2時のネコ
私はウソツキにぐいぐい引っ張られながら2時へ向かっていた。正確には、連れて来られていた。
バーン、と荒々しく2時の扉を開ける。そして、部屋の隅にあるベットにダイブ。ぼすっ、という音。
私は扉を閉めながら言った。
「なんで寝てんの」
するとウソツキは「夜更かしは美容と健康に良くないって言うでしょ」と言って夢の国へと旅立っていった。
呆れた。まだ昼なのに、なんで寝るのか。
ん、まてよ。そもそも今は何時なんだ。
懐中時計を取り出そうと、ブラウスの胸ポケットに手を入れて気付いた。
時計がない。
おかしい。確かに朝はあったはず。ちゃんとポケットに入れたはずなんだけどな。
私は記憶力が絶望的に良くない。そんなこんなで、私の思い違いということにしておいた。
そもそも懐中時計1つで朝昼晩がわかるわけではない。わかるのは時間だけである。とりあえず時間のことは気にしないことにした。
改めて2時の部屋を見まわしてみる。
部屋の隅にはウソツキがネコみたいに寝ているベッドがある。あとはちょっとおされな机があるだけで、他には何もない。
私はちょっとおされな机の前に立った。
机の上には難しそうな本が数冊。1時の部屋からパクってきたのであろうが、とてもウソツキが読むとは思えないような本ばかりだ。
あとは日記が一冊。ロックは掛かっていないが、とても分厚くてずっしりしている。
私には他人の日記を盗み見る趣味はない。しかし今、私はセカイかもしれない世界に迷い込んでいる。仮にここがセカイだとしても、情報が少なすぎる。私はこのセカイについてもっと詳しく知っておく必要があると思う。そして今、ウソツキは夢の世界をエンジョイしている。
これは絶好の機会ではないか。
私は日記の表紙をゆっくりと開いた。なんとなくうしろめたさを感じたが、それでも私は読んでしまった。
私が絶望的な光景を目の当たりにするのは、まだ先の話である。