第8話 ボス戦?・森人族
投稿遅れてすいません……。
岩石が溶けた溶岩が辺り一帯を包み、灼熱の炎がそこら中から吹き出ている。僅かに残った岩石は、不安定な足場として通る者を揺らし、溶岩に落とそうとしてくる。
ここは『無限迷宮』の99階層。ここに来るまでに1ヶ月もの時間を要してしまった。その間に、強くなることが出来たが結構やはり時間がかかり過ぎている。もう少しスピードを上げた方がいいな。
それにしてもこの身体、実に便利だ。睡眠や食事が必要ない、不眠不休で動く事が出来る。これならもう少しスピードを上げても耐えられるだろう。
走りながらそう考える。時々溶岩が飛んでくるが、『火炎無効』スキルの効果で全く熱くも痛くもない。
溶岩など気にせず走っていると、溶岩に紛れて、小石サイズのモンスターが飛んできた。確か名前は溶魚、溶岩の中に住んで近付いてきた敵を食い散らかすモンスターだった気がする。
まあそんな事はどうでも良い。向かって来たところを、刀で切り払う。すると抵抗する事すら出来ずに、細かく切り刻まれた。いつもながらログが大量に流れていく。
今の職業は<剣豪>、刀系を使う職業の最上位職の一歩手前の職だ。刀を手足の如く扱う事が出来る。
今はボスの1階層前の階層だ。次のボスを倒す為に走って次の階層を探し回っている。
補足だが、この迷宮は10階層毎にボスが存在する。これは通常のモンスターより強く、そう簡単に通る事は出来ない。筈だ。
筈と言うのも、今まで戦闘において苦戦した事は1度もない。理由は分かりきっている。《ポイント倍加》スキルが強すぎるのだ。あれから試行錯誤していき、あるスキルを獲得することでLv100を越えてもスキルを保持する事に成功した。
そのスキルとは……。
「漸く見つけた。」
とその前に、次の階層を見つけたようだ。スキルの事は後回しにしよう。
階段を下りていく。例え熱くないといえ、精神的にあの階層は辛いのだ。さっそと下りていく。
暫く降りたところで、広場が見えてきた。そこには重厚感ある、巨大な扉が置かれている。
ここの先には、ボスと戦闘する広場がまた広がっているのだが、ボスは中に入り、扉が閉まりきると出現する。
だが、ボスの形が形成しきるまでは、攻撃することが出来ない。見えない何かによって弾かれてしまう。実にゲームチックだ。
早速扉を開いて中に入る。すると扉は、オレが完全に入りきった瞬間に音を立てて閉まる。
すると広場の中央に、光の渦が回転しだした。足から何かのモンスターの形ができはじめている。
先程、この状態で攻撃する事は出来ないと言ったが、それは正しい。しかし、抜け道が無いわけではない。出現した瞬間に攻撃するのだ。この時、相手は隙だらけなので、攻撃が確実に決まる。
オレは、歩いて形成されていくモンスターに近づく。やがて、モンスターの胴体も形成され、異形な姿が露になる。
尻尾と短い腕が4束歩行になっており、でかい胴体がついている。これだけ見れば大きい蜥蜴だが、全長は10m程で全身に赤い鱗がついており、何より網膜のついた羽が生えている。
そして今、顔が形成された。その顔は、誰もが知る恐怖の象徴、ドラゴンである。
オレは全てが形成されるちょうどに、ドラゴンの足下についた。ドラゴンは雄叫びを上げようと、喉を膨らませる。
オレはドラゴンの首もとに跳躍すると、<剣豪>の奥義スキル[剛一閃]を発動させる。これは、鋼鉄でもバターのように斬ることが出来るアクティブスキルだ。
そしてそれは、ドラゴンにも通用するようで、雄叫びを上げる間もなく首がズレ落ちた。
今はスキルの詠唱をしていないが、《無詠唱》スキルを獲得する事によって、スキルの詠唱を唱えずに発動する事を成功している。
視界の左下にあるログは、絶えず流れており見る気は失せるが、今は進もう。
こうしてオレは、今日も攻略を早く進めている。
◇
森の木々を縫うように、一つの影が疾走する。身体の凹凸からみて、女性だろうか?時々転けながらも、走ることは止めずに目的地に向かう。
「速く、速く里のみんなに伝えないと!」
そう自分に言い聞かせるように呟きながらも、影は走り続ける。
森の奥深くまで走り続けると、急に止まった。
ある木に近寄り、ある文字を腰についていたナイフで刻み出す。数文字刻み終わると、刻まれた文字が光輝き、森のもっと奥深くに続く道が浮かび上がる。
刻まれた文字はいつの間にか消えており、道だけが残っている。影は、浮かび上がった土の道を駆けて行く。
曲がりくねった道を過ぎ去ると、漸く人工的に作られたと思われる建造物が見えてきた。
それは、蔦が絡み合い城壁のように立ち入る者を拒んでいる。蔦の城壁の上には、耳が少し尖った人間が二人弓を構えて影を狙っている。その人間逹は、20代程の男性で、通常より数倍顔が整っている。
その内の一人が影に向けて声をかけた。
「我等が望はただ一つ。」
「森の民の救済のみ。」
影は被っていたフードを取り、両手を上に上げながら答える。影ーーーフードを取った者は、城壁の上に居る人間と同じように耳は少し尖っており、金髪の長い綺麗な髪を背中に下ろし、顔は城壁の上に居る人間のように整っている。
城壁の上の人間逹は頷き合い、二人で城壁に手を着けた。
すると、蔦の城壁の一部が解けはじめ、大人一人が通れる広さにまで広がった。
フードを取った女性は、その隙間を潜り抜ける。完全に潜り抜けた所で、もう一度上の人間が城壁に手をつけ、隙間を閉じた。
一仕事終えた城壁の上の人間は、女性に駆け寄ってくる。
「副団長!御無事ですか!?」
「ああ、なんとかな……。」
副団長と呼ばれた女性は、溜め息をつきながらそう答える。だが、その顔は不安に彩られていた。
「至急族長に謁見の許可を。人間が………我等森人族に戦争を仕掛けようとしている!」
この森人逹がフェイクと会うのは、まだ先の事である。
久し振りに結構運動したぜ。