第51話 エピローグ 新生【勇者パーティ】
「というわけで私が【勇者】になってしまいました」
ミスティが申し訳なさそうにぺこんと頭を下げた。
決戦の翌々日、場所は王宮の俺の部屋だ。
あの後意識を失ってからずっと眠り続けていた俺が目を覚ましたと聞いて、幼女魔王さまとミスティがいつものように俺の部屋を訪ねてきたんだけど、
「まさか人間族にしかなれない【勇者】にエルフが選ばれるとはのぅ……」
いきなりのこの話には幼女魔王さまも思案顔だった。
「ハーフエルフは人間族の血も混じっていると考えれば、まぁ完全にないってわけではないか……」
俺もなんともコメントに困っている。
俺が意識を失っていた間。
幼女魔王さまたちは残存の軍を再編成したり帝国へ仔細を伝えるべく急使を派遣するなど、色々な後始末をしていたらしいんだけど。
あれこれやっているうちに持ち主を失った【聖剣】が急に光りはじめ、その光がミスティを指し示したのだという。
よくわからないままミスティが【聖剣】を握ったところ、次の【勇者】に指名する【神託】が降りてきたらしい。
「とりあえず帝国も不承不承じゃが同意はしておる。そもそも【聖剣】は正当な持ち主以外が手にするとその身を焼かれる【勇者】専用の武器じゃからの」
「ミスティが持てている時点でそのまま【勇者】であることの証明になるってわけだ」
「でもどうしましょう? ハルト様、そもそも【勇者】って何をするんでしょうか?」
ミスティが元【勇者パーティ】の俺に尋ねてくる。
「そうだな……俺が知る限りでは、あーしろこーしろって勝手に【神託】が降りてくるみたいだったけど。何かそういうのはなかった?」
「今のところは特にないですね」
「そっか……あー、あとは【勇者パーティ】の結成だな」
伝統的に【勇者】は信頼のおける仲間とともに【勇者パーティ】を作るのだ。
「【勇者パーティ】ですか……」
言って、ミスティが俺と幼女魔王さまの顔を見た。
その意図するところは――、
「当面のメンバーは【勇者】ミスティ、【精霊騎士】の俺、そして【精霊魔王さま】でいいと思うぞ」
「これはとても強そうなパーティですね!」
ミスティはにっこり笑顔でそう言ったんだけど、
「あの、妾だけ明らかに名前負けして超へっぽこなのじゃが……あの後、期待を胸に何度も精霊に呼びかけてみたのじゃが、【火トカゲ】以外話を聞いてくれんし……」
「そこはそれ、将来性に期待ってことで。それにあれだけ大変な思いをしたんだ、しばらく【勇者パーティ】と言いつつスローライフを堪能しても罰は当たらないだろ? 俺はここでもっといろんなことを魔王さまやミスティから学びたいんだ」
「うむうむ、そうであるか」
「わかりました。ではハルト様も元気なご様子ですので、景気づけに早速街に参りましょう」
「そう言えば今日はちょうど【麺フェス】の日じゃったの」
「メンフィス? 確か帝国の大昔の首都がそんな名前だったような……? テーベに遷都する前だったか?」
「ハルト様ハルト様。ラーメンフェスティバル、略して【麺フェス】です。各地の名物ラーメンが一堂に会する、年に一度のラーメンの祭典なんですよ」
「全部で300近いラーメンが集まるのじゃ。ハルトもきっと驚くのじゃよ」
「なんだそれ、すごい! すぐに行こう!」
こうして――。
俺、幼女魔王さま、ミスティは新生【勇者パーティ】を結成し、【ゲーゲンパレス】での再びの日常へと戻ったのだった。
「レアジョブ【精霊騎士】の俺、突然【勇者パーティ】を追放されたので【へっぽこ幼女魔王さま】とスローライフします」
―完―
この度は約10万字を越える長編を読破していただき誠にありがとうございました。
想像以上にたくさんの人に読んでいただけて、とても嬉しく思います。
【精霊騎士】ハルトのスローライフはこれにて完結となります。
続きも作れそうな感じの終わり方なので、時間が捻出があれば(&構想が作れれば)1話完結のスローライフやミスティ率いる新生【勇者パーティ】による第2部も書いてみたいですが、やはり時間が無いです(;´・ω・)
登場はしませんでしたが、前【勇者パーティ】のツンデレヒロイン【紅蓮の殲滅姫】など一応軽く設定だけしてあったりします。
今作を最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。
重ねてお礼申し上げます。
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