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コピー  作者: 社会的におちこぼれの理系人間が、なろうで何か文章を書いてみた
目が覚めたらここは異世界?かと思ったら、なぜか男女二人に分裂していたので、とりあえず姉弟設定で乗り切ろうと思います。
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目が覚めると、二人だった

「ふぅわぁー」


思ったより高い声であくびをする。


木漏れ日が顔に当たって、僕を目覚めさせる。

見上げると緑が生い茂った木の枝、少し視線を下げると青い空、白い雲、

更に視線を下げると草むらの先に、ファンタジーでしか見たことが無いような

城塞都市が一望できた。


どうやら僕は寄りかかって座っているみたいだ。



後ろを振り返って確認してみる。

太くて頑丈な木の幹が僕の体を支えていた。


そして隣には見知らぬ少年、歳は中学生・高校生くらいだろうか、

スポーツ少年といった感じで、容姿も綺麗に整っている。

一方服装はファンタジー世界の村人Aみたいな

粗末なシャツっぽいのと粗末な長ズボンと粗末な靴で、非常にアンバランス。

そんな少年が今まさに目を覚まそうとしていた。


眠そうなまなこで周囲を確認する少年、そして僕と目が合い、お互いに軽く会釈。


「あっ」

「あのー・・・」


目を合わせたままお互いに言いよどむ。

何と声をかけたらよいのか分からないのは、どうやらお互い様のようだ。

とはいえ状況が理解できていない現状、情報収集しなければ始まらない。


「すみません、ここは・・・」


言いかけて少し戸惑う。僕の声ってこんなに高かったっけ?


「いや、僕もさっぱり分からないんですよ。

 普通に布団で寝てたはずなんですが。」


少年は苦笑いしながら答える。そして彼は自己紹介し始めたのだが・・・


「えっ?僕の名前と全く一緒ですか?」


「えっ?あなた女の人・・・ですよね?

 なのにこんな雄々しいお名前なんですか?」


「えっ?」


言われて慌てて僕自身の体を確認してみる。



髪は・・・かなり長い。僕はこんなに髪伸ばしてない。

手足は・・・すらっとして細くて白い肌。

僕のでっぷりとしたおじさんの手足じゃない。

だが胸のふくらみは大して変わってない。普通にでっぷりしている。

・・・胸だけ変化が無いのは、よく考えてみれば変かもしれない。

服装は・・・、粗末なシャツっぽいのと粗末なロングスカートと粗末な靴?

どうやら隣の少年と大差ないようだ。


あとは・・・、


「鏡・・・みたいなのありませんかね?」


「うーん、向こうに川が見えるから、水面が使えますかね?

 立てますか?僕も立てるかな?」


二人してよいしょ、っと立ち上がる。歳がばれそうな声を上げて。

何だろう、意識してみると、確かにこの体は僕の体じゃない。



川の水面を覗き込む。ゆらゆらしててはっきり見えたわけじゃないが、

少女の姿がそこにはあった。



「えっ、あれ?僕・・・」


隣で川を覗き込んだ少年がびっくりして声を上げる。

そして少年は、少年自身の体を確認し始める。

これはひょっとして・・・、


「ちょっと立ち入った質問なんだけど、重要なデータってどこに保存してある?」


「え、なにそれ、どういう質問?」


「んーと、僕はユーワンのユノッチのユッキーに保存しているんだけど、

 あなたもそうじゃないかな?って」


「確かにそれは家族も知らない、僕しか知らない情報だけど、あなたも、って?

 それってつまり、あなた、って・・・、僕?」


「ひょっとしてそうじゃないかなぁ、って。

 あとは・・・、さっき寝る前に見たアニメは何?

 第何話?一斉に言ってみよう?」


「「せーのっ、小説家になろう、ツー、第二十五話。」」


「うん、最後に記憶が残っている時間もだいたい一緒かな。」


「えーと、あとは・・・、」


そして僕達はもう少し、個人的な情報を確認しあって確信した。

この少女とあの少年、二人の中身は、僕なのだ。



「そうすると、これが?これが異世界転生というものなのか?」


「うーん、普通に考えるとそうなんだけどねぇ・・・、」


「「二人に分裂するなんて、聞いたことが無い。」」




「二人とも僕ってことは、どっちかがオリジナルでどっちかがコピーってこと?」


「その可能性も有るけど、

 二人ともコピーって可能性のほうが高いんじゃないかな。」


「なるほど、オリジナルは惰眠を貪りつつ、

 次クールのアニメは何を見ようか

 考えているところかもね、なんて。」



「ところで、この体ってどこから出てきたのだろう?

 もともと誰かさんの体なのだろうか?

 恋人とか夫婦とかだったのだろうか?」


「誰かの体を乗っ取った状態ってこと?

 可能性はあるけど、二人とも何も持ってないから判断しようが無いよね。

 むしろどこかから土人形のように湧いて出た可能性もあるよね。

 容姿は整っているのに服は適当だし、所持品無いし。」


「確かに顔は綺麗で、どこか似ている・・・かな?

 すると二人はきょうだいみたいなものかも?」


「きょうだいか・・・どっちが年上?」


「うーん、双子、かな?

 あえて言うなら先に目覚めた僕の方がお姉さん、ってことで。」


「身長的には僕の方がお兄さんっぽいんだがな・・・

 兄・・・アニ・・・ケイ・・・暫定的な僕の名前はケイ、

 ってことならいいか。」


「まるで僕みたいな適当さだなぁ。

 じゃあ僕はシ・・・だと呼びにくいからマイで。」


「じゃあマイ姉さん、姉さんの声は明らかにオリジナルの声とは違う

 かわいらしい声なんだけど、僕の声もオリジナルとは違うのかい?」


「そうだねー、ケイちゃんの声は

 スカートが良く似合う男性声優さんみたいな声、かな。」


「そうきたか。声優で例えるなら姉さんの声は、

 憧れの声優さんの声を一生懸命真似た女性声優さんの声ってところだね。

 あと『ちゃん』付けはやめて、『ちゃん』付けは。」


「分かったよ、ケイくん。」


「まあいいか・・・」




「ところで姉さんって、全身本当の女性っぽいの?

 いわゆる男の娘とは違って?」


「まだ実際に確認したわけじゃないけど、所謂ついてる感覚は無さそう。

 一人じゃ見えない部分もあるし、

 一緒に確認してくれるとありがたいんだけど。」


「オーケー。」


そう言って二人で川岸に茂みを見つけて一応隠れる。

この世界に来て、僕達以外の人はまだ見かけていないんだけど、一応、ね。


そして長いスカートをたくし上げてみる。心は男だからか、少し興奮する。


「「うーん、」」


下着は穿いていなかった。じっくり観察して確信する。


「「少なくとも、男性器じゃないな。」」


双子以上にシンクロしてしまう。


「ってケイくんこそどうなんだい?もし僕達が土人形みたいなものだったら、

 性器みたいな複雑な器官は付いていなかったりするんじゃない?」


「いや、僕には普通に男性器が付いているみたいなんだよね・・・」


「本当?少し確認してもいい?」


「まあいいけど・・・」


ケイくんはズボンを少し下げて、外に出して見せる。


「あっ、なるほど、ふうん、本物みたいだね。あと、ごめんね。」


多少興奮した形跡のあったそれを無言でしまうケイくん。

ちょっと恥ずかしい思いをさせてしまったかな、とは思ったが

同時に、僕は何故か何となく、安心感を持った。


「じゃあそろそろあの城塞都市っぽいのに行ってみる?」


「そうだね。とりあえず行ってみるしかないよね。

 というか結構距離有りそうだし、急いだ方がいいかもね。」




道すがら、


「ところで設定どうする?」


「ひょっとしたらこの体、あの町の住人かもしれないな、

 って可能性を考えたら、記憶喪失しか無いんじゃない?」


「まあそうか。気が付いたら倒れていた。荷物も何も無い。

 僕達が何者か知らないか?って感じでオーケー?」


「うーん、姉さんは一人称を『私』にした方が良くない?

 僕は『俺』にした方がいい感じの容姿かな。」


「オーケー。『私達、どこの誰だか分からないんです。』よし、これでいこう。」


「あれ、そもそも日本語通じるのかな?」


「まあ駄目ならボディランゲージで頑張る。何とかなるでしょ。」



そんなこんなで大きな門にたどり着く。

門は開いてはいるのだが、人通りが無い。


守衛さんが一人立っている。

この世界に来て、僕達以外で初めて出合った人間である。


「「あのー、すみません。」」


「なんの、ようだ!」

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