15章 存在しない人参
【概要】ベルクソンの命題に関係するジョークを青葉がいう。
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「じゃあ、ここで」青葉が言った。「お口直しにジョウクを一つ」
今日の晩御飯のお味噌汁は豚汁なりき。
子供が言った。「ねえ、母ちゃん、豚汁に人参いれないで」
すると母親が言った。「いいえ。存在しない人参はパラドクスなのよ? だから存在する人参を無きものにすることは出来ないことなのよ。さあ、ぶうぶう言うてもいいから、なんでも喜び食べなさい」
「ぶう、ぶう」
翌日、八百屋に人参は存在していなかりき。そして晩御飯のおかずはビーフ ステューでありき。
子供がめげずに言った。「ねえ、母ちゃん、ステューに人参いれないで」
すると母親が嬉しげに言った。「へへへへ、残念でした。今日は八百屋に人参は存在していなかりきのよ? 存在しない人参はパラドクスなのよ。だから、今日は、ステューに人参いれないで、とは言えないのよ。さあ、今日の人参が不条理なりしことに感謝しながら、喜んで食べなさい」
「わーい、やったー」
「ははは」「ははは」絵理とセァラが脱力せしように笑いつ。
人参は存在しなけりゃパラドクス、それを消すなどできぬことなり
人参は存在せねば理不尽なり、ステューにな入れそとは言えぬかも