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コピー  作者: 社会的におちこぼれの理系人間が、なろうで何か文章を書いてみた
目が覚めたらここは異世界?かと思ったら、なぜか男女二人に分裂していたので、とりあえず姉弟設定で乗り切ろうと思います。
7/19

かわいい一人

翌日から僕達は、この年にもなって、

久しぶりの、かなり久しぶりの学生になった。


このクラスは男子5名、女子20名。

生徒会長も、ニーナもミリアも居るクラスである。

そこに僕達が加わることになった。

ちなみにあの姫様とは廊下ですれ違ったのだが、

目も合わせてくれなかった。


学校に着いたら、午前中は座学。

文学、算学、魔法理論、宗教学、軍事学の

各教科を学んでいる模様なのだが、

致命的なことに、文字が読めない。

幸い、話し言葉はほぼ完全に理解できるので、

先生たちの話を聞きながら、

表意文字・表語文字らしいこの世界の文字を

少しずつ学習する時間となっている。


お昼休みはほぼみんな学食で、

ポイント払って昼食を摂る時間である。

かつての男子校時代は大して意味も無い、

栄養補給するだけの時間であったが、

僕自身が分裂しただけなのに話し相手が増え、

おまけにニーナやミリアをはじめとした

クラスのみんなが話しかけてくれるおかげで、

存外楽しい時間になっている。

ちなみに生徒会長はこの時間、見当たらないのだが、

ニーナ曰く、生徒会の仕事が毎日あるらしい。


午後は実習の時間である。

みんなは服を着替えて様々な戦闘訓練、すなわち

剣術などの武器訓練、魔法の訓練、格闘技などの

実践訓練をおこなっているらしい。

一方僕達は最低限の魔法技術を身につけるべく、

相変わらず、あれだけ忙しい生徒会長の指導を受けている。

分かりやすい指導ですごくありがたいのだが、

体力が持つのか、少し心配ではある。

おまけに今度の休日、普段着や体操着のショッピングに

付き合ってくれるという。

このバイタリティはどこから来るのだろう?




この世界に来て、初めての休日である。

待ち合わせ時間の5分前に正門に着いたのだが、

生徒会長はすでに僕達を待っていた。


「おはようございます。お待たせしました。」


「いえ、おはようございます。

 商店街はこっちです。早速行きましょう。」


挨拶もそこそこに、歩き出す生徒会長。

慌てて付いていく僕達。


「お二人の基礎魔法訓練はもうそろそろ終了しても

 良さそうですからね。

 戦闘訓練に必要な服は特に早めに

 見繕っておいたほうが良いでしょうね。


 おまけに身だしなみは女性のたしなみですからね、

 いくら時間をかけて選んでも

 かけすぎということはありません。

 出来るだけ良いものを買いましょう。」


なんか私の服装には興味があるけど、

ケイくんの服装には興味が無さそうな言い分。

もっとも僕達は、服装への興味はほとんど無いけどね。


そうこうするうちに、活気のある声が聞こえてくる。

商店街に到着した模様だ。


「このお店は色々揃っているんですよ。」


店舗に入っていく生徒会長。

確かに色とりどりの、様々な女の子向けの服が並んでいる。


「あそこに試着室があるので、

 気に入ったのがあったら

 試着してみたらいかがでしょう?」


迷う。徹底的に迷う。

そもそも何を基準に選んだら良いか、それが分からない。


「生徒会長、何かお勧めとか、ありませんか?」


「そうね・・・、ではこれをちょっと着てみて?」


はかま姿っぽい服の上下を提案する生徒会長。

どうやって着るか、解説図の描かれた紙まで付属している。


「そうですね。さっそく着てみます。」


そう言って試着室の前に行く。

大きな鏡、姿見が目に入る。

姿見の向こうには、非常に綺麗で可愛い黒髪の女の子が

こっちを向いて立っていた。

そういえば、今までずっとあわただしくしていたから、

今の私の姿を曇りの無い、良く映る鏡で

しっかりと見たことは無かったな・・・。


「試着室の使い方、分かりませんか?マイさん。」


「あ、いえ、大丈夫です。着替えてみます。」


慌てて試着室に入ってカーテンを閉めると、

とりあえず今着ている制服を脱いで、

下着姿の可愛い女の子をちらっと見て、

解説を読みながら何とか着替えてみる。


「どうでしょうか?」


「ええ、似合っていると思いますよ。」


「姉さん、次はこれ着てみてくれる?」


「いいよ。貸して。」


「えっ、それは、」


ケイくんから服を受け取ってカーテンを閉める。

この服、よく見てみると・・・、ビキニアーマー?

触手が良く似合いそう。別にそういう趣味は無いけど。

着替えてカーテンを開けて一言、


「ケイくん、これなんか、いいねセクシーで。」


「でしょ、姉さんよく似合ってる。」


「駄目です!破廉恥です。却下!」


どうやら生徒会長のお眼鏡にはかなわなかったようだ。


それから色々な服を試着して、

主に男性目線で「かわいい」と思える服をいっぱい、

要は単純に露出の多い服をいっぱい試着して、

生徒会長からの猛烈な反対をいっぱい受けて、


「うん、姉さん、これも似合ってるよ。」


「うーん、まあ、はぁ、許容範囲ということに

 しておきましょう・・・。」


スリットの入った非常に短いスカートに、

袖の無いシャツっぽい、上に何か着るやつ。

これがこの世界で初めて買う服に決まった。


「この服、すごく、いいですよね、動きやすいし。

 おまけにスカートの中は、魔法で、

 どんなに動いても、見えないし。」


体を自由に動かしながら言う私。


「魔法の無駄使いです。」


ぴしゃっと突っ込む生徒会長。


「あれ、マイじゃない?」


突然声をかけられる。

そこに居たのはニーナとミリアであった。


「やっぱりマイだ。こんにちは。

 その服、よく似合ってるね。」


「ありがとう、ニーナ。」


「そうそう、マイのいつもの制服のスカートも

 もうちょっと短くはいた方が良いんじゃないかって

 思ってたのよ。

 こんど教えてあげるね。

 まあ会長にばれたらお小言

 言われちゃうかもしれないけど。」


「私がどうかしましたか?」


「うわ、出た。」


思わず飛びのくニーナ。


「マイさんにあまり変なこと教えないでくださいね、

 モランさん。

 特にこの子、露出高い服に興味津々なので。」


うん、まさにその通りでございます、

としか言いようが無い・・・。


「あの、ニーナ、ミリア、もし都合がよろしければ、

 服を選ぶのを手伝ってくれたら

 ありがたいんだけど・・・。」


私はちょっと勇気を出して、声をかける。


「そうね。私の服のセンスはちょっとずれているって

 妹にも時々言われるから、

 モランさんシュナイダーさんのアドバイスが

 あったほうがいいかもね。」


生徒会長が続く。


「いいわよ、あたしたち、どうせ暇だったからね。」


そして合計5人になった私たちは買い物を続け、

結局私は5着、ケイくんは3着、服を買うことになった。




商店街を一通り回り終えたとき、

雑貨屋さんの大きな鏡が目に留まった。


「そういえば皆さんの部屋には

 鏡って置いてあるんですか?」


私は尋ねた。


「そうですね。

 身だしなみは女性のたしなみですからね。

 姿見は常に使っています。」


「会長ってそのフレーズ好きだよね。

 あたしとミリアの部屋にも姿見は

 設置されているけど・・・、

 そうか、マイたちの部屋は旧男子寮か。

 姿見無いのはきっついよねー。」


雑貨屋のほうに視線を向けながら答える

生徒会長とニーナ。


「気に入ったのがあったら買っちゃお。

 ちょっと高いけど。

 もしポイント足りなかったら、

 あたしも少しサポートするよ。」


「うん、わたしも。」


「少しなら私も出していいですよ。」


そう言って、私たちは最後に雑貨屋で

買い物をすることになった。




自室に帰ってきた僕達、私とケイくん。


「買っちゃった・・・。」


姿見をベッドに向けて設置して、

その姿見を前にして、ベッドに腰掛ける私。

姿見の向こうからは可憐な少女が、

ちょこっと座った可愛らしい少女が、

僕のことをじっと見つめている。


かわいい。


片膝を抱えてみる。

姿見の向こうの黒髪の少女も片膝を抱え、

こっちをじっと見つめている。


かわいい。


かわいい。


その視線が恥ずかしくなって、

両膝を抱えて顔をうずめる。

姿見のほうを恐る恐る見てみる。

姿見の向こうの美少女は上目遣いで、

恥ずかしそうに視線を向けている。


かわいい。


かわいい。


かわいい。


「・・・さん・・・」


かわいい。


かわいい。


「・・・えさん・・・」


かわいい。


「姉さん。」


ケイくんが突然、声をかけてきた。


「姉さん、ずっと姿見ばっか見て、

 ずっとぼーっとしてるけど、大丈夫?」


「え、なに?ケイくん?

 あ、うん、だいじょうぶ、大丈夫。

 ただまあ、この子ってすごく可愛いな、って。

 ケイくんは私のこと、可愛いって思わない?」


「そりゃ姉さんは可愛いけど、

 でも中身は俺とおんなじ、僕でしょ?

 いくら外見が可愛くっても、中身が僕じゃ、ねぇ。」


まあ確かにそういう考え方もあるかもしれない。

でも今まで直視していなかった影響か、

改めて見ると、すごく可愛いな、って。


改めて姿見に目線を向ける。


かわいい。


この美少女、姿見の向こうからは、

画面の向こうからは出てきてくれないのかな?


でもかわいい。


かわいい。


「・・・えさん、俺もう寝るけど、・・・」


かわいい。


「・・・いじょうぶ?姉さんも早くね・・・」


かわいい。


何か話しかけられた気もする。

え、なんだって?って聞き返したほうが良かったかな?

でも目の前の美少女のほうが、


かわいい。


かわいい。


今更ながら、はじめて気付いた新発見に、

大発見に、心が躍る、疼く、壊れる。

まあでも今は、心なんていう瑣末なこと、どうでもいいや。


かわいい。


かわいい。


かわいい。


もう一度、真正面から姿見の中の美少女を見据えてみる。

可憐な少女が曇りなきまなこでこっちをじっと、

じっとじっくりとこちら側を見つめている。


かわいい。


かわいい。


かわいい。




かわいい。

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