9) なんだそれ!
次の朝。
ジローさんはテントの外で野宿だった。
私はテツくんとテントでお休みだ、何も出来なかったけどね。
良いんだ。少しずつ警戒感を取り除いて、じわじわモノにしちゃる。うふふふふ。
……結局あと一つの『転生ボーナス』は何なのか分からなかった。ジローさんによると時間がたってから発現するものもあるそうだ。
「ステータス表とか無いの? ほら、ゲームなんかでよくある感じの」
「お約束のやつでござるか」
「おおっ!力がSだ凄い!とか。げえっ!称号:勇者だと!とか」
「無いでござるな。そげな便利な物があれば苦労しないでござるよ」
残念。ちょっとずつ試すしか無いようです。
「日本と同じ、この世界では剣術や体術は長い間練習して鍛錬して身につく。魔法も同じくひと握りの才能のある者が子供の頃から師匠についたり学校に入って、少しずつ覚えていくでござる」
「じゃ私たちは?」
「ボーナスは『ズル』でござるよ。練習や鍛錬をすっ飛ばして、一気に達人超人クラスの力や知識を得られるでござる。まさしく神の御技」
「ズル、ねぇ…… ここの世界の人たちから見たらそうなんだ」
「ボーナスはその人が持っている『イメージ』を具現化する事が多いみたいでござる。ちなみに俺の防御の力は、ほら、アニメにも出たでしょ。陸軍の四十三式戦車。無敵の装甲でござる、むふふ」
「ふーん、よくわかんないや」
「軍マニアの転生者が欲しい……」
少しがっかりするジローさん。
「テツのボーナスは彼のお父さんのイメージだ。お医者さまだったそうでござるよ」
「そうなの……」
寂しいだろうな、テツくん。こんな世界に放り出されて。初めて会ったのがジローさんか。
この変な喋り方のおっさんと一緒で…… あんなになっちゃたのは吊り橋効果ってやつかな?
「ちなみにテツの会った神様はムキムキの男性神だったそうでござる」
「元からかーい!!」
いかん、こりゃテツくん根が深そうだ。
前途多難、どうにかしないと。やっぱり母性愛なのか、おっぱいなのか!
自分の胸をペタペタ触りながら思った。女神様、もうちょっとこの部分なんとかなりませんでしたか…… ぐすん。
「君の会った女神様はどんな方だったでござるか?」
「うーん、お人形さんみたいな感じだった。金髪ロングで細ーい女の子」
「その人の深い心の中にある物や人が反映される、とこっちの女神様は言ってたなあ」
「転生ボーナスもね。てか、戦車? ぷぷっ」
「うーむ、女の子にも大人気だと思ったでござるがなあ…… ほら『少女戦隊バーミリオン』に出てきたでござるよ。めちゃ強い戦車」
「えー 私、兄貴とアニメとか結構見てるけど知らないよそんなの」
「……国民的アニメーションでござるよ。昔、映画にもなったでしょ」
「いつよ、オタクしか見ないやつじゃないの?」
「オタク……? なんでござるかそれは」
お、否定するのか。確かに面と向かってオタクと言われて嬉しい事じゃないかも。
「ええと映画は確か…… 光文七十年公開」
いやな感じがした。
「こーぶん?」
違和感が。
来た。
自分の教室だと思って入ったら、
全く違う部屋だったような。
お家に帰ってドアを開けたら、
知らない人がお帰りと出てきたような。
友達だと思って喋っていたら、
…………
「……ジローさん、……何年生まれ?」
自分の声が震えてるのがわかる。
「ふふふ、そういうのに興味のあるお年頃でござるか」
「答えて」
「1988年、光文六十三年でござるよ」
「……私、2002年、平成十四年生まれ」
…………
「「何だそれ」」
おっさんとハモった。
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