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コピー  作者: 社会的におちこぼれの理系人間が、なろうで何か文章を書いてみた
目が覚めたらここは異世界?かと思ったら、なぜか男女二人に分裂していたので、とりあえず姉弟設定で乗り切ろうと思います。
6/19

基本を学ぶ二人

「鍵を開けるので、ちょっと待っててください。」


生徒会長はそう言うと、修練場の扉に右手をかざす。

扉が一瞬光る。


「さあ、入ってください。」


扉を開いて、僕達を中に誘導する。

高いところに明かり取りの窓みたいなのはあるが、

薄暗くて周囲がよく見えない。


と、生徒会長が光りだす。

よく見ると、生徒会長の周りに明るい球体が二個浮いていた。

生徒会長が一個ずつ上方に放り投げると部屋全体が照らされて、

木の床、木の壁、木の天井があらわになった。

そしてそれ以外には何も無い、がらんとした空間であった。



「まずは一番の基礎となる魔法のひとつ、

 木の力を使って風を起こす術を会得してもらいます。」


生徒会長はかばんの中からオーブを取り出し、

僕達に一個ずつ渡してくる。


「まずはこのオーブを支えるようにこうやって持って、

 そう、で、真上に風が吹くイメージを注ぎ込むと・・・、」


ブワッ


生徒会長が持つオーブから風が吹き出す。


「まずはケイさん、ちょっとやってみて?」


「はい。」


ケイくんは言われて、うーんと難しい表情をする。けど、


「んんん?」


「まあ最初はさっぱり分からないわよね。次マイさんね。」


「はい。」


まあケイくんが上手くいかないんだから、

何かコツでもあるのかな。

とりあえずリラックスしてやってみよう。

えーと、風が真上に吹くイメージ、だっけ・・・?

んー


ボッ バアーーーーァン


暴風が部屋中を駆け抜ける。

上空の光の球が吹き飛ばされる。

行き場を失った風は足元まで回りこみ、

私と生徒会長のスカートを吹き上げる。

真っ白な下着があらわになる。


「っっっーーーーーー!!!」


慌ててスカートを押さえ込む生徒会長の顔は真っ赤だ。

しまった、女の子はこういう反応をする必要があったか。

まあ今更反応しても遅いから、いいや。


そういえば生徒会長の眼鏡は全然飛ばされてない。不思議だ。


しばらくして風が収まる。


「あー、これがマイさんの才能でしたか・・・。

 マイさん、一旦オーブ返して。」


落ち着きを取り戻そうと取り繕うが、

取り戻しきれていない生徒会長。

私の手からオーブを引き離す。


「すごい、姉さん。どうやったの?」


「えっ?いやー、私もよく分からないんだけど。

 とりあえずリラックスして、

 風が真上に吹くのをイメージして、かな?」


「あっ、ちょっと待って。今、一旦しまうから。

 ・・・と。はい、ケイさん、じゃあもう一度。」


ケイくんは一度目を閉じて、心を落ち着けるかのように深呼吸。

そして目を開けて・・・、


ボバアーーァン


ケイくんのオーブからも暴風が吹き出す。

私のスカートはもう一度めくれ上がる。

だが今度は、生徒会長のスカートは吹き上がらない。


「お二人とも、魔法の才能が非常に高いのは分かりました。

 このオーブは魔法の威力を補助するものでしてね、

 魔法に不慣れな子供や魔力が低い人なんかは

 大きなオーブで魔力とイメージを補助する必要があるんですけど

 お二人にはちょっと大きすぎましたね。」


生徒会長はケイくんのオーブもかばんの中にしまい、

改めて僕達に渡してきたのは・・・、米粒?


「私くらい慣れると術の発動にオーブは必要ありませんけど、

 お二人はイメージの補助がまだ必要ですよね。


 本来ならば杖などの中に仕込んで使うんですけれどね、

 今はちょっと用意していなかったので、

 くさないように気をつけてくださいね。


 ということで次は生活に必要な、

 金の力を使った光をともす術を教えます。」


「えっと、こんな小さなオーブで大丈夫なんですか?」


「光は強すぎると目を焼きますからね、

 大きすぎるオーブはむしろ危険なのです。

 まあでも本当に強すぎる光が出来てしまったら、

 私が闇を使って打ち消すので、

 気にせず練習しましょうね。」


「なるほど、さっきもスカートがめくれないように

 何か打ち消す魔法っぽいのをつかっていましたもんね。」


「あ、あれは乙女のたしなみのような、

 木と金の、風と闇を利用した混合魔法です。

 マイさんには後ほどこれも、

 教えなければいけませんね。」



それから数時間ほど、魔法の訓練は続いた。

風を操る「木」の魔法、光を操る「金」の魔法、

物質の生成と変化をつかさどる「土」の魔法。


僕達にはどうやら、本当に魔法の才能がある模様で、

生徒会長が言うには、木の魔法の基礎は完了したらしい。




「あら、もうこんな時間ですか。

 外も暗くなってきたみたいですし、

 本日はこれくらいにしましょう。」


「ああー、疲れたぁー。

 おなかすいたぁー。

 このあと何か食べれるのかなぁー。」


「そうだね。

 こっちに来てから夕飯は一度も食べてないからね。」


「えっ?こんな時間から何か食べたいのですか?」


驚きの声を上げる生徒会長。


「「えっ?」」


逆に驚く僕達二人。


「えーと、あのー、

 生徒会長さんは、一日に何回お食事を摂られますか?」


「私は、というか普通は、朝食と昼食、

 一日二食が普通だと思いますけど。

 そもそも食堂だって、とっくに閉まっていますよ?」


「じゃあコンビニ・・・じゃなくって、

 野菜とか、お米とか、売ってるお店ってありませんか?」


「野菜とかお米とかって、料理人でもなければ

 わざわざ買いませんよね?

 料理の心得でもおありですか?」


「いや、そういうわけでは、」


要するに、この世界の標準は一日二食、朝と昼、

家庭料理とか自炊とかいう文化は無く、外食しかない、

そういうことだろうか?


「そうすると今日は、施設でいただいた朝定食と、

 馬車の中で食べたお弁当だけ、ということか・・・。」


がっくりするケイくん。私も気が抜けてしまう。


「あの、お二人さん、今から寮に、

 今後お二人が利用することになる寮に案内したいのですが、

 よろしいでしょうか・・・?」


ちょっと戸惑いながら問いかける生徒会長。


「あっ、ええ、そうですね。

 それは大事ですね。

 それでは、よろしくお願いします。」




校舎をさらに奥に進み、徒歩10分といったところだろうか。

夕闇の中に大きな建物が姿を現す。

その多くの窓から光が漏れていた。


「こちらの西棟3階5号室が、

 今後お二人に使っていただく部屋になります。」


そう言って建物の入り口に向かう生徒会長。


「あっ、会長さん、こんばんは。

 こちらがケイさんとマイさんですね。

 お待ちしていました。」


銀髪で浅黒い肌、おとなしい感じの、

私達と同じ制服を着た少女が、

カウンターの向こうから声をかけてきた。


「こんばんは。今日はフォンターナさんが担当でしたか。

 このお二人の登録、お願いできますか?」


「はい、準備は終わっていますので、

 あとはタブレットにお二人の手を乗せていただければ。」


そう言って銀髪の少女が差し出したのは、

淡い水色をした一枚の板。


「えっと、これに手を乗せれば良いんですか?」


「はい。お一人ずつお願いします。」


差し出された板に、まずはケイくんが手を乗せる。

板が一瞬光る。


「はい、いいですよ。次マイさんお願いします。」


私も同じように手を乗せる。板が一瞬光る。


「この寮って、男女共用なんですか?」


「元々は、西棟は男子寮、

 東棟は女子寮のつもりだったんですけどね。

 女子が多くなりすぎたので、今では

 女子寮の西の隅のほうに男子が間借りしている、

 そんな状況になってしまっていますね。」


「ちなみにお二人に使ってもらう部屋は

 男子の領域と女子の領域の

 ちょうど中間に用意しました。

 今も兄妹で居住している人も居るので、

 問題ありませんよね。」


まあ確かに、この世界に一人で放り出されるよりは

二人一緒にしてくれたほうがありがたいけど。


「では行きましょうか。」


そして僕達は生徒会長に先導されて、3階の部屋に向かう。



「早速ですけど、

 ここに手を当ててみてください。」


そう言って生徒会長が指し示した扉には、

淡い水色の板が埋め込まれていた。

そこに手を当てるように促される。


「では俺が。」


ケイくんが板に手をかざすと、一瞬光った。


「はい、これで鍵が開きました。

 開けてみてください。」


扉を開けるとそこは、星の明かりが外から差し込む

薄暗い部屋であった。


「ではマイさん、さっきの復習です。

 このオーブを使って光を灯してください。」


そう言って米粒を渡してくる生徒会長。

私は米粒に向けてイメージを集中して・・・、


パァーッ


光を灯すことに無事成功する。


「オーブはしばらく貸しておきますね。

 あと、この扉の使い方を説明しておきます。


 外から鍵を開けるときはさっきケイさんに

 試してもらったように、

 部屋ごとに登録した人が

 タブレットに手をかざせば開きます。


 内側から鍵を閉めるときも同様に、

 その部屋の住人がタブレットに手をかざすと

 閉じることが出来ます。

 こんどはマイさん、やってみてくれますか?」


扉を閉めて、内側の板に手をかざすように

私に促す生徒会長。


私が手をかざすと、板が一瞬光る。


「こうすれば扉を開けようとしても、

 どうですか?開きませんよね。」


「はい、確かに。」


「ただしこの扉、内側から鍵を開けるのと

 外側から鍵を閉じるのはこのように、」


生徒会長が板に手をかざす。板がまた光る。


「住人でなくても、誰でも出来るようになっています。

 扉の使い方はこんな感じですかね。


 あとは・・・洗濯は1階ね。

 あとは説明なしでも大丈夫ですかね?」


「はい、たぶん何とかしてみます。

 生徒会長さんもこの寮なんですか?」


「いえ。私は妹と二人暮らしをしておりますので。

 明日の朝にはまた迎えに来ますが、

 それまでに何かあったら1階の受付で、

 当番の人に声をかけてください。」


「今日は一日、ありがとうございました。」


「どういたしまして。また明日。」


扉を開けて出て行く生徒会長。板がまた光る。



改めて部屋を見回す。

部屋の中にはベッドが二つ。机も二つ。扉が一つ。


中の扉を開けてみる。暗くてよく見えない。

魔法の光を灯してみる。洗面台と便器とシャワー。


「まさに学生寮の標準的な二人部屋、かな?」


「でも異世界にしては、思ったよりも清潔だね。」




「さて、今日はあと寝るだけなんだけど・・・、」


「おねしょ?」


「うん。さっきからおしっこ出そうなんだけど、

 二日連続出なくって、

 その挙句に二日連続おねしょだからね・・・。

 一応おむつは貰ったから、

 最悪何とかはなるんだけれど・・・。」


「でもおねしょは出るってことは、

 体の構造的におしっこが出ないわけじゃなくって、

 体の使い方の問題というか、女の体に慣れれば

 自然と出るようになるんじゃないかな?」


「うーん、便器の上で今日もちょっと

 粘ってみるか・・・。」


「便器の上か・・・。

 便器の上って、僕達はすぐいきばるじゃん?

 ひょっとしてそれがまずかったりして。


 えーと、眠っている、リラックスしているときは

 おしっこが出てくるじゃん?

 便器の上じゃなくって、シャワーの下あたりで、

 リラックスして座り込むというか、

 ぐだっとしてへたり込んでたら、

 そのうちおしっこが出てくるんじゃないかな?」


「ぐだっとへたり込むか・・・。

 よし、やってみよう。他に良い手が思い浮かばない。」


私はまず全裸になった。

髪も束ねたほうが良いのかな?見よう見まねだけど。

そしてシャワールームに入ってへたり込む。


リラックスするために、今日聞いた魔法の話を思い出してみる。


この世界には火、木、金、土、水の五系統の魔法が存在する。


火の魔法は暖めたり冷やしたりするらしい。

つまり熱エネルギーを操作する、ということなのだろうか。


木の魔法は風を操ったり、

体内の気を操作して体調を整えたりするらしい。

要するに流体を司っているのだろうか。


金の魔法は光や電撃を操るものらしい。

実際に操作しているのは電磁波か、電磁気力か。


土の魔法は物質を生成できるらしい。

応用して体の傷を癒す高レベルな魔法使いも居るらしい。

実際砂粒を作ってみたが、

質量保存の法則とかどうなってしまっているのだろう。


最後に水の魔法だけど、

これはこの世界の人にとっても正体不明らしい。

この魔法を受けた人は体がだるく、

重くなるらしいが・・・。

そもそも誰がなぜこの魔法を水に分類したのか、

全くもって不明だと生徒会長も言ってたなぁ。


そんなことを考えてたら、おしりの辺りがじわっと、

生暖かくなってきた。

ああ、ようやっと、この世界に来て初めて、

曲がりなりにもおしっこを出すことが出来た。

これで膀胱炎みたいな不測の事態に陥る危険性が減った、

そう考えても良いのだろうか・・・。


「姉さん、おめでとう。

 これで安心して今後生活できそうだね。


 あっ、でも今日は念のため、

 おむつを穿いて寝たほうが良いんじゃない?」


「えー、いや、もう大丈夫だと思うんだけど・・・。

 分かった、念のためだね。」


果たして、ケイくんの予測は見事に当たってしまい、

私はケイくんに心の中で感謝するのであった。

ちょっと悔しいから、

口には出さずに感謝するのであった。

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