表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コピー  作者: 社会的におちこぼれの理系人間が、なろうで何か文章を書いてみた
異世界転生したらやっぱ、強大な魔力を思う存分振りかざして大暴れしてみたいよね。あれ?大暴れしたくないの?
11/19

護衛実習訓練 復路 (前)

「マイさん、モランさん、早くしなさい。

 遅れますわよ。」


会長の声が響く。


ここはコウ王国、兵士用宿泊所の4人部屋、

実習生女子4人で宿泊した次の日の朝。

部屋の入り口には会長とミリア。

私の隣ではニーナがどたばた着替えている。

そして私は、部屋に備え付けられていた鏡を見ながら

服装のバランスを考えていた。


「うーん、こんなものかな・・・?

 もう少し着崩してもいいかな・・・?」


「大丈夫大丈夫、

 マイは何を着たって美人さんなんだから、

 準備が終わったらあたしを手伝うか、

 もしくはさっさとどいてよ邪魔だから。」


「うん、分かってるけど、」


「それともあたしが選んだ服は気に入らない

 とか言い出す?」


「いえいえ、滅相も無い。」


ちなみに私の今日の服装は、あの日ニーナが選んでくれた

右肩を出した服、ワンオフショルダーって言うらしい、

とホットパンツをベースとした戦闘服。

スカートじゃない分、ちょっと露出が物足りないかも、

なんてニーナには口が裂けても言えないけど。


「でも、もし今日討ち死にしたら、

 この格好のまま路傍に転がることになるでしょ?

 その時の」


「だ・れ・が、討ち死にするってぇ?

 例えドラゴンに襲われたって、

 あんただけは絶対生き残る。

 あたしが保障する。断言していい。

 だ・か・ら、そんなくだらない事言ってないで

 手伝って!」


「・・・うぅ、りょうかい・・・。」


「じゃ、その肩当て取って。そうそれ。

 あとは・・・、ここ持ってて。と・・・、

 これを付けたら・・・、よし完了♪」


「ニーナ、終わった?じゃあ行くよ。」


「マイさんも早く来なさい。」


ミリアと会長にかされるニーナと私。

慌てて部屋を出発する。



途中、大あくびをしているケイくんと合流する。


「昨夜大活躍だったからって、

 そんな眠そうにしていると

 リーダーに喝を入れられちゃうぞっ。」


「分かってるよ、姉さん。

 現地に着くまでに気合を入れなおす。」


でもまあ私も、話のタネとしては

ちょっと会いたかったかな。

無論、トラブルはご免こうむりたいのだけど。




集合場所には20頭程度の魔道馬、

そして馬車は1台だけ。


「いやぁ、昨日、交易路に山賊が出たって、

 国中がその話題で持ちきりじゃないですか。

 おかげでみんな、しばらく様子を見ようって、

 商売人の癖に慎重なんですよ。」


「ならば何故、貴方は今日出発しようと?」


「そりゃ、ライバルが居ない時こそ

 商機に決まってるじゃないですか。」


リーダーと貿易商の会話が聞こえる。

どうやら今日の護衛対象はこの、

赤髪を七三に分けたちょび髭おやじだけらしい。


規則にのっとって、兵士が馬車と積荷を検分する。


「実習生諸君、今日は君達も検分に加わりなさい。」


そう言われて積荷を確認する私たち。

凍った牛肉、ほうれん草、柿、トマト、人参、・・・

悪筆気味な明細書と照らし合わせて、一つ一つ確認する。

パソコンがあればこんな汚い字、読まずに済むのになぁ。

まあ活版印刷すら駄目な世界だから仕方が無い。

閑話休題。箱や包装にも変わった点が無いか確認する。

うん、特に変わった積荷は無さそうだ。


「今日はやけに念入りですなぁ、兵隊さん?」


「彼らは実習生でな。

 これは彼らにとっての訓練なんだ。」


ついでに馬車自体も壊れてないか、密輸とか無いか、

じっくり確認する。


まあさっきから、こんな多人数で、たった1台を、

何度も何度も、結果的に念入りに確認することに

なった現状、不審な点、疑問点がもう

残っていないのは当然の帰結であった。


「よし、みんな、配置に付け。」


リーダーの号令とともに、

魔道馬にまたがり、陣形を整える私たち。


「出発!」


動き出す集団。

東の大門をくぐり、コウ王国が遠ざかっていく。




今日は昨日と別のルートを進むのは、

昨日の一件があったからではない。

実習訓練も兼ねているから、という理由が半分、

どうやら魔物は、前日通った人間の残り香に

かれやすいらしい、という経験則が半分。

つまりこれは、あらかじめ決まっていた

ルート変更であった。


そんな道程の途中、遥か前方に、

進路を塞ぐように設置された柵が見えてきた。

縦にも横にもかなり広い柵みたいだ。

あれは金属だろうか。

鋭く尖った先端が柵に括り付けられ、

こちら側を向いている模様だ。


「柵を・・・、右に迂回する!

 全員、警戒!」


言い終わるや否や、

左右から矢の雨が降り注いできた。


盾を持つ兵士たちは上方に構え、

私とケイくんと杖を持った兵士たちは

上方に暴風を、撒き散らすっ!


ゴウという音とともに矢の雨は勢いを失い、

四方に散らされ落ちていく。

私の方に落ちてきた数本は大剣の腹で防ぐ。


それでも構わずに再び降り注ぐ矢の雨。

と同時に現れる、人の気配。

魔道馬の群れとともに、高速で近づいてくる。

私は再び上空に暴風を撒き散らしながら、

状況を確認する。


私たちの左側からは魔道馬が50頭ほどと

その上に乗った山賊が30人ほど。

右側からは・・・、何だあれは?

鉄の塊みたいなのが5~6台ほど迫ってくる。

対峙するケイくんは既に聖剣を構え、

火炎を撒き散らす準備に入った模様。


右側のやつはケイくんに任せ、

私は左側に集中することにして、考える。

あー、こんだけ大人数が相手では仕方が無い。

当たり所が悪かったらごめんね、山賊さん。


私は右手の大剣で矢をはじきながら、

4本のとげが付いた、蜘蛛くらいの

大きさの白金の塊を大量に、左手の短剣の

剣先に作成し、暴風に乗せて超高速で解き放つ!


体中から血を噴き出して倒れ落ちる山賊に、

脚部が壊れて崩れるように倒れる魔道馬。

それなりに足止めできたが、

それでもまだ迫ってくる山賊は10人ほど。

あれ、棘の弾丸、全然足りなかったかな・・・?


と、私たちの進路上に鉄の塊が、

鉄板で覆われた馬車が飛び出してきた。

ケイくんが討ち漏らしたみたいだ。


進行を阻まれる私たち。

仕方が無いので私は魔道馬から左側に飛び、

そのまま振り返って山賊たちに突っ込む。

山賊たちは慌てて応戦しようとするが、遅い。


まず一人目が構える長剣を左手の短剣で叩き割る。

宙返りして大剣を一旦、背中に戻しながら

一人目を飛び越え、後頭部を右足で踏みつけ、

右足を踏み切って二人目に飛び掛る。

戦闘準備が何も出来ていなかった二人目の顔面に

飛び膝蹴りを食らわせ、胸倉をつかんで持ち上げる。

そのまま三人目の真正面に投げつけると、

受け止めきれずに二人とも落馬する。

四人目はちょっと遠いから、左手の短剣の先端から

風の刃を放って、右手を切り飛ばす。


そのとき、貿易商の馬車の方から

会長の声が聞こえてきた。


「あぶっ!」


馬車の方を振り返ると、

鉄板馬車から飛び出してきたと思われる山賊たちと

リーダーたちが交戦しており、

そのリーダーの背中をかばうように

会長が飛び掛っていた。

その会長の視線の先には・・・貿易商!?

ちょび髭おやじの持つ短剣が今まさに、

会長の左胸に突き刺さろうとしていた。


私は風を操って、急いで馬車まで飛行する。

馬車に到着するや否や、

左足でちょび髭のあごを蹴り上げる。

短剣を手放して、馬車の中に倒れこむちょび髭。

胸倉をつかんで、とりあえず馬車の外に放り捨てる。


会長を見る。

会長の胸には短剣が突き立っていた。

大丈夫だ。思い出せ。

以前に治療魔法の練習として、

ナイフが突き立てられたねずみの治療を

やらされたじゃないか。

それがちょっと大型化しただけだ。


まずは会長を馬車の上に横たえる。

顔面蒼白だが呼吸はまだある。心臓も動いている。

短剣がどこまで深く刺さっているか調べる。

この短剣が、先端にオーブが仕込まれている

タイプであればいいのだが・・・、あった。

魔法探索で短剣先端のオーブと魔力を繋ぎ、

体内の状況を確認する。

傷は肺に到達している。

出血が肺に流れ込んでいる。

だが幸いなことに心臓は傷ついていない。

ならばまず木の、流れを制御する魔法で

傷口付近の流れを停止させる。

次に土の消滅魔法で短剣を消滅させながら、

だが中継役のオーブは消滅させないように

気をつけながら、

消滅した部分を繋ぐように土の生成魔法で

細胞組織を丁寧に、だが早急に生成させる。

ある程度傷が塞がったところから、

流れを復活させる。


周囲を警戒しながら

これを繰り返していくだけなのだが・・・、

魔力的にも体力的にも非常にしんどいのは仕方が無い。

進行方向左側では人数も減って傷ついた山賊に対して、

兵士たちが戦況を有利に進めている模様。

進行方向前方ではリーダーたちが、

必死に私と会長をかばいつつ、

軽くげた服を着た山賊たちと剣を交えていた。

進行方向右側ではケイくんとニーナ、ミリアたちが

山賊たちと対峙していた。

すすけた剣を手にしたケイくんと

聖剣を手にした山賊が打ち合って・・・、あれ?


そうするうちに傷は一応塞がり、

支えを失った短剣の持ち手が倒れそうになる。

これ以上会長が傷つかないよう、

そっと手にとって馬車の中に放り込む。

さらに治療を施そうと、刺された部分に両手を当てる。

その手を、私の手の甲を、会長の手が触れてくる。


「マイさごふっ、もう大丈夫ですから・・・。

 あとは私一人で・・・、何とか・・・ごっ。」


血を吐きながら、相変わらず顔面蒼白な会長が

説得力の全く無いことを言い出す。


「黙ってて会長。ある程度血流を整えて、

 肺にまった血を抜くから。」


そして私は再び魔力を注ぎ込む。

しばらくして、周囲の喧騒が落ち着いてきたころ、

会長の呼吸も落ち着いてきた。

山賊は撤退したのだろうか。

倒れて動かない何名かを除き、

山賊の姿は見当たらなかった。

車列の前方からリーダーが号令をかける。


「被害状況報告!

 マイ、ハミルトンの容体はどうだ!」


「かなり落ち着きました。峠は越えた模様です。」


「了解!

 他、被害報告!」


「ケイ、聖剣ドラゴンスレイヤーを奪われました。

 奪還に赴く許可を下さい!」


「ふむ。は?」


ケイくんの申告に対して、

素っ頓狂な声を上げるリーダー。

確かに聖剣ドラゴンスレイヤーは国宝だ。

これを失くしたとなれば、

各方面の責任問題にもなりかねない。


「うーん、だが、一人で行かせる訳にも・・・、」


考え込むリーダー。

ケイくんなら一人で行っても

大丈夫だと思うけど・・・。

そんなこと考えてたら、会長が声をかけてきた。


「マイさん、今度こそ本当にもう大丈夫ですから。

 ケイさんの助けに行って下さい。」


「本当ですか?

 では『魔法の先生』の言うことを信じて、

 お言葉に甘えさせていただきます。

 まあまだ体の中にオーブが残ってるから、

 それを上手に活用してくださいね。」


「確かに私は貴女たちにとっては

 魔法の先生でしたね。では先生を信じなさい。

 健闘を祈ります。」


「了解しました。行ってまいります。」


私が手を離した場所に、今度は会長が両手を当てる。

魔力を注いでいるのだろう。

会長はほんの少しだけ、顔色が良くなったように見えた。


「リーダー、私が、マイがケイに同行します。」


「うむ、了解。

 魔道馬2頭の使用を許可する。

 よろしく頼むぞ。」


「では行ってまいります。」


ケイくんは魔道馬にまたがり、先行する。

私は馬車から降りると、車列の左側で待機していた

私が乗ってきた魔道馬の状態を確認する。

そして大回りするようにケイくんを追いかける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ