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飯が美味すぎて、気づけば世界を支配していた。 ~無限魔力の料理人、物流と教育で最強国家を作る~  作者: 慈架太子


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103/105

103:学院

人材独占。


 朝霧の中。


 鐘が鳴った。


 巨大都市中央区。


 白い石造りの建物群。


 整列した並木道。


 広場。


 噴水。


 掲示板。


 制服姿の若者達。


 海港都市アストリア。


 その中心部に建設された巨大施設。


 クルザード総合学院。


 既に。


 世界最大級だった。


「……人、多すぎない?」


 ティグリスが呆れた声を漏らす。


 実際。


 異常な人数だった。


 獣人。


 エルフ。


 ドワーフ。


 人間。


 各国貴族。


 平民。


 孤児。


 元奴隷。


 全部いる。


 しかも。


 全員同じ制服。


 同じ教室。


 同じ食堂。


 同じ寮。


 それが他国には理解不能だった。


 学院正門。


 朝から長蛇の列ができている。


「入学希望者はこちら!」


「識字試験!」


「職業適性鑑定!」


「医療志望は第三棟!」


 職員達が動き回る。


 混乱しているのに。


 流れが止まらない。


 それが怖い。


 クルザードは中央棟から学院全体を見下ろしていた。


 静かだった。


「増えたな」


 ヴァレリアが苦笑する。


「もう国家規模よこれ」


「学生だけで小都市レベル」


 マチルダが資料を読む。


「今年の入学希望者、四万三千」


「内、国外二万」


 ティグリスが吹き出した。


「奪いすぎだろ!」


 でも。


 止まらない。


 理由は単純だった。


 ここに来れば人生が変わる。


 それを全員知っている。


 学院食堂。


 巨大だった。


 炊き立ての白米。


 焼き魚。


 味噌汁。


 卵焼き。


 燻製肉。


 焼きたてパン。


 野菜スープ。


 果実水。


 しかも。


 無料に近い価格。


「……うま」


「なんだこの飯……」


「学院飯じゃねぇ……」


 地方出身者達が呆然としている。


 他国では。


 学生は痩せる。


 ここでは逆だった。


 健康になる。


 顔色が良くなる。


 病気が減る。


 デニーゼが食堂を巡回していた。


「栄養不足ゼロ」


「発育不良減少」


「貧民街出身の子達、平均身長伸びてる」


 ジェシカが頷く。


「食事で人生変わるもの」


 クルザードは当然のように答える。


「頭脳は体力使う」


「飯が弱いと育たない」


 だから。


 学院はまず食だった。


 教室棟。


 講義が始まる。


「物流学!」


「衛生学!」


「魔導工学!」


「農業土木!」


「航海術!」


「会計学!」


 内容が異常だった。


 他国の学院は貴族教育。


 ここは違う。


 現場教育。


 実務教育。


 使える人材を作る。


 しかも。


 全員へ。


 差別なく。


 ドワーフの少年が真剣にノートを書く。


 獣人少女が計算を学ぶ。


 エルフの青年が鉄道設計を描く。


 元孤児が衛生理論を暗記する。


 未来が増えていた。


 それが強い。


 訓練場。


 マルセルが剣術指導をしていた。


「振れ!」


「止まるな!」


 若者達が汗を流す。


 その横。


 アランが金属魔法講義をしている。


「鉄は武器だけじゃない」


「物流も作る」


 さらに別棟。


 ドロテアが蒸気機関理論。


 ガルドが鍛冶実習。


 ヴァレリアが商業契約。


 マチルダが行政。


 全部繋がっていた。


 学院。


 でも。


 実質は国家育成機関。


 昼。


 中央広場。


 人で溢れていた。


 屋台。


 図書館。


 討論場。


 訓練施設。


 市場。


 全部学院内。


 完全に一つの都市だった。


「ここ、国より豊かじゃない?」


 新入生が呟く。


 事実だった。


 風呂がある。


 治療がある。


 食事がある。


 教育がある。


 仕事紹介まである。


 しかも。


 卒業後の進路が保証される。


 鉄道。


 港。


 工場。


 農地。


 行政。


 全部人不足。


 つまり。


 学んだ瞬間価値が出る。


 人材流出が止まる訳がない。


 王国北部。


 貴族会議。


 空気は重かった。


「また技術者が消えた」


「医師もです」


「港湾技師も」


「商会会計官も」


 老侯爵が机を叩く。


「なぜだ!」


「給料が倍だからです」


「家族まで住めるからです」


「教育があるからです」


「病気で死なないからです」


 現実だった。


 しかも。


 アストリアは勧誘していない。


 勝手に来る。


 快適だから。


 未来があるから。


 中央学院図書館。


 巨大だった。


 魔導灯。


 書架。


 技術書。


 農業書。


 医学書。


 海図。


 蒸気理論。


 鉄道設計。


 全部並ぶ。


 しかも閲覧自由。


 エルフの少女が本を抱えている。


「こんな量……」


「国立図書館より多い……」


 クルザードは本棚を見る。


「知識は増やした方が強い」


「隠すより広げた方が速い」


 ヴァレリアが笑う。


「技術独占してる人間の台詞じゃないのよ」


「基盤は公開」


「応用は速度勝負」


 だから追いつけない。


 人材量が違う。


 夜。


 学院寮。


 学生達が食堂で話している。


「卒業したら鉄道局行きたい」


「私は海運」


「魔導冷蔵研究区画!」


「俺は農地改善班!」


 希望がある。


 未来がある。


 それだけで国は強い。


 ティグリスが窓から寮を見る。


「若いの多いなぁ」


「怖いくらい」


 マチルダが静かに言った。


「人口構造が変わる」


「十年後、全部ひっくり返るわ」


 その通りだった。


 今までは。


 血筋。


 貴族。


 家。


 全部固定。


 でも。


 学院が壊していた。


 能力。


 教育。


 実務。


 結果。


 そっちへ変わる。


 深夜。


 中央塔。


 クルザードは資料を見ていた。


 学院卒業予定者。


 配置先。


 技術適性。


 性格。


 全部整理されている。


 鑑定。


 今は完全に意味を持っていた。


「流れが見える」


 クルザードが呟く。


 カタリナが隣へ来た。


「何が?」


「国家」


 短い。


 でも。


 理解できた。


 人。


 物流。


 食。


 技術。


 教育。


 全部繋がっている。


 だから。


 学院が最重要。


 兵士より。


 貴族より。


 金より。


 人材。


 そこを握れば全部握れる。


 窓の外。


 学院都市の灯りが広がっていた。


 夜なのに。


 まだ図書館に人がいる。


 研究棟に蒸気が上がる。


 訓練場に明かりが残る。


 止まらない。


 成長が止まらない。


 その時。


 遠くで鐘が鳴った。


 新しい夜間列車が到着したのだ。


 また人が来る。


 また才能が流れ込む。


 そして。


 世界は少しずつ空洞化していく。


 人材。


 技術。


 知識。


 全部。


 この都市へ吸い寄せられていた。


 その夜。


 クルザード総合学院は。


 単なる学校ではなくなった。


 未来そのものを独占し始めた。


 巨大国家の。


 頭脳中枢だった。







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