表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/35

お役に立てて何よりです

「いやぁ、君が居てくれて本当に助かったよ」

「いえ。先生こそお疲れ様でした」


 骨折の患者さんは無事街の病院へ移送され、自分で歩ける他の方達も皆先生にお礼を言って帰っていきました。

 また先生と二人きりの時間。治療道具の洗浄や片付け、ベッドシーツの交換など、全てが終わったのはもう陽が沈んだ後。一段落して椅子に腰を落ち着けると、どっと疲れが出てきます。先生が淹れてくれたお茶をありがたく頂いて、私はほっと息を付きました。


「いつも先生はお一人で対応していらっしゃるんですか?」

「あぁ。そうだね。忙しい時には城の侍従を借りる事もあるが、彼らは専門的な知識を持っていないから。大抵は一人でこなしているよ。しかし、老体には中々厳しくなってきたなぁ」


 そう言って先生はハハハッと笑う。確かにお一人では大変そうですね。一国の騎士団ともなれば、大勢いらっしゃるのでしょうし。

 その時、医務室のドアをノックする音が。顔を見せたのはアークさんでした。ちょっと離れていただけなのに、なんだか久しぶりな気がします。忙しかったからですかね?


「失礼します」

「やぁ、アーク。お疲れさん」

「お疲れ様です。先生、今日はありがとうございました。広場の方も無事収集がつきました」

「そうか。大事にならなくて良かったよ」

「それと……」


 ちらりとアークさんが私に視線を移します。それに気づいたシェルベ先生が手を横に振りました。


「彼女に関して言えば、礼は不要だよ」

「はい?」

「むしろ礼を言わなきゃならんのはこちらの方だ。彼女が居なければこの騒ぎは乗り切れなかっただろうな」

「はぁ……」


 説明を求めるようにアークさんがこちらに再びお顔を向けます。養護教諭と言っても通じないようなので、ここは簡単にお話しておきましょう。


「多少の応急処置なら経験があるんです」

「多少どころじゃないさ。手際もいいし、正しい医療の知識もある。若いのに大したもんだ」


 この歳になると中々褒められる事って無いので嬉しいものですね。シェルベ先生にお礼を言って、私は席を立ちました。せっかくお知り合いになれたのですが、アークさんがお迎えに来てくださった以上お暇しなくてはいけません。


「一日お世話になりました」

「いや、こちらこそ。それでアーク。この子はこれからどうするんだい?」


 するとアークさんの表情がちょっと強張ります。どうやら困っているようです。


「それが……、捜索願いは出ていなかったので、身柄は一時城の預かりとなります。今夜は、私の屋敷に置くことになりました」

「え?」


 思わず声を出してしまった私を静かな空色の目が見下ろします。


「民間の宿屋はこの時期観光客で一杯でな。王城の客室も同じだ。使用人がいないので不便だろうが、私の屋敷ならいくらでも空きはある。しばらくは我慢してくれ」


 その言葉に私は正直な胸の内を吐露していました。


「どうして……」

「何?」

「あなた方からすれば私は身元不明の異邦人です。どうしてそこまで親切にしてくださるのですか?」

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ