私はもう一度、恋をする①
思い付きで書きました。
〇月×日 自宅にて
「山谷さん、私と付き合ってください!」
後輩の女性との食事中に放たれたその一言に私は驚き、箸を止めた。あまりに急な事だったため、私はどう返事をしたら良いか分からなかった。
「いや、澤井さん。確かに私はバツイチですけど、子持ちですよ」
「分かっています!それでも山谷さんの事が好きなんです」
(止めて、これ以上ドキドキさせないで)
彼女は七歳ほど歳の離れた職場の後輩で、私が彼女の新人研修を担当したことがきっかけである。その後は私の下で働いている。素直でどこか子供っぽいところがある。そのため、彼女の指導には苦労した。
私は五年前に大学時代の男友達と結婚、一年後に娘を出産した。しかし、昨年に不慮の事故で夫は亡くなった。私の両親は私が二二歳の時に他界。相手の親は私たちの結婚に反対していたため、頼れる身内はいない。それ以来、悲しむ暇もなく女手一つで育てた。娘の前では悲しまないようにしているが、娘を保育園に預けている時や職場で働いている時は悲しくなる。そんな時、この後輩に元気付けられた。
「いや・・・でも・・・」
「さわちゃんといっしょにすみたいー♪」
「ほらっ、この子も言ってますよ。やはり付き合いましょう!」
娘の一言に山谷は燃え上がってしまった。
「では・・・試しに付き合い・・・ましょうか」
「やったー!」
いつも私をときめかせるから、本当に後輩はずるい。いつまでも悲しんではいられない。そんなことだと、あの世の夫や両親に申し訳ない。
親愛なる夫へ。私は前に進みます。他人を愛することをお許しください。そして、温かく見守ってください。
おわり
読んでいただき、ありがとうございます。
短編小説以外に連載百合小説「信頼の百合の華」を書いています。
そちらもよろしくお願いします。
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