表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

3.ミヤコ

「それで連れてきたのがこの子って訳なの? ユージ君? だっけ?」

「は、はい」


 名前を呼ばれ慌ててうなずく。

 慌てたのは、そのそこはかとない詰問口調に緊張したからだ。

 目の前のきつい目をした女性は、怪訝そうに首を傾げた。


「迷宮に守護機械以外のものが出るなんて聞いたことないけど、あなたは人間なのよね見たところ。一体どこから来たの?」


 祐司は答えに窮した。

 答えられないでもないが、その答えがそのまま通じないような気がしたからだ。


 マキとキリュウというらしい二人に助けられ、あの後祐司は白い通路から地上に出た。そう、つまりあの通路は地下にあったのだ。延々歩いた先の階段を上ると、石造りのドームの中のような場所。

 そこに彼女はいた。


 名はミヤコと言うらしい。しわひとつないぴしりとしたスーツに身を包み、年齢はおそらく二十かそこら。髪も後ろで几帳面にまとめ、どこか険しい目つきは見据えられる方を落ち着かなくさせる。

 雰囲気からしてマキたちのリーダーか何かのようだが……


「ええと、なんて言ったらいいか……」

「彼はここではないどこかから来たそうです」


 口ごもる祐司の横から声を上げたのは、マキという少女だ。灰色のジャケット姿、肩口で切りそろえた髪、何も映さない眠そうな目。報告の声もどこか虚ろできっと意識はここにはない。


「デンシャ、という乗り物から下りたところ、気づいたら迷宮にいたそうです」

「デンシャ?」

「大勢乗れるのだそうです。とても長い距離を移動するとか」

「ふうん、長距離? なんで迷宮内で乗る必要があるの」

「不明です」


 二人分の視線がこちらに向く。


「え、いや、なんでって言われても……」


 祐司はたじろいだ。

 元は迷宮とやらじゃなかったし。


「バカに答えを求めても無駄に決まってんだろ」


 次に声を上げたのは、祐司の後ろの方にいたキリュウだ。

 だるそうに首を回しながら言う。


「バカは明快な答えを持ってるはずねえんだ。なぜかって? そりゃバカだからだよ」


 灰色のコート、短く刈り込んだ髪、三白眼気味の険のある目つき。声には皮肉の気配が色濃く込められていて、傲慢さを隠そうともしていない。


「分かったらこんな無駄な話、さっさと切り上げて休もうぜ」

「ところで今日守護機械の大群に襲われたのは、キリュウがヘマをしたからです」

「あ、てめ」

「隠れてやり過ごせばいいものを、彼は自分から飛び出していきました。理由を訊いても暇だったからとそればかり。彼の理屈で行けば間違いなくバカです」

「へえ」


 ミヤコの視線の温度が下がった。

 キリュウが舌打ちする。


「んだよ、文句あんのかよ」

「いいえ、バカにつける薬はないものね」

「ケッ、分かってんじゃねえか」


 ドームの出口に向かって歩きながら手をひらひらさせる。


「俺はもう飽きた。後は勝手にやってろや」

「はいお疲れ」


 キリュウが出ていったところで、ミヤコはマキにも解散の合図を出した。


「あなたももう戻っていいわよ。後はわたしがやっとくから」

「わかりました」


 マキも姿を消し、二人だけになったドームで、祐司はあらためて緊張に体を硬くした。

 そんなこちらを気にする風もなく、ミヤコはすっと背筋を正す。


「そういえば正式な自己紹介が遅れたわね、ミヤコ班の教官を務めさせてもらってるミヤコよ。よろしくね」

「は、はい」

「ところで本当はさっきから気になってたんだけど……」


 そのすらりとした指が祐司の右肩を示す。


「その小鳥は何?」


 その青いセキセイインコは、うとうとと体を揺らしていた。


「いや……これは僕にも全くわからないです……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ