第64話 神龍精霊【ペンドラゴン】
「神龍精霊【ペンドラゴン】なのじゃ?」
「分かるんですかハルト様?」
俺の言葉に、幼女魔王さまとミスティが不安そうに問いかけてきた。
「ああ、俺も見たことはないんだけど、なんとなく直感的に分かるんだ――いやこれは俺と契約した【イフリート】が教えてくれてるんだ。伝説の聖精霊、神龍精霊【ペンドラゴン】で間違いないよ」
――いかにも。我はペンドラゴン、白き力の守護者なり――
やはりそうか。
どうも【イフリート】は大昔に【ペンドラゴン】と戦ってやられたことがあるらしく、かなり思うところがあるっぽい。
そして伝説の白龍の視線、は俺と幼女魔王さまではなくミスティをとらえていた。
「ミスティ、どうも用があるのはミスティみたいだな」
「わ、わたしですか?」
「神龍精霊【ペンドラゴン」は、清らかな心を持った乙女に聖なる加護を与える精霊なんだ。だから聖剣を持って勇者となったミスティの、聖なる力と清き心に惹かれてやってきたんじゃないかな」
俺は推測を述べた。
でも遠からず当たっているはずだ。
事実、
――聖女ミスティよ、我は汝と契約せん――
「えっと、あの……」
――聖女ミスティよ、我は汝と契約せん――
神龍精霊【ペンドラゴン】はミスティへの恭順の意を示すように、頭を下げて同じ文言を繰り返す。
「ど、どうしましょう……?」
ミスティが困ったように俺を見た。
「とりあえず精霊契約したらいいんじゃないか? 炎の魔神【イフリート】と同格以上の最強の聖精霊が、向こうからミスティと契約したいって言ってきてるんだから損はないだろうし」
「ですが精霊の声が聞こえるようになったばかりのわたしに、最強の聖精霊なんて大それた存在と契約して、上手くやっていけるでしょうか?」
「取って食われたりはしないだろ? 普段通りのミスティで大丈夫だと思うけどな。それこそ肩ひじ張らずにさ、なぁ魔王さま……って魔王さま? おーい、魔王さま? おーい!」
「あ、これは立ったまま意識を失っているパターンですね」
ミスティの言うとおり、幼女魔王さまは立ったまま白目をむいて気絶していた。
「さすがミスティは、魔王さまの気絶に関する専門家だな、見ただけで分かるか」
「あははは……」
「み、ミスティが、最強の聖精霊と契約じゃと……? 神龍精霊【ペンドラゴン】とな……? それでは妾の存在意義はいったいどこに……」
幼女魔王さまは、気絶したままぶつぶつとうわ言のようにつぶやいていた。
となりではちび太も一緒に気絶しながらふよふよ浮いていた。
「二人とも器用だなぁ……」
その後。
ミスティが神龍精霊【ペンドラゴン】と精霊契約を交わしている間、俺は幼女魔王さまが倒れて怪我をしないように、そっと地面に寝かしてあげた。
「わ、妾はようやっと、ちび太と仲良く心を通わせ、自在に使いこなせるように、なったというのに……ミスティは伝説の神龍精霊【ペンドラゴン】を……ううっ……」
うわ言のようにつぶやき続ける幼女魔王さまを、俺は膝枕しながら少しでも気分が落ち着くようにと、ゆっくり頭を撫でてあげたのだった。
そしてミスティは無事に神龍精霊【ペンドラゴン】を契約精霊にし。
「す、すごい力です……!」
ここに、聖剣と聖龍の加護を同時に受けた世界最強の勇者が爆誕したのだった。
人類最強の武器である聖剣に選ばれ、さらには炎の魔神【イフリート】と対等以上に渡り合う神龍精霊【ペンドラゴン】と精霊契約し、その強大な聖なる加護を得た勇者ミスティ。
「いい加減、俺が本気を出しても真っ向勝負じゃもうミスティには勝てないんじゃないかな? そりゃ剣の技術や細かい精霊術では勝ってるだろうけど、それでどうにかなるレベルなのかな?」
気絶したままいまだ苦労の表情を浮かべて目を覚まさない幼女魔王さまほどじゃないけれど。
ここ最近のミスティの急激なパワーアップぶりに、驚き&恐れおののく俺だった。
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