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6) 男の娘!

 もう遅い時間だったのでその場で野営…… キャンプと相成った。


「テツ、火をつけるでござる」

「はーいジローさん!」


 天使はアリエフ・哲夫という御芳名だそうだ。いやん素敵なお名前! アリエフ…… いや、テツくんが目の前の空間から何か取り出しシュッと火を…… マッチか。火魔法とかじゃないのね。


「情緒も何もないわね」

「え? こっちの方が便利でござるよ」

「いいけどね…… って今の何? 空中から!」

「今の? ああ、『倉庫(パントリー)』だよ。転生者ならみんな持ってるはず」


 ジローさんが目の前に手を伸ばすと、目の前の空間からジャガイモをスッと取り出した。


「なに、どうやったの今! 手品みたい!」

「念じるだけでござる。目の前に棚があるとイメージして、ほら」

「ん、やってみる」


 棚…… ここに見えない棚……


 恐る恐る手を伸ばす。

 手が消える。

 慌てて引っ込める!

 ビックリした!! 良かった、あったよ手!!


「大抵のものは入れられるでござる。あ、何を入れたか忘れちゃダメだよ。行方不明になっちまう。転生者みんなで使える部分と個人部分があるから間違えないようにね」

 便利だな転生者!


「何はともあれ、はいどうぞ」

 と渡されたカップでお茶を飲む。

コーヒー無いかな、ウチはコーヒー一家だったんだよー。


 草原のど真ん中で、たった三人で焚き火を囲んでお茶をいただく。おお、何とワイルド。何という異世界感!


 見上げれば物凄い星空だった。

周りに人工光が無いからだろう、雲のように見える銀河……じゃないわね、渦巻いてるし。


ああ、地球じゃないんだ、と全身で理解した。



 *****



 落ち着いて身の回りを調べてみたら、お金は文字通り山ほどあったわ。

女神様奮発してくれたらしい。

足元に落ちてた布リュックの中が金貨山盛りだった。ていうか大ぶりの金貨しか入ってない。

重くて女の子一人じゃ持ち上げられないよ! あ、『倉庫』に入れれば良いのか。


 それを見たおっさん…… ジローさんの喜びようは半端なかった。

変な踊りを踊ってたし、よっぽどお金に困ってるのね。大丈夫か日本人。


 黒髪黒目のボサボサ頭、変な言葉遣いのおっさん、佐藤二郎。二十九歳だそうだ。

なんかウェイターみたいな蝶ネクタイにオシャレ背広?を着てる。足元だけはゴツい編み上げ靴だ。

 一方は金髪ちっちゃい天使、見た目女の子で実は男の子。いや男の()か。

アリエフ哲夫ちゃん。八さい。いやーん素敵!


 ……ん? テツくんになんだか微妙な距離を取られております。まずったか。


「こほん、改めましてこんにちは。早月マリです。さっき転生して来たばっかりでこの世界は初心者です。どうかよろしくお願いいたします」


「よろしくでござる」

「……」

「こら、テツ」

「……はーい。アリエフ哲夫でーす」

「……」

「……」

 あ、あれ? それだけ?


 ジッと見ているとまたジローさんの後ろへ隠れちゃった。嫌われた……!? ガーン!!


「ジローさーん」

「テツ、うぜえ」


 あれ?

 なんか、なんか、おかしい。


「あ、あの。お二人は親子…… とか?」

「うん心も体もつながっ「違うでござるよ」てるよ!」


「……」

「……」

「……」


「ボクがこんなにジローさんのことを好「嫌でござる」きなのに」


 ……ダメだ。この男の()は残念な子だ。

 プーッと可愛く頬っぺたを膨らましてもダメだ、いや可愛いけど。


「あのう…… テツくんがそういった格好をしてるのはひょっとして……」

「俺の気を引こうとしてでござる。一年前にこっちへ来た時は普通の子だったんだが……」

 深々とため息のジローさん。


「あ、あのテツくん」

 すすっ


「あのね」

 すすすっ


 ……避けられとる。

 いかーん! ここはおねえさんとして将来有望な男の子(娘)を正道に導かねば!


「テツくん、それは不毛な選択よ。おねえさん知ってるわ、そういうのはごく限られた女子の間では大歓迎だけど、実際には」


「できるもん!」



ナニガデスカー!



 私は固まり、おっさんは頭を抱える。

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