犬を拾いました、雄25歳の大型犬です。
犬を拾いました。
ベタだけど雨の降る日の学校帰りに、弱って死んでしまうのではないかというような、汚くてぼろぼろの犬を拾いました。
自分でもなんで拾ったのかわからない。でも、多分、自分より惨めな存在を作りたかったのだろう。
可哀想な存在をみて、自分はこいつよりはましだと思いたかったのだろう。そんな風にしか、私は自分を肯定できなかったから……。
ああ、哀れだなこの犬も私も……。
田舎から進学のために都会に出てきてもう3年目になる。いや、まだ3年なのかな?
まあ、いいや。とにかくはじめは新鮮に映ったこの環境にも、もう慣れた。でも、馴染めなかった……。
都会の喧騒は煩わしく、忙しなく歩く人並みに私は呑まれていった……。
友達はいる。でも、深い話をするような自分の中に溜め込んだものを吐き出せるような友達はいなかった。
だからだろうか、私は常に押しつぶされるような不安を抱えていた。
いわばこの犬は生贄だ。私のこのどうしようもないような不安や孤独を埋めるためのていのいい道具でしかないのだ……。
そう、道具でしかないハズなのだ……。
なのに……
「とーこちゃんっ!おかえりなさいっ!
今日の学校はどうだった!?」
「……うん、いつも通り。何の変哲のないつまらない一日だったよ」
「そう!いつも通りならよかった!
今日のご飯は鍋だよっ」
「わかった、先にお風呂に入るね」
「よかった、ちょうど
お湯がはれたところだよっ」
私は、あの日犬を拾った。
汚くてボロボロだったあの犬は、風呂に入れると綺麗な顔をしていた。あの汚い姿からは想像できない。
今はその綺麗な顔を売りにしてモデルをしている。
最近はメディアで取り上げられて一躍ときの人だ。
私は、この犬を哀れんで自分を肯定したかったのにもうそれもできない
でも、この犬を拾ったことを後悔はしていない。
だって、この犬は私を見てくれる、私の傍にいてくれるから。
「んふふ~、今日もとーこちゃんはかわいいな~。
本当は、外に出したくないんだけど……。
……もし、学校楽しいなんていったら……。
閉じ込めて、僕だけしか見れなくしちゃうぞっ!
えへへ、早く僕だけのものになってね。
とーこちゃんっ!」