表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コピー  作者: 社会的におちこぼれの理系人間が、なろうで何か文章を書いてみた
目が覚めたらここは異世界?かと思ったら、なぜか男女二人に分裂していたので、とりあえず姉弟設定で乗り切ろうと思います。
3/19

調べられる二人

いい匂いが漂ってきた。


「今朝はこれを食べるように。」


などと牢屋の中に運び込まれてきたのは、なんと生姜焼き定食?

ご飯に味噌汁にサラダにお肉、そして麦茶。

さらに驚いたのは、スプーンやフォークと一緒に箸まで用意されていたのだ。

何というか、ファンタジーっぽくない。中世ヨーロッパじゃないのか・・・。


多少の違和感はあったものの、

この世界に来てはじめての食事にありついた僕達は

出された食事をあっさりと平らげてしまった。



そのあとは一旦牢から出されて、身体調査を行うと言われた。

まず始めに、よく分からない装置の上に、まずは私が立たされる。


銀髪白衣の女性が背筋を伸ばして立つように言うと、

丸いガラス球を撫でたり触ったりタップしたり。

そして読み上げていく。


「身長156.8センチメートル、体重53.2キログラム、

 体脂肪率10.2パーセント、」


メートル?グラム?パーセント?聞き覚えがある単位だな・・・


「血小板マイクロリットルあたり26.4万、

 木霊受容体マイクロリットルあたり1948.2万、

 ・・・せんきゅうひゃく!?」


思わず声を上げる銀髪白衣。


「ええっと、あとは、火炎精霊が三千オーバーで、

 大地親和素子も十越えてますよ。

 雷撃金は二百万弱でぎりぎり常識の範囲内ですけど、

 水遮蔽核なんかマイナスになってます。

 これ正しいんですかぁ?」


などと周囲のスタッフを呼んであーでもない、こーでもないと

ガラス球の周囲に集まって何かディスカッションしだす白衣の皆様。

立ったままで放置される私と、座って待ったままで放置されるケイくん。



しばらくの後に赤毛メガネ白衣の男性がこっちに来て、


「こっちで一度確認してみるから、一旦座って待っててください。」


私はケイくんの隣に座って、成り行きを見守ることにした。


「時間かかりそうだね、姉さん。」


「そうだね・・・。」



しばらくして今度はケイくんが測定装置の上に立ったのだが、

私の時と同じようなやりとりが繰り返されるのであった。




「なるほど、君達が例の二人組だね。」


ヒゲの金髪イケメン黒人おじさんが言う。


身体検査の後、彼の前に連れてこられたのだ。

どうやらそれなりに偉い人らしい。


「ああ、自己紹介が遅れたね。私は保安部次官のジョン・マクマリーだ。

 君達に確認したい事がいくつかあってね。

 まず君達は記憶を無くしてこの町の東門にたどり着いた。そうだね?」


「「はい・・・」」


「でも名前は覚えていた。姉弟であることも覚えていた。そうだね?」


「あっ、いえ、名前は何というか・・・、」


「二人で話してて、名前が無いとお互い話しづらいから、

 とりあえず決めとこう、って。

 あと容姿も似ているからきっときょうだいだろう、

 見た目しっかりしていそうだからきっと姉だろう、って。」


確かに雑な設定だったか。粗探しは当然か。

慌てて言い繕ったけど、大丈夫だろうか。冷や汗。


「ふむ。ではマイとケイっていうのは仮の名前なんだね?」


「「は、はい。」」


「まあいいだろう。では次。

 君達は魔法の使い方についてはどの程度、覚えているかね?」


「まほう・・・ですか?

 この世界には魔法なんてあるんですか?」


「なるほど、つまり君達はこの世界のことは良く知らないと?」


「ええ、まあ・・・」


「言い換えると、君達はこの世界の人間ではないと、そういうことかね?」


「あ、う、お、」


「まあ良い。では君達は魔法の使い方を知らない、ということだね。」


「・・・はい・・・」


あーなんか適当に誤魔化してきた部分がばれまくってる・・・。

私とケイくんは顔を見合わせて困惑顔。


もう一度、偉いおじさんの方を見ると、

そっちはそっちで眉間にしわを寄せながら、なにやら考え込んでいる。


と、そこにいた黒髪色白細身の男性職員さんを呼び寄せると、

何やらメモを書いて渡しながら、


「シマネクくん、ちょっといいかね?

 ちょっとここら辺の寮に空きが無いか至急確認を、おう、よろしく。」


と使いに出す。



「さて、君達は魔法に関する数値が凄い事になっているのね。」


そう言いながら、手元の資料に目をやる。


「例えば火炎精霊の体内含有率はグラムあたり

 20から50が正常って言われるのだが、

 マイ殿は3109.4、ケイ殿は5286.7で、

 正常の範囲はとっくに超えているんだ。」


そして僕達の方に向き直り、


「数字が大きい事は決して良い事ではなくって、

 普通の人はこれだけ大きな魔力が体内に宿っていると

 魔法が暴走して肉体を保っていられなくなる、って言われているんだ。

 一方君達は検査したところ、魔力以外はおおむね正常値、健康体だからね。

 住む所も無いみたいだし、一旦全寮制の魔法学校に通ってもらって、

 そこで検査を兼ねた勉学に励んでもらいたいんだ。いいかね?

 とは言っても君達に選択権は無いのだがね。

 まあ怪しい人物としてこのまま処分されるよりはいいだろう?

 念のため、君達にはもう一泊してもらって

 更に詳しい検査を受けてもらうから。

 何か質問はあるかね?」


丁寧な口調で、ちょっと怖い事をさらっと言ってのける偉いおじさん。


「あの・・・、処分、っていうのは・・・」


「魔力が暴走して大爆発を起こしたら困るのでね、

 君達には地下深くの部屋に行ってもらって、

 そこで遠隔操作のギロチンを受けてもらう。」


「え、ギロチンって、あの」


「そう、首を落とすやつ。」


ああ、やっぱりそうか・・・。


「それで何事も無かったらあとは焼却処分すればいいが、

 魔力の大暴発でも発生したら、部屋の片づけが大変だろうな。

 君達はそちらの方が好みかね?」


せっかく憧れの異世界転生に巻き込まれたみたいなのに、

穀潰しが異世界転生して二人に分裂したと思ったら処分されちゃった件、

なんてあまりにも残念すぎる。


僕達二人して、必死になって首を横に振る。


「「処分はご勘弁下さい。ご提案を受けさせていただきます。」」


さすが同一人物、必死の命乞いがきれいにハモった。

こんな長台詞、普通は絶対ハモらない。


「よろしい。では手続きはこちらで済ませておくから、

 君達は昼食を済ませてから、午後の検査に向かってくれ。」


そう言うと、偉いおじさんは黒髪ロングの女性職員を呼び寄せて、


「フェイくん、あとはよろしく。しっかり案内してやってくれ。

 あと君が指摘していた、

 あの娘がショーツを後前うしろまえに穿いたみたいだ、という話だけど、

 多分この世界の服に慣れていないのだろう。

 魔法すら知らなかったみたいだからね。

 それも含めて、諸々対応よろしく頼むぞ。」


へ・・・?うしろ・まえ・・・?

ショーツってパンツの事だっけ・・・?

あのパンツ、まえとか、うしろとか、分からない・・・




私だけ一旦、別の部屋に連行されて、

職員さんからパンツ・・・じゃなくってショーツの穿き方と

ブラジャーの付け方の指導を受ける。


あぁ、確かにこれならフィットして、しっくりする・・・。



そのあと昼食として出てきたのは、焼魚定食であった。

本当によくある焼魚定食で、

こういうところはやっぱりファンタジーっぽくないんだよなぁ。


昼食が終わると、検査の続き。

今度は謎の寝台に一人ずつ寝かされると、謎の光が体中に照射される。

発光元のさっぱり分からない光、なんていうのはファンタジーっぽいかも?


それが終わると・・・、体力検査だって?

苦手なんだよなぁ、元々の僕としては。


そう思っていたのだが、この体、かなり動きやすい。

筋肉がしっかり付いていて、余計な脂肪が無さそう。

ケイくんの体も似たようなもので、

つい先日までは出来なかったような敏捷な動きを、

力強さを発揮する姿がそこにあった。


そんな肉体に影響されたか、考え無しに限界に挑戦したのは失敗だった。

気が付いたら体中が痛い・・・。



いつの間にか日が暮れて、案内されたのはガラス張りの部屋だった。

いや、よく見たらガラスじゃない・・・?


「この部屋は一応、魔力の暴走対策になっているのよ。

 多少窮屈かもしれないけれど、今夜はこちらで寝てくださいね。」


部屋の構造としては昨日の牢屋と似たようなものだけど、

壁が違うからか、こっちの方がファンシーに思える。

閉じ込められている事には変わりが無いのだが・・・。


「おなかすいたけど、夕食は無いのかな・・・?」


「ああ、お風呂に入りたい。シャワーでもいい。

 でも贅沢は言えないよねぇ・・・。」


「・・・寝るか。布団引くよ。」


「了解。」




翌朝、おねしょのおかわりをしてしまったのだが、

その件はもう忘れた。記憶の片隅からも消去した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ