第166話 はじまりのトカゲ③
私と私のボナス。
二人で暮らし始めてから、私は少し変になった気がする。
脳を共有しているせいで、少しボナスに似てきたのかなぁ……。
とはいえ楽しいのでまぁ良しとしよう。
そうして、二人っきりではじまったアジトでの暮らしは、いつの間にかとても賑やかなものとなっていった。
まずはクロとシロ、そしてエリザベス。
この三匹が私達の仲間になった。
クロはとても器用だ。
いつも体を綺麗に洗ってくれたり、美味しいコーヒーやチョコレートを食べさせてくれる。
たまにつまみ食いを怒られるけれど、一緒にいるとなかなか楽しい。
シロはとても優しい。
つまみ食いをしてもあまり怒らないし、背が高いので頭に乗ると気分が良い。
そしてエリザベス。
この子は私のペットだが、なんだか最近私より可愛がられている気がする。
けれどふわふわがとても気持ちいいし、私の嫌いな蛇を踏みつぶしてくれるので許してやっている。
何よりエリザベスのおかげで、私のポケットがとても快適になった。
ただ、頭に乗ると酔う。
クロとシロは大して強くはないが、それでもボナスに比べればはるかにましだ。
一緒にいると私も少し安心できる。
なにより私のボナスをとても大切にしてくれる。
けれど、このアジトで暮らすには少々力不足なようだ。
なので、とりあえず適当に魔素をねじ込んでおいた。
なんだかクロの方は少しだけ様子が変わったし、シロもそれなりに角が大きくなった気がする。
少しは強くなったかな?
あまりよく分からないけれど、クロにはいくらでも魔素が入るので、とりあえず暇なときに適当にねじ込むようにしている。
エリザベスにも試しに魔素をねじ込んでみたが、角がどんどん伸びていって面白い。
毛並みや乳の出も良くなっているようだ。
よかったよかった。
その後仲間になったのがギゼラとザムザ、そしてミルだ。
ギゼラは趣味が良い。
私の魅力をよくわかっている。
いろいろなものに私の姿を描いてくれる。
特にボナスの杖に描かれた私の姿はお気に入りだ。
それに意外とかわいいところもある。
愛用のハンマーの目立たない位置にボナスの姿が彫られていたりする。
ザムザは鬼の子供。
子供のくせに大きい。
ボナスの後ろを嬉しそうについてくる。
なかなか可愛いので私の子分にしてやっている。
同時にみんなの子分でもあるようで、裁縫から戦闘まで、いろいろなことを嬉しそうに教えてもらっている。
あとキノコ料理がやたら上手い。
そしてミルだ……。
こいつは、ただ胸のでかいドワーフではない。
私のライバルだ。
窯でぬくぬくしているわたしをすぐ放り出すのだ。
腹立たしいことに、ミルの作る食べ物はすべて美味しいので逆らえない。
くっ……パ、パウンドケーキなどに屈さぬぞ私は!
果物の砂糖漬けだと!?
チョ、チョコレート味は反則だよぉ……。
というわけで、今のところ私の全敗だ。
かつてひとつの世界を滅ぼした私を、こうもやりこめるとは……なかなかの女だ。
お菓子だけでなく、唐揚げや焼肉もちゃんと私の口の大きさに合わせたものを作ってくれるし、その実力は認めざるを得ない。
とりあえずこいつにも適当に魔素をねじ込んでおいた。
少しスケベになった気がする。
それからなかなか強い身重の黒豹が子供を押し付けてきた。
コハクだ。
こいつの毛並みもなかなか気持ち良い。
エリザベスとはまた違った良さがある。
子供のせいか魔素もたくさん入っていく。
しかし少しやりすぎてしまったかもしれない。
私と性質が似てきた。
いやむしろ最近では、私でも真似できないような芸当を始めた。
太陽の光を利用し、自らの身体を魔素に分解し、さらに再構築している。
う~ん……これは大変なことに……う~ん、私しーらないっ。
そんなことより、コハクのザラザラした舌で舐められるのは気持ちが良いし、頭頂部の乗り心地も良い。
エリザベスと違い、移動しても頭が一切揺れないので酔いにくいのだ。
そして圧倒的な速さ。
私は風に――やっぱ怖いわ……。
それからしばらく間をおいて、ラウラとオスカーが来た。
ラウラはつまみ食い仲間だ。
味見と称しては、いろいろなものをパクパクと食べている。
彼女はマリーと同じように、最初仲間なのかよくわからなかった。
だから出会ってしばらくは魔素をねじ込まなかった。
けれど、ラウラはどうやら私と私のボナスの仲間らしい。
最近はっきりとそういうことになったようだ。
ということで、ラウラにもとりあえず魔素をねじ込んでみたのだが、なんとバレてしまった。
なんだか恥ずかしい……えへへ。
魔素を送り込んだ瞬間、いまにも目玉が飛び出そうな顔をしていて面白かった。
まぁ~、驚いちゃうかもね。
確かに魔素を貯めたりねじ込んだりできるのはこの世で唯一私だけだ。
私自身が魔素みたいなもんだしね。
しかし残念、他の仲間に比べるとあまり魔素は入らなかった。
けれど、彼女はもともと魔法が上手い。
立派な師匠にも恵まれたようなので、今なら小さな街程度なら、簡単に滅ぼせるだろう。
しかし彼女の口から、魔法についての話を聞いていると不思議に思う。
どうも彼女は魔素自体は感知できていないようなのだ。
その代わり、魔素の密度変化のようなものを魔力として感知しているようだ。
この世界の魔法使いとかいう連中は皆そうなのだろうか。
う~ん、なんだか遠回りな気がして……面倒そう。
魔素の存在を知らなければ、魔法のことなんて半分も理解できないだろうに。
それなのに、なぜか私より魔法が上手いのは……なんだか釈然としない。
ただ、ラウラ酒を作ったのはとっても偉い!
あれは実に良いものだ。
ミルにばれると怒られるけれど、浸かるととても気持ち良い。
そしてオスカー。
木工職人らしい。
たしかに、ギゼラと同じように、ボナスと悪だくみをしながら、いつも何か作っている。
がさつに見えるが細かな気遣いのできる男だ。
私専用のコーヒーカップもオスカーが作ったものだ。
浸かっても溺れないし、縁に体を乗せられるようにもなっており、上り下りもしやすい。
寸法もちょうどよくできているし、私の顔が彫られているのも気に入っている。
私を含め、この男の作るものにはなぜか皆愛着がわくようだ。
誰よりも作り手が愛着を持っているからかもしれない。
酒に酔うと長々と自分の作ったものを自慢してくる。
私と私のボナス。
二人っきりでの暮らしも悪くはなかったが、仲間のいる暮らしもとても面白い。
これからも変な仲間が増えたりするのだろうか。
ふふふっ……とても楽しみだ。




