表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コピー  作者: 社会的におちこぼれの理系人間が、なろうで何か文章を書いてみた
異世界転生したと思ってたんだが実は異世界ではなく、転生ですらなかった件について・・・
18/19

そしてこの世界について

白衣の女性が語る突拍子も無い話に、

深く深く考え込んでしまう私。

ん? 私? そもそも、私?


「・・・んー、うーむ・・・、

 ・・・つまり私は、僕は・・・、

 僕はとっくの昔に死んでいて・・・、

 私は僕の記憶をコピーされただけの・・・?」


「えっと、そうね、142(ひゃくよんじゅうに)(ごう)

 でも貴女の記憶は本物よ。」


「いや・・・、何から聞いたら良いのか

 分からないのだけれど・・・、

 まず142(ひゃくよんじゅうに)(ごう)オリジナルの記憶って、」


「無いわよ、そんなもの。

 記憶はご遺体から勝手に拝借させてもらっただけ。

 だから貴女の身体からだも記憶も貴女のもの。

 貴女の好きにしていいのよ。

 えっと、まあ、私たちの研究に協力してくれたら

 ありがたいとは思うけどね。」


「好きにするって言っても、

 改めて好きにして良いって言われても・・・。」


そりゃ最初の頃は僕の身体からだと使い勝手も違うし

取り扱い方もよく分からなかったから

結構慎重にケアしてたりしたけど、

最近はほとんど遠慮無しに好き放題してたなぁ、

私の(この)身体からだ

そういえば僕の記憶コピー元(オリジナル)身体からだって

今どうなっちゃっているのだろう?


「とりあえず・・・次の疑問いいかな。

 僕って、この記憶の主っていつ、

 どうして死んだの?

 僕の身体からだは今、どうなってるの?」


「えっと、地下に埋まった文明がどうして滅びたか?

 って話になるのだけれど、

 特殊な爆弾みたいなものによって、

 古代文明時代に日本海と呼ばれていた付近を

 中心とする半径5千キロメートルの範囲が

 一瞬にして停止させられたのは

 およそ数千年前のことだと考えられるわね。」


「数千年・・・、

 あと『停止』っていうのがいまいち

 分からないのだけれども・・・。」


「停止は停止よ。動物で言えば心停止とか、

 古代文明で言えば電源の停止、みたいなもの。

 仕組みとしてはヨトが一気に

 ばら撒かれたみたいだと推測してるわ。」


「うーん、まあ理解できる範囲で考えれば、

 みんな苦しまずに死んだ、ということなのかな?」


「苦しんだかどうかは貴女が一番良く

 知ってるはずよ?

 だって本当に記憶そのままなんですもの。


 えっと、そうやって一度文明が滅びて、

 改めて文明が構築されたのだけれど、

 この文明を作り、管理しているのが遥か北方の、

 古代文明時代にはグリーンランドと呼ばれていた

 島に住むリュウたちよ。

 それがこの世界の、最大の秘密。」


「・・・秘密・・・」


ちょっと待って、理解が追いつかない。


「そしてそのリュウに対抗するために

 力を入れているのが魔力の増強なわけで、

 そこを特に改造した人造人間である142(ひゃくよんじゅうに)(ごう)には

 是非とも実験に協力して欲しいのよ。」


「ちょっと待って、すぐには、」


「そうよね。

 えっと、一度持ち帰ってもらって大丈夫よ。

 でもその前に、施設の中を色々紹介したいの。

 判断材料は多いほうがいいわよね。」


「は、はい・・・。」


割と有無を言わせない感じ。

まあ折角ここまで来たのだから施設見学くらいは

しておかないと勿体無いのも事実だが。




「まずはここ。えっと、貴女はここで造ったの。」


そう言って連れて来られたのは、

巨大な試験管みたいな装置が並ぶ部屋。

多くの試験管は液体で満たされ、

中では多くの人間が裸で眠っているみたいだ。

こういうの、SF系のアニメでよく見たやつだ。

中で眠っている人、女の子が多いみたいだけど、

男の子っぽいのもちらほら。

みんな黒髪で、顔もわりと似ているかも。

そう言われればこの女の子なんか私にそっくり。


「あら、彼女が気になりますか?

 えっと、彼女は141(ひゃくよんじゅういち)(ごう)

 貴女にとってはほぼ双子と言ってもいいわね。

 彼女は本来、貴女よりも強力な人造人間に

 なるはずだったのですけど、

 ヨトの調整を失敗してしまいましてね。

 内臓全般に深刻なダメージを与えてしまって

 今は何とか無理に生かしている状態なの。

 もうそろそろ諦めて栄養資源に戻したほうが

 いいのは分かってはいるのだけれど。」


「その・・・、ヨット?って・・・、何ですか?」


「えっと、何て言ったらいいですかね・・・。

 ヨトってのはね、魔法のもと、魔力のもと、

 そんな風に理解してもらえばいいかしらね。

 私たち人造人間はヨトとの親和性を

 特に強化している、そう考えてください。

 例えば貴女は土ヨト木ヨト水ヨトを特に、

 火ヨトはそれなりに強化しているのです。」


「運動能力を強化するみたいに、ですかね。

 まだいまいちピンと来てないけど・・・。

 あと生理も止めてるとか言ってたけど?」


「ええ、えっと、それは難しい話ではないですね。

 私たちは出産する必要が無いですし、

 月1回無駄に痛くなるのは避けたいですからね。」


「あぁ、確かにそうですね・・・。

 会長も月1で大変なの?」


「いえ、私はそうでもないですね。

 かつて母は大変そうにしていましたけど。」


「貴女は生理にそんなに興味がおありですか?

 えっと、確か貴女は卵割を開始してから・・・、

 およそ16年かしらね。

 でしたらあと4年以内に言ってもらえれば

 生理を開始することも出来ますよ、一応。」


そういえばおしっこには随分苦労させられたけど

生理には苦労させられなかったなあ、

というか生理が来ていなかった件、

すっかり失念していたなぁ。

やはり女性としてはまだまだ半人前なのだろうか。


「4年・・・ですね。分かりました。

 生理を始めたくなったら、お願いします。」


「了解。物好きな人ね。

 えっと、今度は私から質問いいかしら。

 142(ひゃくよんじゅうに)(ごう)に、というより

 142(ひゃくよんじゅうに)(ごう)にコピーさせてもらった

 オリジナルの記憶に質問なのだけれど、

 私たちが造った男の子って、例えばこの子とか、

 正しく男の子かしら?」


「正しく? 男の子?」


この白衣のお姉さんは一体、

何を言っているのだろう?


「えっと、例えばこの146(ひゃくよんじゅうろく)(ごう)とか

 貴女と同じ記憶を渡した145(ひゃくよんじゅうご)(ごう)とかは、

 使った卵子は貴女と同じものなの。

 人工羊水の成分を調整することによって、

 あ、あと体液の調整もやったわね、

 それで男の子として

 成長させたつもりなのだけれども、

 私たち、男性の体について詳しくないからね。

 男性の記憶から見て彼らは男性として

 間違っていないかしら?」


「なるほど、そういうことなら、了解。

 だけど、男性の体を離れてから

 だいぶ時間が経ってるからなぁ・・・。」


などと言い訳をしながら、

146(ひゃくよんじゅうろく)(ごう)と呼ばれた男の子の身体からだ

試験管の外から隅々まで眺める。

平らな胸、陰茎、睾丸、長い髪、長い髭、

男の子としての違和感は感じない。

どことなく顔が柔和なのは個体差レベルだろうか。

そして程よく引き締まった身体からだ

ぽっこりと突き出ることの無いお腹、

たるみきった僕とは明らかに違うが、

それは既に遥か昔のこと。


「うーん、見た感じでは

 特に問題は無いけれど・・・。

 あとは使用感、って言ったら良いのかな?

 実際に身体からだを動かす感覚は

 ケイくんに聞いてみないとなぁ・・・。

 まあケイくんからは身体からだに関する違和感とか

 聞いたことは無いから、

 多分問題無いのだろうけど。」


「ふむふむ、ありがとう。

 えっと、参考になるわ。」


「そういえばこの男の子とケイくんとで

 顔の雰囲気が何処と無く違う気がするけど、

 遺伝子的にはほとんど一緒だ、って

 意味に聞こえたけど?」


「えっと、ほとんどというか全く一緒ね。

 ただ人工羊水の成分とか、

 ヨトとか上手に調節して、

 骨格や筋肉を上手に調整すると

 人の雰囲気って結構変えることが出来るのよね。

 まあ貴女と141(ひゃくよんじゅういち)(ごう)みたいに

 あえて似せることも出来るけどね。


 えっと、話は変わって、ついでにもう一つお願い。

 魔法の威力に関して協力いただけないかしら?」




そう言って連れて来られたのは別の部屋、

というか道場みたいな雰囲気の部屋に

よく分からない装置が並んでいる。


「えっと、あれらはね、魔法の実効威力を、

 実際に魔法を使ったら

 どれだけの能力が得られるのか、

 それを測定する装置なの。」


何かが会長の好奇心を刺激したのだろうか?

さっきの試験管部屋では呆気にとられるだけだった

会長が、積極的に発言を始めた。


「あの、質問いいですか?」


「えっと、何かしら。」


「魔法の威力って木霊受容体とか、

 火炎精霊とかを測れば良いのではないかしら?」


「ええ、えっと、

 それはリュウのバイアスがかかった、

 宗教のバイアスがかかった測定値ですね。

 ヨトとの親和性という意味ではそれでも

 間違ってはいないはずなんですけれども、

 理論的に得られるはずの威力と

 実効値との間に乖離があるんですよね。」


「乖離?」


「えっと、そうなの。

 だからこの装置で実際の威力を測って欲しいのよ。

 特に142(ひゃくよんじゅうに)(ごう)にはね。」


「へぇ。それでどうやって測るのかしら?」


「えっと、そうね・・・、

 ではハミルトンさん、

 まずはこちらに両手を入れて、

 オーブを挟むように触れてくれるかしら。」


そう言って会長に、なぞの装置の一つを

試してみるよう促す白衣のお姉さん。


「こうかしら?」


「それでいいわ。

 えっと、そしたら思いっきり

 冷やしてみてくれる?」


魔法を発動する会長。

光るオーブ。


「はい。もういいわ。

 えっと、ハミルトンさんの冷却能力は・・・、

 へえ、536.1ワットって、

 一般人にしてはかなり優秀じゃないの。

 では次、142(ひゃくよんじゅうに)(ごう)に代わってくれるかしら?」


そして会長に代わって私が装置に手を入れ、

冷却の魔法を力一杯発動する。

強く光るオーブ。


「はい、いいわよ。

 うーん、こんなものかしらね・・・。

 2万5千ワット・・・まあ火ヨトはそうかな。


 そう、隣は同じ火ヨトなのだけれど、

 発熱能力の方を測る装置なの。

 えっと、試してみて、ハミルトンさん。」


そうやって隣の装置のオーブも光らせる会長と私。

会長が6百ワットで私が2万ワットくらいだそうだ。


「えっと、土ヨトはね、鉄塊を1秒で

 どれだけ生成・消滅できるかで測るのよ。

 そう、生成能力はこの装置で測ってみて。


 えっと、ハミルトンさんはすごいわね。

 3.26グラムパーセカンドって、

 会長を任せられるのも納得の数値ね。


 次142(ひゃくよんじゅうに)(ごう)はね、

 えっと、1万3千グラムパーセカンドか。

 訓練次第では、もうちょっと底上げできるかな?」


何だろう。会長はすごい褒められるのに、

私はあんまり褒められない。

まあ期待値の裏返しなんだろうけど・・・。


それから木が4千メートルパーセカンドとか、

金が8百ワットとか言われたけど、

いまいちピンと来ない。

そして・・・、


「最後に水ヨット?も測るんですか?」


私は尋ねてみる。


「えっと、水ヨトはね・・・、

 正直正体が確定していないのよ。

 だから測り方も確定していなくってね。

 実は貴女の水ヨトを強化したのは

 水ヨトの正体を知るためなのよ。

 まあ推測が正しければ、なのだけど、

 えっと、あそこに天秤があるわよね。」


そう言って白衣のお姉さんが指し示したのは、

釣り合いの取れた天秤。


「あの、左の塊部分だけに、

 だるおも魔法を力一杯

 かけてみてくれます?」


「力一杯? うーん、了解。」


そう答えて、私は天秤に乗ってる塊に手をかざし、

だるおも魔法を頑張って発動してみる。

傾く天秤。


「やはりそうね。

 逆側に重りを載せるから、

 もうちょっと頑張ってみて。」


そう言って小さな重りを反対側に載せる

白衣のお姉さん。

反対側に傾く天秤。

あんなに小さな重りなのに・・・。

ちょっとむきになって、さらに頑張る私。

天秤の傾きが戻ってきたか・・・?


「うん、えっと、やっぱり水ヨトは

 重力に関係する魔法だったのね。

 古代の資料に空間操作型ヨクトトイズとか

 書いてあった理由はよく分からないけれど、

 水ヨトの正体の解明に一歩近づけた気がするわ!」


「えっ、今なんて?」


思わず聞き返す私。解ける魔法。

カチャっと音を立てて傾く天秤。


「いや、えっと、水ヨトの正体が分かるかもって、

 貴女には本当に感謝を」


「いやそこじゃなくって、そのちょっと前!」


「えっと、重力に関する魔法」


「そのあと! 古代の資料がどうしたって?」


「えっと、古代の資料?

 空間操作型ヨクトトイズって

 書いてあっただけだけど?」


「そう!

 ヨットって、ヨクトトイズって言うの!?」


「ええ、まあ。ヨクトトイズって長いから

 ヨトって私たちは呼んでるけど。」


ヨクトって、あのヨクト!?

ヨクトメートルだかヨクトグラムだかは

知らないけれど、ヨクトなのかよ。

あれ? ヨクトのサイズって、

不確定性原理的にありなのかよ?

いやあれは、位置と運動量が同時には

定まらないってだけだから何も問題無いだろ?

いやいやただの粒子なら何も問題無いだろうけど、

粒子じゃないぞ、トイズだぞ!

そもそもトイズって何なんだよ・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ