3) 異世界へ行こう!
魔法を全部使えて使用制限なし、魔力無限大、腕っぷしは無敵、お金マックスでスーパー美少女に転生!
って言ったら怒られた、解せぬ。
「いいじゃないの! 危ない世界に放り出されるんだから! 私はただの女の子だよ! 今のままだとスライムにもやられちゃうよ! 伝説の武器とかもお願いします超強い剣とかくださいっ!」
「できるわけないでしょう! 世界のバランス的にもあり得ませんし、欲張りすぎです。勇者でも始める気ですか。それとスライムは強いですよ!」
「ぶーぶー」
口を尖らせ、文字通り神をも恐れぬ抗議をする。
「転生ボーナスは…… マリさんに適合したものを一つ。武術もランダムで何か一つ差し上げましょう。それと全くの別人になってしまいますので記憶知識は保持しますからね」
「え? 記憶あり? うっ前世の記憶が…… ってやつですか?」
「はい、さっきもお伝えした通り日本より遅れた世界ですので」
「それは聞きました」
「ええ、『そこの文明の発展にちょっとだけご協力』いただきたいのです」
ふむふむ。つまりやりたい放題ヒャッハー!ってことね。美男美少女を付き従えて、ダンジョンとかでお宝ザクザク。勇者……は面倒そうだから、横暴の限りを尽くす悪代官とか貴族とかを、ちぎっては投げちぎっては投げ…… お気楽に現代の知識を使って、簡単に発明してぼろ儲け…… いける!!
「なんでそうなるんですか」
女神さまがジトッとした目をしていた。
「えーいいじゃないですかー、お約束ですよー」
「ある程度の『転生ボーナス』は差し上げることは出来ますが、転生者なのに悪人になってヒャッハー水と食いもんをよこせ!は禁止です。天罰落とされますよ。ここを管理してる主神様は容赦ないですから!」
「トゲ付きの防具と謎の拳法とおっきな馬で」
「ダメです」
「引かぬ、媚びぬ、省みぬ」
「絶対ダメです」
「体のどこかに星座の形の傷が」
「絶っっ対にダメです」
チッ
「それではあちらに着いたら、似たような立場の方がお迎えに来ます。仲良くしてくださいね」
「はーい、至れり尽くせりですね。……似たような立場? 同じ、じゃなくて?」
んん? と聞き返す。
「うふふ鋭いですね。すぐ分かりますよ-」
「おっけーおっけー。もう何でもどーんと来いですよ!」
「……嫌だとおっしゃった割には、ずいぶんと乗り気ですね」
ここだ!
「美少女で。」
じとっとした目の女神様。負けずに見つめ返す。
「……」
「……」
「美少女希望です」
「ここまで図々しい方は初めてです」
はあ、とため息の女神様。
しかしここはもう一押しや!
「いやあのですね、今のままだと見た目普通なんですけど。ほらちょっと目つきのキツい女の子。親…… はともかく、兄貴は、お兄ちゃんは可愛いと言ってくれるんですけどね」
そう、せっかくなら見目麗しく、異世界とやらでモテたいじゃないですか!!
目指せ玉の輿! もしくは乙女ゲーの世界!! 先立つものが無ければ勝負にもなりませんことよ、女神さまっ!!
「はあ、わかりました」
「うそ! やたあああああああああぁ!!」
「美女の基準は地域や時代でまちまちです。太った方が美人とか、ウリザネ顔が良いとか。首が三十センチあった方が美人とか、下唇に直径十センチの円盤を入れたのが美人とかそう言った基準をランダムに選ん」「今のままでいいです」
そして私は過酷なるファンタジー世界への第一歩を踏み出した。
もう一度言おう。
なんだこれ。