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気付いてしまいました

 冬節祭中、騎士団の皆さんは街や王城内の警備に当たる為通常の訓練が無くなくなります。城内は慌しいものの、騎士団専用の医務室は逆に暇になるのだと先生――シェルベさんが説明してくれました。だから私の面倒を快く引き受けてくださったのですね。納得です。


 シェルベ先生は色々質問する私に付き合ってくれたので、大体の現状を把握する事ができました。

 まず、私が居るのはあおの国。アークさんが仰っていた護国というのは連合国家で、蒼の国はその一つ。他にも白・みどりあか・黒の四国があり、それぞれを王族が治めているのだそう。つまり、冬節祭に来訪するというのがこの四国の王族達。民達はお祭り騒ぎだけれど、王族が集まるので王城内では会議やらパーティーやらが催されるみたいです。首脳国サミットみたいなものなんでしょうね。

 だから騎士団長であるアークさんは勿論、王城内で働く人達は皆大忙し。アークさんは手続きを後にすると言っていたけれど、それは私の捜索願いが出ていないか確認したり、保護していることを役所に届ける手続きの事だったみたいです。

 それを聞いて、正直私は困りました。だって、捜索願いなんて出ている筈が無いからです。


「ほら、来たよ。見てごらん」


 その声に顔を上げ、シェルベさんと並んで私は窓辺に立ちました。大きな窓から見上げれば、視界に入ったのは晴れ渡ったアークさんの目のような青空。そして、それを遮る大きな影。飛行機くらいの大きさでしょうか? 真っ白な鱗が朝日を反射して眩しく光ります。力強く羽ばたく姿は圧巻です。


「すごい。初めて見ました……」

「美しいだろう」

「はい、とっても」


 するとシェルベ先生は手でひさしを作って目を細めます。


「あれは、白の国のセドア殿下だな」

「まぁ。先生はあの姿でも分かるのですか?」

「此処に四十年以上勤めているからね。見慣れたものさ」


 私は素直に関心しました。何せ、私達の目線の先に居たのは人ではなく白い鱗を纏った巨大なドラゴンなのですから。


 元々護国は竜が造った国。古代の竜が人と交わり、国を大きくしていったそうです。だからこの国の方々にも当然竜の血が流れていて、特に血を濃く受け継ぐのが各国の王族。竜の力が強いと先程目の前を飛んで行った白の国のセドア王子のように竜の姿になる事が出来るそうです。蒼の国民の祖は青い鱗を持つ蒼竜。彼らの髪や目が青いのは生まれつきで、染めているのではありませんでした。


 そして、いい加減私も気づきました。ここが日本でもなければアジアでもない。そして地球ですらないことに。だって、ドラゴンなんて地球上の何処にも存在していないのですから。そんなのは常識です。だから、後でいくらアークさんが調べた所でこの世界の住人ではない私の捜索願いが出ている筈がないのです。


 では、その常識から外れてしまった私には一体何が起こっているのでしょう?私はこれからどうすればいいのでしょうか?

 

 



【同時刻 蒼の国王城内】

 

「やぁ、いらっしゃい。ナキアス、ナルヴィ」

「……ちわ」

「……どうも」

「どうした? 君らがそんなを顔しているなんて珍しいな」


 蒼の国第一王子アクリアが到着したばかりの黒の国の王子を迎えに行くと、仏頂面の二人が待っていた。

 先程挨拶を済ませたばかりの翠の国第三王子もこんな顔をしていたな、と思い出す。秋節祭の時も彼は早く自国に帰りたがっていたから今回も理由は同じだろう。けれど、この双子王子達は一体どうしたと言うのか。


「リーリアス君はともかく君らはどうしたって言うんだ」

「だってつまんな~~い」

「チヒロが一緒に来てくれないんだもん~~」


 彼らがつがいを得ていたとは知らなかったが、どうやら不機嫌な理由は翠の末王子と同じのようだ。

 しかもよくよく聞けば、一緒じゃなければ行きたくないと駄々をこねたら相手の女性に「外交おろそかにするなんてそれでも一国の王子か!!」と一喝されたらしい。なんともアグレッシブな番だ。

 それにしても番の傍に居たいのは妻帯している自分にもよく分かるが、未成年のリーリアスと同様に駄々をこねるのはいかがなものか。


 双子の番の苦労が目に見えるようだ。

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