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第一回添削会

部活動会議から数日たった頃、いよいよ添削会の日となった。


内容としてはどんなものでもいいので自分で書いた小説を部員に読んでもらい、感想を貰う。たったそれだけだが、俺はワクワクしていた。

なぜなら俺にはずっと温めてきた小説があるからだ。かなりの自信作なので今からどんな評価を貰えるか楽しみである。


「こんちはー」


部室に入る。


「わ、和田か、き、きちんと小説書いてきたんだろうな?」


「そりゃもちろん、俺の魂の作品を見せてやるよ」

「まだ小鳥遊だけか?」


「わ、わたしが一番乗り、い、いつも教室を一番に出る」


なかなかに悲しいことを言う。


「どんなの書いてきたんだ?」


「わ、わたしのは、恋愛小説、学園モノ」

「わ、和田のはなんだ?」


「よく聞いてくれた! 俺のはシリアスなバトルものでさ、結構ダークな世界観なわけ。主人公が最初に四肢切断されるんだがな、気合いで少しの間だけ腕と足が生やせて、その時間だけ前線にたって戦う話で…」


説明しながら顔を見る、なんとも言えない顔をしている。


「なんか疑問でもあるのか?」


「せ、設定がぶっとんでる、それでも面白いならいいけど…」


なんだそんなことか。


「それなら任してくれ、絶対に面白いからさ、特に気合い入れすぎて腕が三本生えちゃうところとかおもろいぞ」


「わ、わかったから、は、はやく読ませろ」


「? まだ俺ら2人だけだぞ、もう始めるのか?」


「て、添削するなら、い、一秒でも早く読んだ方がいい。ほ、他の皆がどのくらいのを持ってくるのか分からないから」


…なるほど、持ってくる小説の長さによっては読みきれない可能性があるのか。


「でも別に今日だけで全員分読まなくたっていいのでは?」


「ぶ、部活動としてやるなら、べ、ベストを尽くすべき、ふ、副部長がそんなんでどうする」


こいつ、俺に押し付けたくせに…


でも正論なので大人しく従うしかない。


「俺は秘蔵のやつだからな、プリントアウトして持ってきた。読むのはお前が初だ」


「わ、わたしも、と、投稿とかしたことない、から初」


「それじゃあ、お互いが読者第一号なわけだ、だからって甘く採点するなよ」


「わ、和田のは、と、特に厳しく見てやるから安心しろ」


おい、ふざけるな。


だが、この時の俺は分かっていなかった。

この言葉が冗談でもなんでもないということに…


しばらく読んでいると、ドアが開く。


「やぁやぁ諸君!やっているかな?」


「やっほ〜!2人とも早いね〜!」


入ってきたのはいつもの三人、一度読むことを止める。


「先に俺と小鳥遊で添削始めてます。今はまだ読んでる最中ですけど」


「そうか!では我々は三人で回すか!」


そう言うと、三人ともスマホをタップし始める。


「あたしは小説とかよく分かんないからとりあえずメモに書いてきたんだけど平気?」


「別に問題ないだろう。重要なのは内容と書き方だ。」


「それでは私が新田君のを、新田君が楠木さんのを、楠木さんが私のを読むことにしよう!」


互いに小説を交換して読み始める。それを見て俺も再度読み始めた。


小鳥遊の小説は展開でいえばごく普通の恋愛小説だ。、だけど何故か惹かれるものがある。


読んでいて思ったのだが、小鳥遊の小説は文字に色が見える。実際は黒字でしかないのだが、文字が生きているように感じる。文字を読んでいるのに頭の中では映像が流れるような自然な文章であるためだろう。


こりゃすごい、あんなこと言うだけある。


そう考えていると小鳥遊がこちらを見て頭を抱えている。どうやら読み終わったようだ。


「おっ、読み終わった? どうよ、中々だろ?」


「た、確かに中々だな…」


誇らしげにしていると、


「な、中々に酷い、いや、かなり酷いぞこれ」


は?かなり酷いだと?俺の渾身の一作が?


「おいおい、何処が酷いっていうんだ?」


「ま、まず、登場人物が、お、多すぎる。多すぎて主人公達がずっと空気だ。そ、それになんで大体のことが気合いでどうにかなるんだ?シリアスなバトルものって言ってたのに、こ、これじゃギャグ、それに言い回しも酷いし、キャラが薄すぎて、ひ、惹かれない」


そ、そこまで言う?

あまりの酷評に涙が出そうだ、出ないけど。


「俺の小説ってそんなに酷いのか…」


「こ、これなら多分、しょ、小学生の読書感想文の方が面白い」


「まあ、直した方がいいところ教えてくれよ。書き直してくるから」


「こ、これ直すなら、あ、新しいの書くべき」


ズバっと言われてしまった。


「でもこれは俺の魂なんだぞ?それを捨てるなんて…」


「こ、こんな終わってる魂なら、す、捨てた方がいい」


かなりヒドイぞ、その発言。


「それならどんな話なら書けると思う?」


「こ、この感じなら、バトルよりはギャグ小説がいい」


「なら次はそうするよ 俺の魂はギャグ路線だったのか…」


「な、何バカなこといってる」


バカとか言われた。


「そ、それで私のはどうだった?」


「ああ、そういえば… 正直読んでて驚いたよ。お前こんなに文才があったとはね」


そう言うと明らかにニヤける、なんかムカつくな。


「と、当然。そ、それしかやることないから」

「で、でもあんなもの書くやつに褒められても…」


おい。


「失礼過ぎやしませんかね、これでも色んなジャンルの名作読んできてるんですけど俺」


「ど、とこが良かった?」


はいはい無視ですかそうですか。


「内容が奇抜とかじゃないんだけどシンプルに文が上手い。読んでて引っかかるところとかないしめちゃめちゃイメージしやすかった。それに話に無理矢理感がなくて自然なところも良かった」


「そ、そう、ふ、ふへへへ」


「笑い方きしょいな」


「う、うるさい」


思わずきしょいと出てしまいました。


「そ、そういえば表紙のイラストは、だ、誰かに依頼したのか?そ、それともネットで拾ったか?」


表紙のイラスト?ああ、あれか。


「あのイラストは俺が描いたんだぞ、自作小説だから自分で描くしかないだろ」


「あ、あれを和田が描いたのか? す、すごく上手い。し、小説部じゃなくて美術部に入れば良かったのに…」


「なんかイラストと美術って似て非なるものっていうか、なんか違うなーって思っちゃったんだよな」

「そもイラストより小説の方が俺の中では順位が高いからこの部活に入ったわけだし」


「そ、そうなのか。あれを描いたのか…」

「そ、それなら、わ、私の小説のキャラも書いて欲しい」


「それは依頼ってことか?なら描いても良いけど」


「い、今の小説のじゃなくて、こ、今後書くやつのイラスト、ま、また今度話す」


今後書くやつ? 何か新しく書くのか。


「おーい、そっちは終わった〜? 」


「こっちは一区切りはした。楠木たちは終わったのか? 」


「うん! それでさ提案なんだけど、一週間に一回なのは現実的じゃないと思うの!」


「どうしてだ?」


「だって一週間だけじゃそんなに書いてこれないし、皆焦って作ってきちゃうかもでしょ?」


なるほど、それは否めない。


「それについては僕も賛成だ。それに一度で全員分読むのも厳しいと思う。人によって書いてくる量に差が出るのは仕方ないが、小鳥遊さんや悠、三宅部長位のも読むとなるとかなり時間がかかる」


「まあ、そんなに焦ってやるもんでもないし、じっくり書いた方がいいもんができるってもんか」


なら今日はもう終わりか。でもどんなの書いたのか気になるな。


「皆はどんなの書いたんだ? 概要だけでも教えてくれよ」


「あ! あたしはね〜、とりあえずあたしの日常を書いてみたの。いきなり書けるのって実体験しかないかな〜って」


「完全に日記だったがな」


「仕方ないじゃん!何もわかんなかったんだし」


「ならなんでもいいから小説を読んで真似てみろ、それだけで一気にそれっぽくなる」


「なんか偉そうなんですけど〜」


完全に教師と生徒って感じだな。


「湊は何書いた?」


「僕か?僕は単なるバトルものだよ。異世界転生系だ」


「おお!バトルものか、早く読みたいな」


思わず目を輝かせる。


「? 悠はバトルものが好きなのか?」


「そうなんだよ! 俺の中でバトルものが熱くてさ!湊もか?」


「いや、僕は読むのはミステリーが一番だ。脳みそを使っている感じが楽しい」


なるほど、湊らしい。


「三宅部長は何書いたんですか?」


「ようやく聞いてくれたか!ずっと待っていたぞ!つい寝てしまうかと思ったわ!」


「そうでしたか、そりゃすみません」


「よいよい!それで小説の内容だが、私のは恋愛ものだ。それも飛びっきり昼ドラ方面のな!」


そういえば部長は人の恋愛に首突っ込むのが趣味とか言ってたっけ


「普通の恋愛ものにはしなかったんですか?」


「そりゃナンセンスな質問だよ和田君、人の恋愛で一番面白いのは三角関係なのだよ!あれは人のいちばん醜いところが出るからねえ!」


最低だ。


会話をしながらふと小鳥遊に目を向けると、またもや楠木に迫られていた。


「ねえねえ!藍ちゃんはどんなの書いたの〜?」


「わ、わたしは、れ、恋愛小説…」


「へえ〜!いいじゃん、今度読むの楽しみだな〜、てゆーか藍ちゃんがあたしに書き方教えてよ〜」


「わ、わたしが?」


「そうそう、あの男いちいちうるさいし、藍ちゃんが教えてくれるなら頑張れちゃうんだけどな〜」


「おい、僕の悪口はやめろ。それとあまりダル絡みをするんじゃない、困っているだろう」


「え〜?別に困ってないよね〜」


そう言って小鳥遊に抱きつく。


「う、うぇ!?」


抱きつかれてそのまま固まる。まるで首根っこ掴まれた猫みたいだな…


「君はあの中に入らなくていいのか?」


部長が問いかけてくる。


「ええ、こうやって外野から見てるのがいちばん楽しいですから」


「ふーむ、それならいいんだがね、たかが一年先輩なだけの私から一言良いかな」


「なんでしょう?」


「一年なんて瞬きをする間に終わる、つまりだ。この関係なんてすぐ終わってしまうかもしれないのだから、積極的に関わった方がいいと思うぞ、とお姉さんは思うのだよ少年」


…なんだか、こういう所は俺よりも全然大人なんだよな。


「分かってはいます、だからといって急に変わるのは自分を騙している感じがして嫌だなって」


「…変わる気があるならそれでいいと思うね、ただ、何か抱えているのなら話してくれたまえよ」


「いずれ話すかもしれません、自分ではどうしようもなくなったらお願いします」


「…君は強すぎるんだろうね」


強すぎる?逆だ、弱すぎて何も決められない。


思わず内心では反論した。けれども少しだけ、自ら閉ざしてしまった扉を叩いてくれているようで嬉しくなった。

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