4章 ちょっと変
【概要】ベルクソンの考えは哲学により発見されるに相応しい真理でありて、ベルクソンは大発見をしつ、と青葉がいう。
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「ちなみにさ」青葉が続けつ。「ベルクソン先生は、すべては永遠のものとして一度に与えられつ、という考えも、表明せしそうなのよ。ビグ バン理論はその時にはまだ提唱されていず、かつ、先生の眼のまえには偶たまこの宇宙が具体的な有として存在していつのよ。なので、先生は、この宇宙が存在システムの全体であると考える立場で、そう表明せしはずなのよ。そして、この考えは、当時の考えとして、至極もっともなものと言えるのよ。
他にもありうる考えとして、宇宙は永劫の昔からこのようなものとして存在していつ、というものがあるよ。あたしは、子供のころから、こっちに与していつけどね。だって、こげな途方もないものが、いきなり出現しつとか、ビグ バンから発生しつなど、子供にはとても考えられないからね。
とは言うても、先生は、存在基礎命題の延長線上でこう表明しつのよ。だから、先生の表明には普通の考えかたとは決定的な違いがあるのよ。先生は、それらの命題をこの宇宙に具体的に当てはめてみし結果として、そう表明せしわけなわけ。
若干、ニューアーンスは異なるけれどもね。なぜって、ただ有であるばかりのものが、与えられつ、というのて、ちょいと変だから。て言うか、かなり変だから。そこは、しかし、この宇宙が存在システムの全体なのだ、という解釈に立ちての話なので、仕方ないのよ。先生だて、この宇宙がビグ バンから発生しつというのは、まだ知らなかりきし。恐らくね。それに、二つめの、この宇宙は永劫の昔からこうなりき、という考えかただて、インチキ臭いけど。だから不思議で不思議でならなかりしわけなわけ。
でも、いずれにしても、先生の存在基礎命題は真理と呼びていいものなのよ。だから、先生は、存在についての問いのうちの必要性の問いに答える決定的な真理を、なんと、もう、百年以上もまえに発見していつ、ということになるよ。しかも、この真理は、哲学により発見されるに極めて相応しいものなりきのでありて、先生は、まさに、哲学者として面目躍如たる発見をせしわけなわけ。大発見なりきのよ」