のようなものに包まれて、それは川の上にぷかぷかと浮かんだ。

 なるほど。今からどうやって急いで帰るのかと思ったら、川を下って一気に村まで行くようだ。

 少女は内側から泡をつんつんして、お弟子さんに叱られていた。


「ばいばーい!」


 声が届いたかどうかわからない。泡はすでに滝を落下していた。


「ふぅ。星のお菓子を片付けないと」

『きらきらー』


 邪竜ちゃんが拾い集めて木の箱に乗せていた。

 お菓子というより、その見た目に興味を持ったようだ。

 そしてその隣には少女の手にしていた拳銃が置かれていた。


「ああ! あの子の忘れ物だ!」


 拳銃を忘れるだなんて、なんてドジな子なんだろう。

 邪竜ちゃんが悪さをしないうちに拳銃を取り上げると、なんだか不思議な構造をしていた。

 もちろん、僕は銃に詳しいわけではない。だけど、銃の撃鉄と呼ばれる部分に、それではなく赤い石がはめ込まえていた。これは火の魔石だ。

 僕がそこに指で振れてみると、拳銃はぱぁんと弾ける音を鳴らし洞窟内を反響した。


「わあ! びっくりしたぁ」

『びびびっ』


 邪竜ちゃんも驚かせてしまったようだ。

 普通の猟銃は火の魔石粉と鉛の弾を穴に詰め込むのだけど、これは火の魔石が爆発を起こして弾を発射するようになっているんだね。

 銃の上の部分の蓋が開くから、ここから弾を入れるみたい。


「あ、そうか!」


 少女は飴玉を手から生み出していた。

 飴玉はちょうどこの拳銃に入るくらいの大きさだ。

 少女は鉛玉の代わりに、飴玉を入れて、邪竜ちゃんに向けて発砲したんだ!

 だから邪竜ちゃんはバリボリと飴()を囓ったんだね。


「飴玉を撃ち出す悪魔か。本当におかしな悪魔だね」

『あくま?』


 悪魔って一体なんだろう。

 魔女さまは悪魔のことを悪い人間と言っていたけど、少女は悪い子には見えなかったなぁ。

 むしろ、小さい星のお菓子を僕に向かってぺしんと飛ばしてくる邪竜ちゃんの方が悪い子だ。

 僕は小さい星のお菓子を拾って食べた。


「あ、砂糖の味だ。おいしい」


 手からお菓子を生み出すおかしな悪魔。

 一緒に来た他の悪魔たちはどんな子達なんだろう。

 なんだかきっとあの子と同じように良い子な気がする。

 僕は不思議な拳銃を手に、また会えたらいいなと、日が落ちて空に薄く光る月の姉妹と、ちらちらと輝きを広め始めた色とりどりの星たちへ願った。

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