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22 ルクアの日記

 信じられないことが起きた。

 サムとトムリが殺されたのだという。おまけに、安全だった筈の砦近くで魔獣まで出た。

 何かが大きく変わったんだ。

 あたいたちにとって、いい変化であってほしいな。

 頭領が明るくなってる。きっと、大丈夫だね。





 昨日は二日酔いで日記はお休み。

 あたいともあろうものが、なんという不覚。

 明るく楽しそうに杯を交わしていたのは、やせっぽちの男の子。シャナちゃんと同い年くらいかな。それがあんなに底無しだったなんてねえ。

 リムちゃんがすごく警戒していたけれど、大丈夫じゃないかなあ。悪い子には見えないよ。





 リムちゃんが、落ち込んであたいのとこに来た。ユウ君と二人きりでファールドンまで行かなくてはならないそうだ。

 何て言っても、聞く耳持たなさそうだしねえ。

 頑張れ。





 案ずるより産むが易し。

 帰ってきたリムちゃんは、ユウ君と仲良くなれたみたい。

 ね、いい子だったでしょう?





 ユウ様はおかしい。

 持っている魔珠を全部、あたいたちにくれた。

 今以上に強くなる気が、ないんだろうか?

 武芸者の高みを目指す気はないんだろうか?

 ベルガモンの旦那はそう思わなかったみたい。あたいには信じられないけど、魔珠を使わずに強くなる道があるんだって。

 本当かなあ。





 今日もみんなで魔獣狩り。本当にお疲れさま。

 でも、みんな楽しそうだ。どんどん強くなっているからね。

 ニーアは寝不足で文句を言っていたけれど。

 こんなにたくさんの魔珠を純化処理するなんて、初めてだもんね。


 でも、文句を言いながらでも、一生懸命、朝までには間に合わせようと頑張ってる。

 エルメタール団全部が頑張ってる。

 あたいも美味しいご飯で、みんなを迎えてあげようね。





 ガラマール盗賊団が攻めてきた。

 サムとトムリが懇意にしていた盗賊団だ。

 嫌らしい目であたいたちを見ていた、男所帯の乱暴者たち。

 それなりに強いんだろうね。サムとトムリも、対等に見ていたし。

 でも、うちも変わったよ。前のままのエルメタール団じゃない。

 戦いはうちの圧勝だったそうだ。ユウ様が激怒されたとか。うふふ、嬉しいな。





 夜中に帰ってきたユウ様たちはみんな、疲れきっていた。おまけに、女の子たちまで連れて帰ってきた。ここからはあたいたちの出番。

 それにしてもユウ様、可愛いなあ。





 あたいたちの狩る獲物に、人間が加わった。でも、前と違う。今度は盗賊たちを狩るんだ。

 先は長いし、茨の道。きっと、大きな戦いになる。

 ユウ様も心配してくれて、ガラマール盗賊団を殺してよかったのか聞いてきた。

 ユウ様の戦いにあたいたちを巻き込んだと思ってるのかな?

 大丈夫だよ。もうみんな、覚悟を決めてる。ユウ様が来る前と後は大違い。昔に戻る気はない。

 だからね、ついていくよ。





 ユウ様はおかしい。

 いつも、あたいたちの予想の遥か上を悠々と飛び越えていく。

 今度は、あの、アルマーン商会を味方につけた。

 もう、意味が分かんない。

 おまけに、シャナちゃんが籠絡されていた。あの、誰とも一線を引いていたシャナちゃんが、あんなにベッタリ引っ付くなんて。あんなに輝く笑顔は初めてだ。

 何があったのかなあ。

 リムちゃん、拗ねないの。

 あれ?

 猫耳は?





 ベルガモンの旦那が街に帰った。ファールドンの拠点を守る役目もあるみたいだけど、やっと、街に帰れたんだね。

 上官殺しはお咎め無しだそうだ。旦那が殺したあと、不正の証拠やらなんやらが一杯出てきて、本当は逃げなくても大丈夫だったらしい。今さら教えられても、辛いね。

 でもこれで、大手を振って昔の仲間と会えるって喜んでいた。良かったね。





 あたいのとこで悩みを吐き出す男の人は結構多い。悩みなんだかよく分からない事も多いけど。今まで頭領がずっと面倒を見ていたリムちゃん、シャナちゃんが、今ではユウ様にベッタリだ。リムちゃんはまだ、近くをうろうろしているくらいだけど。

 それが心配なんだって。

 可愛い女の子を二人とも取られて、俺なら絶対に焼き餅焼くね、とそんなに自信満々に言われてもなあ。

 頭領も幸せそうに見えるんだけどね。




 イーノックさんも、街へ行った。借金から逃げてきたと言っていたけど、なんでも、アルマーン商会が、債権を買い取ってくれたそうだ。今後は、商会に借金を返す予定との事。後援者でもあるし、だいぶ返しやすくなったんじゃないかなあ。

 所帯を持つと言って、一緒にレミィも着いていった。レミィは家の借金で売られた娘だ。きっと、イーノックさんの財布を、きっちり管理できるだろうね。

 元々二人はずっと好き合っていたから、街へ帰れるようになって、本当に良かった。

 森の中で子どもは、難しいもんね。





 盗賊狩りは順調だ。

 身代金目当てにさらわれた人の救出も、何件かあったようだ。そんな人たちはアルマーン商会を通じたり、ファールドンの斬り込み隊長ディルスラン様を通じて、無事に帰っていった。

 エルメタール団の評判は、いよいよ高まっている。その分、危険も、ね。

 ユウ様、背負い込まないでね。





 ベルガモンの旦那が戻ってきた。

 昔の仲間を集めて、ユウ様に恩返しをしたいって。

 戦力が一気に増えた。頼もしいね。

 エルメタール団の評判を聞いて、仲間になりたがってくる人も増えてきた。

 どれだけ信用できるかは分からないけど。

 でも、ベルガモンの旦那が信じた仲間なら大丈夫だね。





 戦える人が三十人を越えた。すごいことだ。

 あたいたちの仕事も増えた。

 初めて見る顔が増えてくる。誰が何を考えてるか。あたいも気にしておこう。

 裏切り者とか、うちを調べるために潜り込んできたやつとか、いるだろうからね。

 そう思っていたら、ユウ様が突然、一人の剣士を斬ってしまった。最初はみんな吃驚したけど、なんでも暗殺目的で潜り込んできた人だったそうだ。ユウ様、なんで分かったんだろうね。




 来るべきものが、ついに来た。

 やり過ぎたんだ、と、世間は言うだろうね。

 でもどうか、ユウ様、あたいたちを信じてほしい。

 この戦いを乗り越えて、もっと先に進んでいくユウ様に、みんなついていくよ。

 一緒に、行きたいんだ。


 だからね、あたいたちを、信じて。


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