「邪神信者のパーティーが黒幕を倒す話」
ティアマル、ショコゼル、ルィーゼル、ウィンフェム……私たち4人は冒険者のパーティーを組んでます。
変わっているのは全員が奇跡使い――それぞれ別の神につかえる神官であること。
「おーい、指名依頼としてもさすがに遠すぎないか?」
「君は体力があり待っているのだからちょうどいいだろう」
「我の服が泥まみれだ、まったく……」
「みなさん、もう少しです、頑張りましょう……!」
でも、実は私――ティアマルを含めて一つだけ秘密がありまして、全員、仕えている神は一般的には邪神の類なのです。
私は団結と排除の神。
ショコゼルさんは毒と病毒の神。
ルィーゼルは苦痛の神。
ウィンフェムは殺戮の神。
から、それぞれが奇跡をもらっております。
それぞれの神に関係した信仰を保つことで奇跡を使えるため、私たちはそれぞれが全員で団結して正体を隠すために協力し合うことにしました。
つまり、私たちは隠れ蓑として冒険者パーティーを組んでるわけです。
しかし、隠れ蓑だからこそしっかりと仕事をこなして信頼を得なければなりません。
信頼こそが一番の隠れ蓑なのですから。
「それにしてもよー、今回は何人殺せるかな? 早く神様に贄をささげてやりてぇぜ」
「ふふ、すぐに殺してはつまらないよ。できる限りかぎり生かして神を楽しませてこそだよ」
「はぁ? なに言ってんだ、かわいそうだろうが。生命を殺すときは速やかに殺すのがうちの教えだ」
「生命はできる限り楽しんで消費することこそ、こちらの神の要望だよ」
……物騒です。
「まったくやつらは野蛮よな。すべて密かに気づいたときには致命的になるようにやるべきだというのに」
「……みなさま、信仰についてはとやかく言いませんが、仕事はきちんとやってくださいね……!」
団結神様、これは私に対する試練なのでしょうか?
同じパーティーを組んでいるのですから彼らは身内です、身内ですから助けなければなりません。
しかし、彼らはわんぱくすぎて私はいつも頭を悩ませています……。
「それで、今回の依頼はどうなっておる?」
「冒険者ギルド直々の指名依頼ですね。これから向かう辺境の村レイセムに送った冒険者がことごとく消息を絶っておりまして……その調査と解決が依頼です」
「なるほど……陰謀の匂いがするの」
ショコゼルさんが笑いました。
彼女はとてもきれいな方でちょっとした動作が同性の私でもドキリとする凄絶な色気があるのです。
「おい、そろそろ見えたぞ」
ウィーゼルさんが鎌槍で村を指し示しました
「ふふふ、まずは調査よな。今回はどのような秘密があるのか。暴くのが楽しみのよな」
「おっと、孤立して追い詰められている子がいるなら紹介してくれ。付け込みやすいからな」
「あーあ、陰湿野郎どもが……めんどくせぇな、今回の村はだいたい黒なんだろ、さっさと皆殺しにしてしまえばいいだろうが」
「だ、だめです! そんなことしたら私たちの正体がばれてしまいます! それにもしかするとむしろ将来の信者がいるかもしれません」
「俺の殺されるぐらいヤワなやつはいらないけどなぁ……」
「君に簡単に殺されては困るよ。自重しよう」
「とにかく行きますよ」
私たちは村に入っていきました
†
――そして、私たちは調査の末に黒幕の教主カカオリスと相対しました。
「あの人は私を置いていった……だから、私はあの人に永遠に復習し続けるの」
「なるほど、蛇神への信仰をゆがめ、贄がひつようだと称して生贄を与え続けていたのだな」
「そうよ。憎いあの人は私じゃなくてあの子を選んで一緒に贄として死んでいったのだから……私は置いていかれたくなかった! だから、あの人も村人たちも永遠に苦しめばいい」
「痴情の縺れじゃのう。そんなに死にたいのならば喉を剣でつけばよかっただろうに」
「嫌よ、私からあの人を奪ったこの村をずっとずっと苦しませ続けるのですもの」
「けっ、……しちめんどくせーな……」
「あなたはそのために信仰を利用したのですか?」
「ええ、ちょうどいい道具だったわよ。掟で縛り上げて、理由さえつければあとはいかにようにしたがうんですもの。ああ、もちろん側近にはきちんと利益は与えて、ね?」
「……ふざけないでください!」
私の大声にパーティーメンバーが驚いたように私をみた。
普段、大声を出さないせいでしょうか。自分でも驚くぐらいに大きな声でした。
「信仰は人々をみちびくための杖、それを愚弄し、弄ぶために使うとは何事ですか! あなたのような人は許せません!」
「ふん! なら、私を止めて見せろ!」
そして、私たちは黒幕を止めるために戦うことになった。