32才の私は48才のバツイチ子持ち男性を好きになりました
ドアが開き暖簾を手で押さえ、店に入って来たのはこの「飯田寿司」の店主の幹夫とその奥さんの好美だった。
「怜美さん、掃除は終わったかい?」
好美が「もう終わります」と言いながら甲斐甲斐しく床をフロアモップで掃除をしていると、幹夫は「そうか」と言い、厨房に入った。
ドアが開き、「おはよ~」と言いながら店に入って来たのは、最近私の恋人になった充。
充は48才で幹夫さんと好美さんの息子だ。
私が前の恋人と暮らしている時に出会い、元彼のモラハラから私を救ってくれた存在。
だけど……。
充は店のボックス席に座り、新聞を読みだしている。
店のドアが開き、今度は若い女性二人が店に入り、充の前に座った。
「お父さん~!大学の皆と旅行行きたいの!お金出して?」
肩口に切り揃えられた黒髪を耳にかけ、明菜が言った。
「唯も!唯はねー!友達とご飯行くときにお金がなくて」
茶髪の長髪を腰に垂らす唯は、充に両手を合わせ、「お願い!」と駄々をこねている。
(きっと子供にはお金を出してしまううんだ)
お客さんが次々入って来て、私が注文を取りにバタバタと動き、好美さんと私で天丼や蕎麦をお客さんの席に配膳した。
しかし充はボックス席に子どもたちと座り、楽しそうに話しているだけ。
前のこの人の奥さんも私のようにこの蕎麦屋に嫁ぎに来たそうで、子供を二人産んだのにも関わらず、居なくなったそうだ。きっと逃げ出したんだろう、そうに違いない。
充が女子供二人と話している間、私は配膳を終え、お客さんの会計までしている。
でも今日は午後のお客の足がすいた時間になかなかレジのお金が合わない。
幹夫が厨房から出て来て「レジくらいちゃんとできないのか!?」と怒鳴りこんでくる。
でも充を含め、誰も私をフォローもしてくれない。
それにこの店の休日は日曜だけ。
充と二人の時間を過ごしたいのに、日曜の夜は子供達とご飯に行く約束をしてきたみたいだ。
まあ、充さんは私と同棲して21才と20才の娘の住む実家からは出て来てるから仕方ないのかもしれない。
幸い私は子供が欲しい願望は強い方じゃない。
でも、これでいいの?
32才の私は本当に48歳の子持ちの彼でいいの?
私は眩しすぎる夕日の光に手をかざした。




