ホームシェア 第三話
これからセリアと二人っきりで暮らすのかと思えば、他にも5人の女性が居るという。
この事に光は内心で歓喜を声を上げるが、少しだけ、男が自分一人だけだと心細いとも思う。
「後は、男性が――」
「あ、男の人も居るんですね」
これから始まるハーレムのような夢の生活はものの数秒で崩れ去った。
そんな気落ちしている光の気持などつゆ知らずに、セリアは指を折り曲げながら数を数える。
「男性も4人……5人と言えばいいのでしょうか?」
「え、10人も居るんですか!?」
煮え切らない態度でセリアは言う。そんな彼女の曖昧な物言いに疑問を持つが、それ以上に同居人の数に光は驚く。
「そうですね……改めて数えると多いですね~」
「一応確認ですが、これ以上の住人を増やしても平気なんですか?」
「その辺は大丈夫です。皆さんで話し合いをしましたし、お部屋の準備もばっちりですよ」
不安そうな表情の光を安心させるため、セリアは明るい笑顔で話しかける。彼女の表情もそうだが、温かな声を聞いていれば安心かを思える光。
彼は「人が多そうだけど、やっていけるかも」と言葉をもらせば、セリアが口を開く。
「大丈夫ですよ。みんさんいい人ばかり……いい人ばかり?」
「え!?」
セリアは右手の人差し指を顎に当てて小首を傾げて、自分の発した言葉に疑問を持つ。
そんな彼女を見れば、光は驚嘆の声を上げて足を止めた。
「あ! 違いますよ! みなさんいい人ですよ。人です」
光の声を聞き、セリアは慌てて住人の事をいい人だと断言した。
しかし、それをほんとに信じることができるかと言われれば、光はこの先の物件を諦める事を頭の隅に置くことにした。
光から発せられる疑心の思いを感じ取ったセリアは冷や汗をかきながら言う。
「本当にいい人ばかりですし、女性の皆さんなんて美人揃いですよ」
「そ、そうなんですか」
怪しいポン引きのように、セリアが口を開けば光の心が揺らぐ。
それを感じ取ったのか、少しだけ彼女の眉がピクピクと引き攣りながら言う。
「小柄で守ってあげたくなる女の子とか」
「小柄な……女の子」
光は自身の事をロリコンだとは思っていない。いないが、美人で小柄な女の子に興味が湧く。
不安の思いから邪な気持が強くなってくると、更にセリアの眉がピクピクと動くが、彼は気が付かない。
「スラリと長い手足に、彫刻のように綺麗な女性とか」
「長身の……女性」
確かに小柄な女性に興味も引かれるが、綺麗な女性に心が揺れ動く。何となく安全そうなので。
光すでに心の中で綺麗な女性を妄想していた。それを感じ取ったセリアは笑顔で眉だけではなく、口元をヒクヒクと動かす。
「言葉で例えるのもおこがましい……女神さま」
「め、女神みたいに綺麗な人……?」
女神のように美しい人なんて想像できない光は、首を左右に振りながら考える。
容姿は想像できないが、きっと優しくて「あらら、うふふ」とか言いながら甘やかしてくるのかも――。と、妄想している側で、セリアはこめかみに人差し指を当ててながら言う。
「胸が……女性の象徴が大きな女性とか」
「…………ッ!」
その言葉を聞き光は生唾を飲み込む。女性の象徴が大きい――つまり巨乳。
もはや言葉など要らぬと言わんばかりに、光は何度も何度も無言で肯く。
「最後の一人は、何時も露出が高い服を着てますね」
「ろ、露出度の高い服ですか!」
「そうですね、上半身はほとんど紐だけですね」
上半身が紐だけ。そんな痴女まがいの服を想像すれば、鼻の下をこれでもかと、だらしなく伸ばす光。
隣にいるセリアは、もはや眉を顰めることもなく、ただ、半目で光を見つめるだけだった。
その瞳はまるで、「部屋を貸す相手を間違ったかも」と言わんばかりに冷め切っている。
光はわざとらしく咳き込んで、顔を引き締めた。
「早く行きましょうか、セリアさん」
「……ううん、やっぱり――」
「大丈夫です。ええ、大丈夫です。自分、頑張りますから!」
そう言いながら、一本道の林道を力強い足取りで歩いて行く。




