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飯が美味すぎて、気づけば世界を支配していた。 ~無限魔力の料理人、物流と教育で最強国家を作る~  作者: 慈架太子


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105/105

105:海竜 リバイアサン

 海上決戦。


 冬の海は暗かった。


 巨大港アストリア。


 深夜。


 警鐘が鳴り響く。


 見張り塔の上で、獣人斥候達が海を睨んでいた。


「……来る」


 ティグリスの耳が動く。


 空気が震えていた。


 海そのものが唸っている。


 黒い海面。


 その下。


 何か巨大なものが動いていた。


 次の瞬間。


 海が割れた。


 轟音。


 巨大水柱。


 港外縁の防波堤が吹き飛ぶ。


 悲鳴。


「海竜 リバイアサン だァァァ!!」


 全員の顔色が変わった。


 現れた。


 巨大。


 あまりにも巨大。


 黒蒼色の鱗。


 長大な首。


 黄金の眼。


 全長百メートル級。


 海上災害指定魔物。


 海竜グラディオス。


 通常国家なら。


 艦隊が壊滅する。


 港が消える。


 飢餓が始まる。


 つまり。


 国家級災害。


 巨大海竜が咆哮した。


 衝撃波。


 海面が爆発する。


 輸送船が揺れる。


 兵士達が青ざめる。


「無理だ……」


「勝てる相手じゃねぇ……」


 その時。


 クルザードが港へ出てきた。


 静かだった。


 騒がない。


 走らない。


 ただ状況を見る。


 鑑定。


 視界が爆発した。


 情報。


 情報。


 情報。


 魔力量。


 筋肉構造。


 鱗硬度。


 水流制御。


 再生速度。


 呼吸器官。


 魔力循環。


 弱点。


 全部流れ込む。


 普通なら脳が壊れる。


 でも。


 今のクルザードは違う。


 鑑定が意味を持ち始めていた。


「……なるほど」


 静かに呟く。


「倒せる」


 周囲が固まった。


 ティグリスが振り向く。


「本気?」


「条件揃ってる」


 クルザードは海を見る。


「ベッティーナ」


「はい」


「防壁」


「任せて」


 巨大盾士が前へ出た。


 土属性。


 石壁。


 防波壁。


 何重もの巨大障壁が港前へ展開される。


 直後。


 海竜のブレス。


 超圧縮水流。


 海が裂ける。


 轟音。


 石壁が砕け散る。


 でも。


 止まった。


「次」


「ドロテア」


「了解」


 魔法陣。


 蒸気爆裂。


 超高温。


 海面が白く染まる。


 視界阻害。


 ティグリスが笑う。


「狩りだな」


 獣人が消えた。


 風属性強化。


 高速移動。


 海上を跳ぶ。


 同時。


 マルセル。


 斬撃飛翔。


 海面を裂く。


 海竜の鱗へ激突。


 硬い。


 普通なら通らない。


 でも。


「右側第六鱗!」


 クルザードが叫ぶ。


「そこだけ薄い!」


 マルセルの斬撃が一点集中。


 鱗が割れた。


 海竜が怒号を上げる。


 クルザードの鑑定が全員を繋いでいた。


 ガルドが笑う。


「化け物だな坊主」


「分析役としては最高だ」


 巨大槌。


 魔導砲撃。


 鉄杭。


 アランが金属操作を発動。


 海中へ巨大鎖が潜る。


 拘束。


 海竜が暴れる。


 海面が荒れる。


 輸送船が吹き飛びかける。


「固定しろ!」


「了解!」


 物流ゴーレム部隊が動いた。


 港湾クレーン。


 魔導鎖。


 大型固定杭。


 全部繋がる。


 港そのものが兵器だった。


 クルザードが剣を抜く。


 青白い魔力。


 以前とは違う。


 制御されている。


 魔力循環。


 吸収。


 圧縮。


 海竜の魔力すら吸い始める。


 周囲が息を呑む。


「……吸ってる?」


「海竜の魔力を?」


 異常。


 完全に異常。


 でも。


 クルザードは冷静だった。


 足元。


 氷。


 海面凍結。


 水属性制御。


 滑るように海上を走る。


 ティグリスが並ぶ。


「死ぬなよ」


「死なせない」


 それだけ。


 軽口はない。


 海竜が突進した。


 巨大。


 速い。


 津波が起きる。


 でも。


「左へ三歩」


 クルザード。


 全員動く。


 直後。


 海竜の顎が空を噛む。


 完全回避。


 鑑定が未来を読んでいた。


 クルザードが踏み込む。


 剣。


 光属性付与。


 圧縮。


 加速。


 斬。


 海竜の傷口へ直撃。


 血飛沫。


 絶叫。


 海が赤く染まる。


 だが。


 浅い。


 まだ足りない。


「再生早い!」


 ジェシカが叫ぶ。


「心臓潰さないと止まらない!」


 クルザードは頷く。


 鑑定。


 内部構造解析。


 見える。


 魔力核。


 位置。


 循環。


 全部。


「口を開かせろ」


 ティグリスが笑った。


「やっと本命か」


 次の瞬間。


 獣人が跳ぶ。


 風圧。


 超加速。


 海竜の眼球へ爪撃。


 激痛。


 海竜が咆哮。


 口が開く。


「今!」


 ドロテア。


 火属性。


 蒸気爆裂。


 超高温熱湯弾。


 海竜の口内へ叩き込む。


 内部爆発。


 海竜が苦しむ。


 そこへ。


 クルザード。


 一直線。


 海竜の口内へ飛び込んだ。


「はぁ!?」


 ベッティーナが叫ぶ。


 普通じゃない。


 でも。


 クルザードは止まらない。


 内部。


 熱。


 圧力。


 酸。


 普通なら死ぬ。


 光属性障壁。


 水属性冷却。


 風属性加速。


 全部同時制御。


 鑑定が最適解を出し続ける。


 そして。


 見えた。


 魔力核。


 巨大心臓。


 脈動。


「……ここだ」


 剣を構える。


 魔力吸収。


 圧縮。


 循環。


 限界まで。


 海竜の魔力すら奪う。


 剣が白く輝く。


 次の瞬間。


 突き。


 貫通。


 光が爆発した。


 海竜が絶叫する。


 巨大な身体が暴れる。


 海。


 港。


 全部揺れる。


 でも。


 止まった。


 静寂。


 海竜の巨体が崩れる。


 海面へ沈み始めた。


 全員が呆然とする。


「……勝った?」


「海竜を?」


「国家災害を?」


 クルザードが海面へ戻る。


 濡れていた。


 少し息が荒い。


 でも。


 笑っていた。


「食材増えたな」


 全員固まる。


 次の瞬間。


 港中が爆笑した。


「お前それかよ!」


「海竜見て最初に飯か!」


 ティグリスが腹を抱えて笑う。


 ガルドが豪快に笑う。


「好きだぜ坊主!」


 そして。


 解体が始まった。


 海竜肉。


 超高級。


 希少。


 国家級素材。


 脂が乗っていた。


 巨大鉄板。


 焼かれる肉。


 香り。


 油。


 肉汁。


 湯気。


 酒。


 港中に匂いが広がる。


「……うまっ」


 最初に食べたマルセルが絶句した。


 全員が続く。


「なんだこれ……」


「柔らけぇ……」


「魚と肉の間みたいな……」


「酒に合う……!」


 夜が更けていく。


 海竜討伐。


 普通なら英雄譚。


 でも。


 アストリアでは少し違った。


 食う。


 笑う。


 飲む。


 生きる。


 それが中心。


 クルザードは港を見渡す。


 壊れていない。


 物流も止まっていない。


 輸送船も守った。


 つまり。


 勝利。


 しかも。


 完全勝利。


 マチルダが静かに呟く。


「……強いわね」


「国家そのものが」


 それが答えだった。


 個人の強さじゃない。


 物流。


 技術。


 教育。


 連携。


 食。


 全部が繋がっている。


 だから。


 海竜すら止められる。


 巨大港の灯火が海を照らす。


 人がいる。


 飯がある。


 笑っている。


 それだけで。


 国家は強かった。







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