8) 素敵な転生ボーナス!
「『体術』でござるな」
戻ってきたテツくんに介抱されながらジローさんが言う。
「転生ボーナスでござるよ。良いのを貰いましたな」
キリッとした感じで言うが、目の周りにパンダあざが出来ていてイマイチ締まらない。
「いやあ俺も『聖域』が無ければ致命傷だったでござる。はっはっは」
「もージローさん、無茶しないでよー。動かないで」
テツくんの手から青白い光が出てジローさんを包んでいる。
「うわ何これ!」
「テツの転生ボーナス『癒し』でござる。多少の傷やケガなら…… ちょっとテツ! 変なところ触るな!」
さわさわ さわさわ
「うふふ、いまならジローさんうごけないよね…… 」
「ややめ」
「ほら服をぬがないと、治療できないよ?」
「ぬああああああぁああああぁぁぁ!! くっ聖域!!」
おっさんの悲鳴がする。
なんかやってるが私は自分の手を見ながら考え込んでいた。
勝手に体が動いた。
最適な角度でインパクトの瞬間、ひねりを入れた。完璧におっさんの顎を捉えた感触が手にある。
怖い。覚えたはずのない知識がある。
最適の動きで、最小の力で、たたかえる。体を動かせる。
武器を、うちくだける。
魔法を、はねかえせる。
人を、こわせる。
こわい。
「転生者は誰でも”一つボーナスをもらえる”でござる。俺は『聖域』、好きな範囲を絶対的防御出来るでござる。テツは『癒し』、傷を直したり気分を良くしたり、士気を上げたりいろいろ」
お、テツくんの魔の手から抜け出したみたいだ。
「ああ、テツの『癒し』は魅了効果もあるから、常時発動してるでござる。俺には『聖域』のおかげで効かないけど」
「魅了? 違うわ、あの神々しさは天性の物よ!」
「もう魅了されてるな……」
「ていうか」
ジロリとおっさんを睨む。
「あんた、今度やったら本気パンチよ」
「すんません」
「急所を蹴り砕くわよ」
「ごめんなさい」
反省はしているらしい、でも油断はできない。セクハラおっさんめ……
「危うくまた女神様に御対面するところだったでござる」
「すごいわね『聖域』」
思いついたので聞いてみた。
「……テツくん、死んだ人を生き返らせたりできるの?」
「それは無理です。ボクはまだちいさいから」
”まだ”か。いずれは出来るようになる、かも知れないと。
「死んだ奴は生き返らないよ」
ジローさんが言った。
「止めた方がいいでござる」
「なんで?」
「昔試した奴がいた。失敗した」
ふーん、聖域に癒しねぇ…… 便利そうだけど万能じゃないと。
それで私が『体術』ってか。
「昔は兄貴とよくケンカした、からかなぁ…… うんうん」
……うん?
……あれ?
ちょっと待って。
「二つ貰った」
「へっ?」「ん?」
「二つ差し上げます」って言われた。女神様に」