神ですが〜神さま冒険者始めました〜
《《今までの行いを悔いて滅びよ》》
荘厳な声が世界に響き渡ると同時に凄まじい音も響き渡る。
山が割れ溶岩が飛びすさび至る所を雷が焼き払い大雨が文明を洗い流した。
心なき者たちは神罰の下滅び、一部の心ある者たちだけが神の作りし方舟で生き残り神の偉大さに畏怖し寛大さに感謝したのであった。
…
……
…………
『俺、神失格かも知れない』
バッカスの酒場でそう愚痴をこぼすのは先ほど世界を滅ぼした神である。
友神にクダをまきつつ酒をあおる。
『えっとぉ、今回で何回目だっけぇ?65535回だっけかぁ???』
『びっと が たりない。 FFFFFFFF、4294967295回だよ!!!』
言い切ると同時にまた酒をあおる神(駄)、いつもの流れの様で周りの神たちからもはやし立てられる。
そして神だけに時間感覚が相当にゆるい様で回数も適当である。
『一体、俺の何が悪いんだ……?』
毎度の如くうなだれる神(駄)、酒癖も悪い様である。
そんな神(駄)に澄み切った美しい声が降り注いだ。
『世界を管理しきれてないのでは?客観的にも良く見れてない様だし……いっそ降りて実際に見て回ったらいいのでは無いかしら』
まさに天啓!天の声!!天の神さまの言う通り!!!
女神さまの気まぐれに翻弄されし神(駄)は、こうして自らの管理する世界へと初めて降り立つのであった。
なお女神さまたちが愉しそうに嗤っていた事には気付いていない神(駄)である。
…
……
…………
「初めての受肉だが……ここが下界か。これがリアル、かっ!!(キリッ)」
「しかし……妙にホコリっぽいし何か臭うな」
友神に色々と聞き学んできた神(駄)は明後日の方向を向いてそう感想をこぼす。
何となくズレているのは神(駄)らしいと言うか何と言うか。
「とりあえず普通の身体と一般的な旅人の格好で特別目立つわけでも無いスキルを持ち、そこそこに栄えている街に近い目立たない所に降りたのだが……」
「確か街に行って……ええと、どうするんだっけかな」
友神に色々と聞いてはいたがお頭にはキチンと収まっていなかった神(駄)、一番大事なコッソリと降りて受肉する必要があると言うことを忘れていた。
そのため
「怪しい光の柱が立ち上ったのはこの辺りかっ!」
「凶兆のあらわれかも知れん!!付近をくまなく探すのだ!!!」
「何か怪しい物・事があれば即大声を出して共有せよ!!!!!」
「「隊長!!!!!あちらを見て下さい!!!!!!!」」
「あいつはっ!!!?」
「確保だっ!!!!!抵抗する様子があれば殺しても構わんっ!!!!!!!」
「なにやら騒がしいな……?」
けたたましい騎馬の足音と警備兵たちの怒号が聞こえてきても、他人事の神(駄)であった。
…
……
…………
「どうしてこうなった……?」
牢屋にて這いつくばり動くのも辛そうにそう呟く神(駄)、顔には青痣をいくつも作り身体中至る所を打撲しておりひょっとしたらいくつかは折れているかも知れない。
「友神の言う通りにしたのに……俺は騙されたのか……?」
友神が伝えた一番大事なことをお頭の中に装備せずに出かけておいてこの言い草である。
情報も 装備しないと 意味が無いぞ。
また無駄に抵抗したために被害が増えたことも一因である。
素人に毛が生えた程度の神(駄)が職業軍人に対抗出来ると思ったのだろうか……?
命があっただけ儲けもんである。
なお、この時の様子を神さまたちは酒場の肴として愉しんでおり皆一様に愉悦の笑みを浮かべている。
一部では賭けの対象にもなっており神(駄)のことを良く識る友神が、いきなり捕まると言う大穴に近い穴を当てて一儲けしたことも追記しておこう。
…
……
…………
バシャッ!
「おい!!起きろ!!!!!」
余りの疲れと怪我で意識を失っていた神(駄)を起こす水の冷たさ。
それはかつて何度も滅ぼされた人たちの復讐だろうか。
何が何だかわからないまま牢屋より連れて行かれる神(駄)、また無駄に暴れようとするので兵士より一発殴られると抵抗しなくなる。
「(なん……で……だ……。……おれ……は…………かみ……なのに)」
口の中で呟く神(駄)に対して黙らせるために追加の一撃を加える兵士。
今度こそ何も言わなくなった神(駄)が連れて行かれたのは、求められる真実以外を許さない場所。
詰問室であった。
両手を鎖に繋がれぶら下がる様に立たされる神(駄)、専門の詰問官より問われる。
「なぜあそこに居た!」
鞭で打たれ
「あの光はなんだ!!」
棒で殴られ
「貴様は何者だ!!!」
痛みで意識を失う度に水をかけられて起こされる。
幾度となく繰り返される詰問に対し、今にも今世を終えようとした神(駄)に救いの神は舞い降りた。
(……何?解放しろ、だと??身分証も何も持っていない神を語る不信者だぞ!!?……教会からの御告げだと…………)
朦朧とした意識の中、神(駄)が聞いたのは驚愕の様子を隠そうともしない詰問官の言葉だった。
…
……
…………
「…………知らないt」
「お目覚めでしょうか」
「誰だっ!!?」
「旦那様よりお客様の身の回りの御世話を仰せつかっておりますハウスキーパーでございます」
「ハウス……キーパー……? メイドとは違うのか? それにしては気配が全然n」
「メイドで出来ることは全て出来ますのでメイドとして考えていただいても構いませんお客様。当方で治癒をさせていただき、手周り品を揃えさせていただきました」
「何か不都合はございますでしょうか」
「いや……さっきまで天へと還る寸前だったのでそれに比べたら雲泥の差だg」
「それは良うございました。 何かありましたらこちらのベルで御呼び下さい」
「待ってくれ!何がなんだかさっぱりわからないn」
「それは私からは申せません。 後ほど旦那様とお話しいただく機会が御座いますのでその際にお聞き下さい」
神(駄)が何か言うと必ず被せてくるハウスキーパーなメイドさんは失礼します、と退室して行った。
素人ながらも神(駄)から見て全く隙のないハウスキーパーなメイド様には絶対逆らわないでおこう、と心に決めつつも結局現状はまるで掴めないので仕方なく身体や持ち物を調べ始める。
どうやら身体の方は完全に癒えている様で動かすのに全く問題はない。
ただ荷物の方が少々問題で、元々新品同様の鞄やら靴やら服だったのだが手元にあるのは身に付けていた物以上に新品さを感じる。
何だったら輝きすら感じられそうな逸品へと変化しており鑑定してみても等級が2〜3上がっているため本来ならば何らかの裏を感じ取るのだろうがそこは神(駄)、全く気にせず綺麗になった鞄へと収め直した。
…
……
…………
暫くしてハウスキーパーなメイドさんの案内の下、旦那様とやらの所に連れて行かれる神(駄)。
席に着くや否や旦那様よりこう言われる。
「貴殿には冒険者となって世界を見て貰う。これは神託である」
自柱が管理する世界の神さまに神託とはこれ如何に……?!
こうして神(駄)の物語は幕を開けたのだった。(続きたい)





